第391話 ネコミンとの合流
「ううっ……スライムに殴られる日が来るとは、国王陛下にも殴られた事はないのに」
「今のはリルが悪い」
「流石に私も擁護できません」
「薄情な部下たちだ……私の味方はレイナ君だけか」
「いや、セクハラした相手が何で庇ってくれると思ってるんですか。あんまり調子に乗っているとサンを元の姿に戻して飲み込ませますよ」
「きゅろっ?リルを食べても良いの?」
「ごめんなさい」
流石に調子に乗りすぎたと反省したのかリルは謝罪すると、改めて今後のレイナの行動に関して話し合う。当面の間、レイナは冒険者活動に集中してもらい、もしも一人だけでは困難な事態に陥った時は銀狼隊の面子を呼び出して行動してもいいことを伝える。
「僕は国王代理として業務があるからあまり顔を出せないが、この二人には出来る限りは時間があるときはレイナ君の手伝いをさせるようにしよう。他にもリリスやハンゾウにも話は通してあるから、二人の力を貸して欲しい時は連絡してくれ」
「はい、分かりました。あ、でも連絡はどうすればいいんですか?」
「その点に関しても大丈夫だ。レイナ君が宿泊する予定の宿屋に主人に話は通してあるから、今後はこの宿屋にシロかクロを滞在させておく。今後は冒険者活動を行う時はこの2匹のどちらかを引き連れて行動してくれ」
「シロ君とクロ君も?いいんですか?」
「ああ、僕の方はしばらくはレイナ君に会えなくなるだろうからね。せめてもの詫びさ、銀狼隊の面子は自由に扱ってくれ」
リルは色々とやる事があるためにしばらくの間はレイナの元へ顔を出せず、その代わりに他の人間にレイナに力を貸すように頼む。彼女は用件を伝えるとチイを引き連れ、部屋を退室した。
「しばらくの間はネコミンを君の傍に置かせておくよ。それと、リンさんに話を通しておくからこれからはサンちゃんの方も冒険者活動を行う時は同行しても構わないよ。年齢的に彼女を冒険者にさせる事は出来ないけど、サンちゃんを一人にさせるのが不安な時は一緒に連れていくといい」
「あ、はい。良かったね、これからは一緒だよサン」
「きゅろろっ♪」
レイナはリルの言葉を聞いてサンの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに小躍りを行う。そんな彼女の頭の上にクロミンも跳ね回り、これでサンを連れて行動しても冒険者ギルド側から注意される事はない。
流石に昇格試験の時は同行する事は出来ないだろうが、通常の依頼の時はサンを連れても問題はなくなり、時にはサンやクロミンの力を借りる事もあるだろう。また、しばらくの間はネコミンも一緒に行動してくれるらしく、彼女もレイナ達と一緒に居られる事を嬉しがる。
「レイナ、私も頑張るから一緒に黄金級冒険者を目指そう」
「え、ネコミンも黄金級冒険者になりたいの?」
「私の場合はチイとリルがいない間に昇格して自慢したいだけ」
「不純な動機だな……まあ、でもネコミンも一緒で心強いよ」
「サンも嬉しい!!夜に眠るときはレイナとネコミンのおっぱい枕に挟まれたい!!」
「おっぱい枕!?いつも寝る時に俺に抱き着いていたのはおっぱいを枕にしてたの!?」
サンの爆弾発言にレイナは驚くが、ひとまずはネコミンと合流して行動できるのは有難く、これで単独では受けられなかった依頼に関しても受注できるようになった。
人数が増えたのは喜ばしい事だが、今日の所は疲れが溜まっているため、冒険者活動中は利用する事になるリルが指定してくれ宿屋へ戻る事をレイナは提案した――
――翌日、王都の中でも一番人気が高く、同時に宿代も高い宿屋の一室にてレイナは目を覚ます。ベッドから身体を起き上げると、いつの間にかクロミンを枕代わりに使用していたらしく、少々形が楕円系になっていたクロミンを見てレイナは慌てて頭を退かす。
「うわわっ……またクロミンを枕に使用してたのか。ごめんね、痛くなかったクロミン?」
「ZZZ」
「あ、よかった寝てる。それにしても相変わらず特徴的な寝言だな」
「ZZZ」
「いや、君もかい!!というか、何時の間に潜り込んでいたんだネコミン……」
レイナは自分の隣に視線を向けるとサンを抱き枕代わりに抱えるネコミンの姿が存在し、彼女とクロミンは特徴的な寝言を呟きながら眠りについていた。時間帯も大分早く、窓から朝日が射していた。
ベッドから抜け出したレイナは軽く身体を動かし、壁に立てかけていたアダマンタイトの剣に気づく。こちらの武器は他の聖剣と違い、常日頃から出しっぱなしにしていた。理由としてはレイナが所持する聖剣の類は外見的にも目立ちすぎるため、他の人間に不用意に見えたら正体が気づかれてしまう恐れがある。
そのためにレイナは普段はアダマンタイト製の武器を身に付ける事に決め、必要時の時は聖剣を取り出して扱う予定だった。最もこちらのアダマンタイト製の長剣も全体が真っ黒に染められているため目立ってしまうのだが、あくまでも聖剣の存在を知られないために他の武器を携帯する必要があるというだけで別に外見は目立つ武器でも問題はない。
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