第348話 魔水晶
「そもそもレイナさんは魔石がどうやって出来上がるのは知っていますか?」
「え、いや……そういえばあんまり知らないかな」
「魔石と言うのは鉱石が長い時をかけてその環境に存在する魔力を吸収し、出来上がった代物です。例えば火山では良質な火属性の魔石が発掘される事は知ってますか?」
「うん、前に教わったよ」
「どうして火属性の魔石が火山のような場所で発掘できるのかというと、火山が発する膨大な熱の力を鉱石が吸い上げた結果、魔石へと変貌します」
リリス曰く、この世界で呼ばれる「魔石」とは元々は只の変哲もない鉱石にしか過ぎなかったが、長い時を費やして環境に適した魔力を吸い上げる事で魔石へと変貌するという。
魔石は魔力を宿した鉱石である事はレイナも知ってはいたが、今回の魔水晶の場合は魔石よりも更に希少な存在らしく、彼女は目を輝かせながら魔水晶を覗き込む。
「魔水晶も元々は魔石である事に変わりはありませんが、少なくとも100年以上の時を費やして魔力を吸収しなければ誕生しません。長い時をかけて鉱石が膨大な魔力を取り込むと、やがては水晶のように光り輝き、不純物が取り除かれます。その結果、通常の魔石の何倍、いや何十倍の魔力を宿す事が出来るそうです」
「え、じゃあこの魔水晶も……」
「ええ、きっと普通の魔石の数十倍の魔力を取り込んでるはずです!!」
「ぷるるんっ(すごっ)」
魔水晶をハンカチに包んだリリスは感動を抑えきれない様子で抱きしめ、それほどまでに貴重な代物を手に入れた事が嬉しいらしく、彼女は興奮した様子でレイナの肩を叩く。
「さあ、何してるんですか!!この調子で他の宝箱を全部調べますよ!!」
「え、うん……そ、そうだね」
「ぷるんっ(現金な奴だな)」
リリスの言葉にレイナは戸惑いながらも鍵を取り外し、別の宝箱を開こうとする。だが、今度の宝箱は鍵をはめ込んでも上手く回す事が出来ず、レイナは力を踏ん張るが途中までしか鍵をはめ込めない。
差し込む事が出来たので鍵のサイズが合わないというわけではなく、単純に巻き込む力が足りないだけかと思われるが、残念ながら現在のレイナの力を持ってしても鍵は開かなかった。
「駄目だ!!この宝箱は開かないよ……」
「ええっ!?レイナさんでも無理だなんて……どんだけ力がいるんですか」
「う~ん……もう少しレベルを上げたら開きそうだけどな」
現在のレイナのレベルは50を迎え、更に剛力のお陰で腕力は上昇しているはずだが、それでも宝箱を開く事が出来ない。どうやら宝箱を開くには現在のレイナの力では足りず、もう少しレベルを空けるかあるいは別の方法で開けるかを試すしかない。
「レイナさんの解析の能力で開く事は出来ないんですか?」
「やろうと思えばできると思うけど……その前に他の宝箱を試そうか」
「そうですね。ならこの宝箱はちょっと印を付けておきましょう」
「ぷるぷるっ(それがいいと思う)」
残念ながら開く事が出来なかった宝箱に関してはリリスが何処からか羽ペンを取り出し、白色のインクでクロミンの絵を描き込む。これで間違える事はなく、レイナ達は他の宝箱を開け始めた――
――それからしばらく時間が経過すると、宝箱をどうにか10個まで開く事には成功したが、流石にレイナの方が体力に限界を迎えて休憩を挟む。
「はあっ……ふうっ……も、もう無理……少し休ませて」
「だらしないですね……とは言えませんね、流石に今日は色々とありましたからね。体力の方も限界でしょう」
「うん、ステータス画面を改竄すればすぐに体力を取り戻せると思うけど……」
「それは止めておいた方がいいでしょう。どんな状況に陥るかも分かりませんし、今はゆっくり休んで体力を回復させてください」
「そうするよ……ていうか、絨毯まで用意してたんだ」
「ぷるんっ(水、飲む?)」
レイナはリリスが鞄から取り出した絨毯の上に寝転がり、そんな彼に対してクロミンが水筒を差し出す。どうやらレイナが宝箱を開いている間にリリスの方も絨毯を用意して彼を休ませる準備を行っていたらしく、彼女は別の場所に敷き詰めた絨毯にこれまで宝箱から回収した代物を置いていく。
宝箱に入っていた中身は闘拳、籠手、魔水晶以外には鎧、盾、長剣、短剣、手斧など様々な武具と防具が入っていた。しかし、全て共通する点があるとすれば魔水晶以外の道具は全部が「漆黒」に染まっていた。
「う~ん、漆黒の剣に盾ですか。随分と中二病が好きそうなデザインと色合いですね」
「これ、何で出来てるの?黒鉄?」
「いえ、普通の金属ではないようですね。恐らくは魔法金属だと思われますが……レイナさんが持っているデュランダルと似てませんか?」
「言われてみれば……」
「ぷるんっ?」
リリスの指摘にレイナはデュランダルの事を思い出し、確かにどの武器もレイナが所有するデュランダルと同じく漆黒に染まっている事から同じ金属で構成されている可能性があった。
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