第385話 ハイゴブリン
(解析……!!)
暗視の技能を使用しても敵の姿がはっきりと捉えられない事にレイナは疑問を抱き、解析を発動する事で相手の正体を見抜こうとした結果、視界に詳細画面が表示された。
―――ハイゴブリン―――
種類:ハイゴブリン(魔人族)
性別:雄
状態:興奮
特徴:ホブゴブリンの変異種にしてより人間に近い生態を持つゴブリン。人間と同程度の知能を持ち合わせ、身体能力も非常に高く、魔人族に分類される
――――――――――――
視界に表示された画面を見てレイナは驚き、どうやら相手はハイゴブリンというレイナが今までに遭遇した事がないゴブリンらしい。しかも種類は魔人族に分類されるらしく、亜種や上位種とは異なる。
レイナは天井に張り付いたハイゴブリンを見て戸惑い、敵の正体は判明したのだがやはり姿が上手く捉えられない。まるで黒い煙か何かに身体が覆われているようで姿が把握できない。
(何だこいつ、どうして姿が見えないんだ……ん?姿が見えない、いや捉えられない……?)
ここでレイナは自分が覚えている技能の中に存在感を消す「隠密」の技能の事を思い出し、敵が魔人族である事を考えてある結論に至る。あくまでも予想にしか過ぎないが、もしかしたら敵はレイナのように姿を隠蔽する能力を使用している可能性があった。
(こいつ、まさか隠密の技能が使えるのか!?それにこいつの異常な握力、まさか他にも技能を習得しているんじゃ……)
レイナは片手で天井に張り付いた状態で見下ろしてくるハイゴブリンに大して自分と同じように複数の技能を習得しているのではないかと考え、その予測が当たっていたとしたら非常に厄介な相手である。
ハイゴブリンは自分の攻撃を悉く防ぐレイナを見て警戒心を抱いたのか、天井から降りると左手の鍵爪を構える。その姿を見てレイナは暗闇でも自分の姿を捉えている事から「暗視」の技能まで身に付けていると判断すると、どう対応するのか悩む。
(間違いない、こいつはやっぱり俺の様に技能を習得しているんだ……どうする?グランさんが傍に居る以上は聖剣は無暗に使えない……)
デュランダルやエクスカリバーを使用して一気にハイゴブリンを仕留める方法もあるが、グランが傍に居る限りはどちらの聖剣も目立ちすぎるので使用できない。彼にもしも聖剣を使う場面を見られたら色々とまずく、他の人間にレイナが聖剣を所持している事を知られたらまずい。
レイナが色々と考えている間にもハイゴブリンは彼女の隙を伺い、鍵爪を突き刺してくる。その攻撃に対してレイナは剣で振り払うが、ハイゴブリンは続けて蹴りを放つ。
「ウガァッ!!」
「ぐうっ!?」
まるで格闘家のように回し蹴りを放ってきたハイゴブリンにレイナは脛を蹴りつけられ、反射的に声を上げてしまう。しかし、蹴りつけられたはずの脛だが痛みはあまり感じられず、逆に攻撃を仕掛けたハイゴブリンの方が悲鳴を上げた。
「ギャアアッ!?」
「あれ?」
「な、何が起きたんですか!?」
攻撃を仕掛けたはずのハイゴブリンの方が足を痛めた事にレイナは驚き、グランは耳に入ってきたハイゴブリンの悲鳴を聞いて戸惑う。
ここでレイナは忘れていたが自分のレベルが50に上昇した事でステータスが上昇している事、何よりも彼が習得している「金剛」の技能のお陰で防御力が限界近くまで上昇している事を思い出す。
ハイゴブリンはまるで鋼鉄の塊のような硬さを誇るレイナに攻撃を仕掛けた事で足を痛めてしまい、そのせいなかハイゴブリンが発動していた技能が解除されてしまう。ここでレイナはハイゴブリンの姿を完全に捕らえる事に成功した。
(えっ!?人間……いや、これがハイゴブリンなのか!?)
ハイゴブリンの外見は予想以上に人間に瓜二つである事に気づき、違いがあるとすれば耳元の部分は非常に尖っており、牙や爪も存在した。だが、それ以外の部分は人間と全く同じ容姿をしているため、隙を見せたハイゴブリンに攻撃を仕掛けようとしたレイナは躊躇してしまう。
外見が人間に近い生物だけにレイナも戸惑ってしまい、その隙にハイゴブリンは痛む足を抑えながらも引き下がると、自分が技能を解除している事に気づいたのか慌てて技能を再発動させる。だが、その行為は逆にレイナにとっては都合がよく、姿が上手く捉えられない方が攻撃する際に躊躇する事はない。
(よし、姿がよく見えない方がやりやすい……次の一撃で終わらせる!!)
暗闇で相手の全体像が掴めない事が逆に功を奏し、相手が人間ではなく魔物である事を強く意識してレイナは思いきり踏み込む。その様子を見てハイゴブリンは鍵爪を構えると、レイナの胸元に目掛けて突き出す。
「ガアアアッ!!」
「このぉっ!!」
突き出された鍵爪に対してレイナはぎりぎりまで近づくと、身体を逸らして回避を行う。完全には避けきれず、彼女の大きな胸元部分の服が切り裂かれ、下着が露になりながらもレイナは踏み込み、ハイゴブリンに目掛けて二つの剣を切り裂く。
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