第389話 銀狼隊の復活
「えっと……うちの子が鼻を折ってしまい、ごめんなさい。回復薬の治療が必要なら手持ちの回復薬を渡します」
「お、おおっ……へへ、中々話が分かるじゃねえか嬢ちゃん」
「きゅろっ!?レイナ、こんなツルピカに謝らなくていい!!」
「誰がツルピカだ!?」
大男は自分の頭を見て変な渾名を付けたサンに激怒するが、サンは大男にレイナが謝る必要はないと説く。だが、そんな彼女にレイナは優しく叱りつける。
「もう、駄目だよサン?サンは強いんだから、無暗に他の人に暴力を振るっちゃ駄目だと言ったでしょ?」
「ううっ……でも!!」
「サンも怒る気持ちは分かるけど、だからって鼻を折るぐらいに殴ったら駄目だよ。サンだって鼻を折られたら凄く痛いし、怒るでしょ?このツルビカさんも凄く痛かったんだよ」
「お前もツルピカと言うんじゃねえよ!?喧嘩売ってんのか!?」
「まあまあ、兄貴……兄貴も悪かったんですから」
「そうそう、そんなに怒らないで……」
「お前らも相手が美人だからって俺を宥めて好感度を上げようとするんじゃねえよ!!」
レイナにもツルピカ呼ばわりされた事に大男は怒りを抱くが、他の二人の男性が彼を抑え込む。二人ともサンの保護者であるレイナが美人だった事を知り、ここで大男を抑えれば自分達の株が上がると思って必死に宥める。
サンを大人しくさせたレイナは仕方なく大男に渡す回復薬を取り出そうと鞄に手を伸ばしたとき、聞き覚えのある声が耳に届く。
「全く、相変わらずだなここは」
「いったい何の騒ぎだ?」
「あ、レイナだ……やっほう」
その声を聞いた瞬間、レイナは驚いて振り返ると、冒険者ギルドの出入口にて見覚えのある3人組が存在した。どうしてこの3人がここにいるのかとレイナが驚く前に他の冒険者達が騒ぎ出す。
「お、おい……銀狼隊だ!!銀狼隊が戻ってきたぞ!!」
「マジかよ!?生きてたのか!!」
「最近は姿が見えないと思っていたが……」
「お帰りなさいリル様ぁっ!!」
「ワンコ剣士もいるぞ!!」
「誰がワンコだ!?」
――冒険者ギルドに訪れたのは冒険者の格好に着替え、変装を行ったリル、チイ、ネコミンの3人組で間違いなかった。どうしてこの3人が現れたのかとレイナは驚き、一方で大男たちは顔色を変える。
3人はギルドの中に入ると冒険者達は拍手を行い、どうやら王都の冒険者ギルドでは銀狼隊はかなりの人気を誇るらしく、すぐに騒ぎを聞きつけたリンが顔を出すとリルの顔を見て嬉しそうに声をかけた。
「何だ、誰だと思ったら帰ってきてたのかい!!この放蕩娘共!!」
「リンさん、久しぶりですね」
「お久しぶりです、師匠」
「久しぶり……少し太った?」
「なっ!?相変わらず失礼なにゃんこだね!!少し増量しただけだよ!!」
リンは嬉しそうに3人の元に駆け寄ると、両腕を大きく開いて3人を抱きしめた。彼女の力の強さに3人は苦しそうな表情を浮かべるが、改めて3人を解放したリンはリルの肩を掴み、話しかける。
「それにしても急にどうしたんだい、あんたら?帰ってくるのなら連絡ぐらい入れれば良かったのに」
「ちょっと、色々とあってね。それより、僕達の新しい仲間を紹介したいんだ」
「仲間!?あんたらの
「ああ、その通りだ……皆に紹介しよう!!そこに立っている彼女が我々の新しい仲間、レイナ君だ!!」
『なにぃいいっ!?』
「わあ、びっくりした!?」
リルの言葉に冒険者ギルド内の人間達がざわつき、リンの言葉に対して3人は頷くと、サンとクロミンを抱えたレイナを指差す。
ギルド内に存在するほぼ全ての者がリルの言葉に驚愕し、そのあまりの驚き様にレイナの方がびっくりすると、3人はレイナの元へ向かう。レイナの腕にリルは絡みつき、反対の手をネコミンが手にすると、全員の前で堂々と宣言を行う。
「ここにいる彼女が銀狼隊の新たな人員だ!!名前はレイナ、彼女は近い将来に黄金級冒険者へ上り詰める逸材だ!!しっかりと顔を覚えておくんだ!!」
「え、ちょっ……!?」
「お、黄金級冒険者だと……!?」
「本気で言っているのか!?」
「あの怪物どもと肩を並べる気か……!!」
リルの言葉にレイナは戸惑う中、ギルド内の冒険者達は冷や汗を流す。その様子を見ていたリンも驚いた表情を浮かべるが、すぐに何かを察したようにリルに視線を向け、口元に笑みを浮かべる。
一方でリルとネコミンに挟まれたレイナは何がどうなっているのかと戸惑う中、サンに鼻を折られた大男たちはレイナが銀狼隊の関係者だと知って恐怖に覚えた表情を浮かべた。
「お、お前……いや、あんた銀狼隊の知り合いだったのか!?」
「ひいっ!?も、もう悪い事はしないから許してください!!」
「い、行くぞお前ら……こ、今回の件は許してやる、次からは気を付けろよ!?」
「ん?何だ、誰かと思えば万年銅級冒険者の3馬鹿じゃないか、何をしてるんだこんなところで?」
『ひいいっ!?』
3人の存在に気づいたチイが振り返ると、怯えた表情を浮かべて3人の冒険者は逃げるように立ち去り、その様子を彼女は訝し気な表情を浮かべて見送った――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます