第378話 オークの群れ
「うわっ!?早い早い!!」
「ぷるるるっ……」
「きゅろっ!?クロミンが向かい風で凄い形になった!!」
「ヒヒンッ!!」
レイナ、サン、クロミンを乗せたペガサスは凄まじい速度で駆け抜け、その速さはシロやクロに匹敵するか、あるいはそれ以上の速度だった。しかも森を出てから一度も休まず、王都までレイナ達を運んでくれる。
王都を視界で捉えられるほどの距離にまで辿り着くと、ペガサスは徐々に減速して立ち止まり、自分はここまでだとばかりに止まってしまう。レイナ達は背中から降りると、ペガサスと一旦別れる事にした。
「ふうっ……ここまで連れてきてくれてありがとうね」
「ヒィンッ」
「ペガ、ありがとう!!また会おうね!!」
「ぷるぷるっ(今度は安全運転してね)」
ペガサスに別れを告げると、最後にペガサスはレイナ達の顔に頭を摺り寄せ、そのまま勢いよく駆け抜ける。仲は良くなったがどうやら人間の事を恐れているらしく、人里には近づきたくないらしい。
草原でペガサスと別れた後、レイナ達は徒歩で王都へ向かおうとしたとき、ここでレイナはこの場所の付近で襲われていた馬車を思い出す。大分時間が経過しているので馬車はもう残っているはずがないと思っていたが、オークの鳴き声が響く。
『プギィイイイッ!!』
「えっ、また襲われてる!?」
「レイナ、あれ違う馬車」
オークの鳴き声がした方向に視線を向けると、そこにはオークの集団に囲まれる数台の馬車を確認し、それを見たレイナはまた同じ馬車が襲われているのかと思ったが別の馬車だと判明する。
こちらの馬車はどうやら商団らしく、馬車の内の一つにオークは群がり、木箱に入っている果物などの食料品を奪い取っていた。馬車の傍には武器を持った人間はいるが、どうやら商団が雇った護衛というわけでもないらしく、明らかに武器の扱いが素人だった。
「ひいいっ!?く、来るなっ!!」
「止めろ、近づくなっ!!」
「プギィッ!!」
数名の男性が荷物を漁るオークを追い払おうとするが、そんな彼等に対してオークの1匹が棍棒を振りかざし、相手の剣を弾き飛ばす。
「ぎゃあっ!?」
「うわぁっ!?だ、駄目だ……逃げろぉっ!!」
「プギィイッ!!」
逃げようとした男性の一人を見てオークの一体は後を追いかけ、その背中に棍棒を叩きつけた。男性は悲鳴を上げて倒れ込むと、オークは巨体を生かして相手に覆いかぶさり、逃げられないようにする。
その光景を見ていたレイナはこのままでは殺されてしまうと判断し、見ていられずに駆け出す。その後ろからサンとクロミンも続き、レイナはアスカロンを引き抜くとオークの集団に向けて切りかかった。
「はあああっ!!」
「プギィッ!?」
最初にレイナが狙ったのは男性を体重で圧し潰そうとするオークに向かい、アスカロンを振り払う。その結果、オークの上半身と下半身が切り裂かれ、オークは白目を剥いて倒れ込む。
「大丈夫ですか?」
「ううっ……ぐぅっ!?」
「良かった、まだ生きてる……」
「あ、あんた……そのバッジ、冒険者か!?頼む、助けてくれ!!」
レイナの身に付けているバッジを見て冒険者だと判断した他の人間は彼女の元に集まり、助けを乞う。状況的に考えても見捨てるわけには行かず、レイナは頷いてオークの集団と向かい合う。
一方でオークの集団は仲間を一撃で殺したレイナに対して危機感を抱いた表情を浮かべ、彼女の手に持つアスカロンを見るだけで怯えてしまう。だが、相手は一人である事を認識するとオークの集団は怯えながらも咆哮を放つ。
『プギィイイッ!!』
「ふうっ……こいっ!!」
アスカロンを構えたレイナは迫りくるオークの集団に向けて駆け出すと、その姿を見た男性たちは驚く。背格好からは人間にしか見えないが、獣人族顔負けの移動速度を誇り、レイナは更に「瞬動術」の固有スキルを発動させる。
瞬動術を発動させた事でレイナは更に加速し、オークの集団の正面から迫ると、アスカロンを横なぎに振り払う。その動作だけでオークは手にしていた棍棒が切り裂かれ、肉が裂き、血飛沫が舞う。
『プギャアアッ!?』
「クロミン、みずてっぽー!!」
「ぷるっしゃああっ!!」
肉体を傷つけられて悲鳴を上げるオークの集団に対し、更にサンが背後から接近するとクロミンに放水を行う。クロミンから放たれた水滴が見事にオークの顔面に衝突し、一時的に視界を奪う。
その隙を逃さずにレイナはアスカロンを振り払い、次々とオークの肉体を切り裂いていく。やがてオークの首領と思われる大型のオークが怒りの声を上げ、レイナに襲い掛かろうとした。
「フゴォオオッ!!」
「……ふっ!!」
「プギャッ!?」
しかし、迫りくる大型のオークに対してレイナは返す刀でアスカロンを顔面に振り払い、一撃でオークの頭部を切り裂く。結果から言えば十数体は存在したオークは10秒も経過しないうちにレイナによって肉体を細切れにされていた。
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