第381話 昇格試験
「――はあっ!?あんた、もう仕事を終わらせてきたのかい!?」
「はい、これが依頼の品物です。確認してください」
受付にてレイナはリンの姿を発見すると、彼女から引き受けた依頼を達成した事を告げる。リンは依頼を受けてからまだ1日も経過しないうちに戻ってきたレイナに驚くが、渡された薬草の束が入った小袋を見て感心した。
薬草採取の依頼の方は必要分の薬草を持ってきたので問題はないが、彼女が気になったのは魔人の森に現れたというユニコーンの調査だった。レイナがこれほどまでに早く戻ってきたという事はユニコーンを発見したのかと思ったが、そんな彼女に対してレイナは渡したのは白色の羽だった。
「それと……魔人の森の調査報告に関してなんですけど、そちらの方はペガサスを発見しました」
「ペガサス!?ペガサスがあの森にいたのかい?」
「はい、それと森の奥の方でこれらも発見しました」
レイナは森の中で負傷したペガサスを発見した事、人虎と遭遇して討伐した事、他にも岩山の洞穴の中に人虎に殺されたと思われる人間の死体と人虎を拘束していた首輪を渡す。
話を聞き終えたリンは半信半疑だったが、レイナが持ち込んだ証拠品を確認すると確かにペガサスの羽根が本物である事が判明し、しかも人虎の素材を見せつけられれば信じざるを得なかった。
「まさか、ユニコーンが現れたと思ったらペガサスだったとはね……しかも人虎を討伐したなんて、あんた私の想像以上に腕が立つんだね。本当に戦技が使えないのか疑うぐらいだよ」
「はあ……まあ、この子も手伝ってくれましたし」
「きゅろろっ」
「ん?何だい、その子供は……って、その耳にその褐色肌、まさかダークエルフかい!?」
自分の膝の上に座り込むサンをレイナが紹介すると、リンは驚いた声を上げ、ギルド内に存在した他の者も何事かと視線を向ける。
「え、あれってダークエルフ……?」
「嘘!?俺、初めて見たぞ!!」
「本当に肌の色が違うんだな……」
「やべっ……あんたら、じろじろ見るんじゃないよ!!さっさと仕事に行きな!!」
「きゅろっ?」
レイナが抱えているサンの姿を見て冒険者達は騒ぎ出し、それに気づいたリンは彼等を怒鳴りつけると冒険者達は慌てて顔を逸らす。
その一方でレイナはこの国ではダークエルフは珍しい存在である事を思い出し、サンは自分を見てくる者達に気づいて首を傾げた。
「あんた、まさかその子供のダークエルフを連れて行ったのかい?」
「え、駄目でした?」
「いや……依頼を解決してくれるのならば別に構わないんだけどね、事前に他の奴に協力してもらうならちゃんと報告して貰わないと困るんだよ。それにしてもダークエルフの子供なんて……いったい何処で拾ってきたんだい?」
「えっと……親戚の子です」
「ダークエルフの親戚ってどういう事だい!?あんた、どう見ても人間じゃないかい!!」
適当な言い訳を行うレイナにリンは呆れてしまうが、あまり深く関わると面倒事に巻き込まれそうだと考えた彼女はレイナの報告を確認し、とりあえずは依頼の達成を認める。
「もういいよ……それより、調査報告に関しての情報はこれで全部だね?まあ、これだけの情報が集めれば十分かな、依頼の達成を認めてやるよ」
「あ、ありがとうございます」
「礼を言う事じゃないよ。それよりもあんた、これで評価点は集まったね。次の階級の昇格試験を受けられる」
「昇格試験?えっ、そんなに簡単に昇格試験が受けられるんですか?依頼を2つ達成しただけで?」
「まあ、驚くのも無理はないね。普通の銅級冒険者ならあり得ない事だけど、あんたの場合は特別だよ」
レイナはたった2つの依頼を受けただけで次の階級への昇格試験を受けられる事に驚くが、リンによると元々レイナの腕前は銅級には収まらず、本来ならばもっと高い階級を与えても問題ないと判断していた。
規則なのでリンはレイナが銅級冒険者の資格しか与えられなかったが、最初の試験で好成績を残した人間には最初から高い評価点を与える事が出来た。つまり、レイナは依頼を受ける前から高得点の評価点を与えられており、塩漬け依頼を果たした事で一気に評価点が集まったので昇格試験を受ける事が出来るという。
「昇格試験に受けたいというのなら今すぐに用意できるけど、どうする?人虎を倒せるような実力を持つあんたなら簡単な試験だと思うけどね」
「試験はどんな内容ですか?また戦うんですか?」
「いや、試験といっても実際の内容はただの依頼みたいなもんさ。ギルド側が指定した魔物の討伐、あるいは誰もやりたがらない依頼を受けてもらうだけだね」
「なるほど……こうやって塩漬け依頼を達成させるんですね」
「察しが良いね。まあ、その通りさ……」
レイナの言葉にリンは苦笑いを浮かべ、冒険者ギルド側としても冒険者が塩漬け依頼を受けない事を問題視しており、依頼が果たされなければ冒険者ギルドの信用問題にも関わるため、昇格試験と称して実力のある冒険者達に依頼を受けて欲しいらしい。
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