第349話 アダマンタイトの武具・防具
「ていうか、こういう時こそレイナさんの解析が役立つじゃないですか」
「あ、そうだった……言われてみれば確かに解析で調べた方が早いや」
リリスに言われてレイナは改めて自分の解析の能力を思い出し、どんな道具だろうと解析を発動させれば詳細画面で判明する。レイナは試しに長剣を持ち上げ、能力を行使した。
「解析……うわ、凄いっ!?」
解析を発動した瞬間にレイナの視界に画面が表示されると、やはりというべきか厳重に保管されていただけはあって優秀な性能である事が判明する。
『アダマンタイトの剣――聖剣デュランダルの素材にも利用された世界最高の魔法金属アダマンタイトによって構成された長剣 所有者:不明』
「へえ、デュランダルと同じ素材で作り出されてるのか……あれ、でもなんで画面が違うんだろう?」
レイナは視界に表示された画面を確認して武器の性能を知る事は成功したが、ここである疑問を抱く。今までは聖剣の類は解析で発動した時は能力名なども表示されていたが、こちらの画面は詳細内容だけしか記されていない。
聖剣の時と今回の武器の画面の種類その物が違う事に気づいたレイナは、双方の違いの理由を考え、ある結論に至る。それはこちらの武器の場合は聖剣のような特別な能力が付与されておらず、そのせいで画面が違うのではないかと考えた。
(なるほど……聖剣の場合は能力が付与されているから普通の武器とは別枠の画面が表示されるのか。という事はこの剣は聖剣みたいに能力はないのか……いや、それでも十分に凄いけど)
残念ながら宝箱に入っていた武具や防具は聖剣の素材として扱われていた貴重な魔法金属で構成されていたようだが、生憎と特別な能力は付与されておらず、あくまでも素材が優れた武器と防具でしかない。
元々能力が付与されている武器や防具の数自体が少なく、レイナ達が入手したのは普通の武器の中でも世界最高峰の代物である事に変わりはない。それだけでも十分な成果だが、これを持ち帰っても大きな利益になるのかというと疑問が残る。
「リリス……この武器や防具はどれくらいの価値があるかな?」
「う~ん……いくら素材が優れていても、何の能力も付与されていないとなるとそんなに価値が高いとは思えませんね。まあ、普通の武器よりはずっと価値はあるでしょうけど」
リリスはレイナの質問に難しい表情を浮かべ、優れた武器と防具を手に入れた事は間違いない。だが、能力が付与されていなければ聖剣や魔剣と並ぶほどの価値はなく、これらを持ち帰っても大きな利益を生み出す可能性は低い。
「とりあえず、今のところはこの魔水晶が一番価値が高いと思いますよ。聖剣の素材に使われているというのであればこの魔水晶も同じですからね」
「あ、そうなの?でも、俺が持っている聖剣の中ではそういう水晶が着いた武器はないけど……」
「それは当然ですよ。魔水晶は聖剣の力の源ですからね、目で見て分かる場所には設置しません。刃や柄の中に内蔵されてるんですよ、きっと……」
リリスによると全ての聖剣には魔水晶も素材として利用されているらしく、外見では分からないがレイナが所持している聖剣の内部にも魔水晶が埋め込まれているらしい。その話を聞いたレイナは改めて聖剣の秘密を知るが、言われてみれば確かに納得する。
聖剣が特殊な能力が付与されているのは魔水晶が内蔵されているお陰でもあるらしく、例えばデュランダルやエクスカリバーはレイナの意思で衝撃波や光刃を生み出すが、それらの力は聖剣に内蔵されている魔水晶によって生み出されているというのがリリスの考察だった。
「魔水晶は本当価値の高い代物ですからね……ああ、持ち帰って私の実験材料にしたいところです」
「いや、それは流石に……今回の遠征の成果で白狼騎士団の今後が決まるんでしょ?だとしたらそれだけでも渡さないと……」
「分かってますよ、仕方ありませんね……あ、でも冷静に考えればレイナさんの能力なら魔水晶なんて作り放題じゃないですか?」
「あっ……言われてみれば確かに」
「ぷるんっ!?(え、気づいてなかったの!?)」
リリスの発言にレイナは呆気に取られ、そんな彼にクロミンは驚愕の表情を浮かべるが、冷静に考えれば解析と文字変換の能力を使えばレイナは魔水晶をいくらでも生産できる。
さらによくよく考えれば今回の遠征で白狼騎士団が成果を上げなければならないというのであれば、レイナの力を使えば国王が納得するだけの宝物や素材を作り出せることが出来る事を思い出す。
「……ねえ、リリス。俺、実はとんでもないことを思いついたんだけど……」
「奇遇ですね、私もですよ」
「ぷるんっ……(なんか悪い顔してる)」
レイナは宝箱から回収した道具に視線を向け、そして気絶しているリル達に顔を向ける。現在、この状況で意識を保っているのはレイナとリリスとクロミンだけであり、二人が上手く口裏を合わせれば彼等に気づかれずに存在しないはずの「宝」を用意できることが判明した――
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