第365話 黄金級冒険者の捜索
「レア君に頼みたい事は君は冒険者になってもらい、ギルドの私の知り合いを通じて黄金級冒険者の捜索を頼みたい」
「黄金級冒険者、ですか?」
「ああ、前にも話した事はあるが冒険者の階級がある事を覚えているか?」
「ええ、一応は……」
この世界の冒険者は階級制度があり、階級は「銅級」「銀級」「白銀級」「金級」「黄金級」の5つに分かれている。黄金級冒険者は冒険者の最高の位に当たり、世界でも数十人もいないと言われていた。
実際に広大な領地をもつヒトノ帝国でさえも黄金級冒険者は10人いるかどうかと言われており、彼等の一人一人が高い戦闘力かあるいは特殊能力を持ち合わせている。その中には勇者にも匹敵するのではないかと言われる程の力を持つ人物もいるという。
「実をいうとこのケモノ王国にも3人の黄金級冒険者が存在するんだ。だが、彼等と連絡を取るのは難しい。黄金級冒険者は常に多忙だからね、この僕ですらも顔を合わせた事がないほどだ」
「えっ!?でも、今のリルさんなら呼び出す事が出来るんじゃないですか?」
「それは無理だ、冒険者という存在は特別な存在だからね。いくら僕がケモノ王国の王族であろうと彼等を無暗に扱う事は出来ない。第一に黄金級冒険者ともなると国側としては丁重に扱わなければならないんだ」
実質的に現在の王都の管理しているのはリルだが、そんな彼女でも黄金級冒険者が相手となると慎重に対応しなければならない存在らしく、3人の黄金級冒険者の所在の捜索をレアに頼む。
黄金級冒険者は1人1人が驚異的な存在であるため、もしも彼等を味方につける事に成功すればガーム将軍の軍勢に対抗する大きな戦力となり得る。しかし、その黄金級冒険者を探し出すにしてもリルは王城から離れられず、だからこそレアに頼みたいという。
「レア君に頼むのはギルドの冒険者として入ってもらい、そして黄金級冒険者の所在を捜索してほしい。一応は冒険者ギルドの方には僕も連絡を送っておくが、恐らくあまり協力は期待できないだろう」
「え、どうして?」
「先日、僕達が巨塔の大迷宮を攻略してしまっただろう?そのせいでちょっと冒険者達に恨みを買ってしまったようでね……彼等としては冒険者でもない人間が今までに誰も攻略を果たす事が出来なかった巨塔の大迷宮を制覇してしまった事が気に入らないんだ」
「ええっ……?」
リル曰く、先日の巨塔の大迷宮を白狼騎士団が攻略した事が原因で冒険者ギルドの冒険者達の機嫌を損ねたらしく、彼等からすれば冒険者でもない人間達が大迷宮を攻略したせいで面子をつぶされたに等しい。
基本的に大迷宮を攻略する存在は冒険者であったのに対し、巨塔の大迷宮は危険性を考えて国側から近づく事も禁止されていた。それにも関わらずに冒険者は立ち入れない間に国の騎士団が巨塔の大迷宮に挑み、攻略を果たしたせいで世間の認識では冒険者でも攻略を果たせなかった大迷宮をリルの白狼騎士団が果たした事で騎士団の評価は上がったが、逆に冒険者の評価は下がってしまう。
冒険者ギルドからすれば巨塔の大迷宮を攻略できなかったのは国が大迷宮に近付く事を禁じていたからであり、その癖に自分たちだけが挑んで攻略を果たした事に不満を抱いていた。
「僕の考えがちょっと浅はかだったよ。まさか、こんな事態に陥るとは思わなかったとはいえ、冒険者ギルドの面子を潰してしまったからね。昨日から僕の知り合いから文句の手紙が届きっぱなしだよ」
「そうだったんですか……でも、仕方ないですよね。あの大迷宮は普通の冒険者の人たちには攻略できない仕組みだったのに」
「まあ、それはそうかもしれないが、事情を話せない以上は仕方ないさ」
巨塔の大迷宮の最高階層は勇者か、あるいは勇者の血筋の人間しか立ち入る事が出来ない。なので普通の冒険者がどれだけの人数で挑もうと大迷宮の攻略はほぼ不可能に近い。
最も挙動の大迷宮の秘密を明かしても信じて貰えるかは分からず、最高階層に移動しただけで意識を失うと言われても納得できるはずがない。だからこそリルは下手な言い訳を行わず、冒険者ギルド側には謝罪の意を示すため、レアに仕事を頼む。
「という事で、レア君に頼みたいというのは冒険者ギルドに入ってもらい、君は黄金級冒険者の捜索をしてもらいたい。そしてもう一つ……」
「もう一つ?」
「君自身も冒険者になってもらい、依頼を果たして黄金級冒険者へと昇格してほしいんだ」
「えっ!?」
まさかのリルの発言に驚き、自分が冒険者に入ってしかも黄金級冒険者になれなど言われて動揺するが、リルは真面目に考えた上での結果、レアに頼みこむ。
「無茶なことを言っているとは分かっているが、君にしか頼めないんだ。冒険者ギルド側には将来的に黄金級冒険者に成りえる人材を送ると話す。そして君の力なら短期間の間に黄金級冒険者に昇格できるはずだ」
「いや、でも……ええっ!?」
「無理を承知で頼む、これは君だけにしか出来ないんだ!!もちろん、僕も全力で支援を行う。どうか冒険者になってくれ!!」
「そ、そういわれても……」
リルが頭を下げてレアに頼み込み、そんな彼女の言葉にどのように言い返せばいいのかも分からず、結局レアは断り切れずにリルの頼みを受け入れるしかなかった――
※次回から美少女冒険者レイナ編です!!(タイトルは変更の可能性有り)
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