第316話 レベルの上昇

「う、ぐあっ……!?」



身体が燃えるように熱くなったレイナだが、しばらくすると熱は収まっていき、やがて自由に動けるようになった。いったい自分の身に何が起きたのかと戸惑うが、ここである事を思い出す。


ヒトノ帝国を脱出する際にレイナはゴブリンの亜種を倒したとき、亜種の体内から出現した魔石を破壊した時にほんの僅かではあるが今の感覚と似たような感覚を覚えていた。亜種を倒したときにレイナは新しい能力を覚えていた事を思い出し、慌ててステータス画面を開くと驚くべき内容が記されいた。



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称号:解析の勇者


性別:女性


年齢:15才


状態:興奮


レベル:45


SP:99


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画面を確認して驚いたのはレベルが一気に「45」まで上がっていた。レベルが上がる前は35程度だったはずだが、一気に10レベル近くも上昇している。しかもSPに関しては限界値を迎え、レベルが上がる前はよく覚えていないが少なくとも70~80しかなかったはずである。


この世界ではSPは基本的にはレベルが上昇しなければ得られないのだが、火竜を倒した影響なのか、通常よりも多くのSPが加算されていた。最も文字変換の能力を扱えばいくらでもSPを増やせるのでそこは大きな問題ではないが、問題なのは固有能力に関してだった。




―――――――――――


固有能力


・解析――あらゆる物体の詳細を画面として表示する。生物の場合はステータスとして表示される


・瞬動術――神速と跳躍を組み合わせた高速移動術


・魅了――異性のみに限り、魅了する事ができる。魅了した相手はどんな命令でも受け付ける


・硬化――筋肉を凝縮させ、身体の一部の防御力を上昇


・熱吸収――あらゆる熱を吸収して自分の力へと変える


・血液操作――血液を操作する事が出来る



―――――――――――



固有能力の項目に先ほどまでは存在しなかったはずの「熱吸収」と呼ばれる能力が追加されており、内容を見た限りではどうやら火竜を倒した事で得た能力らしい。ゴブリン亜種の時は体内に出現した核を破壊した時に覚えたが、火竜の場合は倒しただけで固有能力を覚えたようだった。


思いがけぬステータスの強化にレイナは戸惑うが、すぐに気を取り直して身体を置き上げると他の人間の様子を伺う。既にネコミンは倒れているシロの元へ向かい、治療を行っているが、他の3人も火竜との戦闘で瀕死の状態である。



「ううっ……」

「くっ……」

「ウォンッ……」

「リルさん、チイ、クロ君!!しっかりして!!」

「……大丈夫、皆は生きてる。けど、これだけの人数と怪我だと私だけじゃどうしようも出来ないから手伝って」

「分かった!!」



先にレイナの治療を行っていたネコミンは額に汗を流しながら気絶しているシロに回復魔法を施すが、彼女だけでは全員の治療は間に合わず、レイナはすぐに回復薬を取り出す。


どうにか全員に回復薬を注ぎ込む事で回復を促し、もしも怪我が手遅れの状態ならば解析と文字変換の能力を使ってでもレイナは治すつもりだった。だが、結果的には全員の治療は間に合い、どうにか意識を取り戻す事に成功する。



「ふうっ……流石に死ぬかと思ったよ」

「一瞬、もう駄目かと思ったぞ……」

「クゥ~ンッ」

「よしよし、怖かったね」



意識を取り戻したクロは怯えるようにレイナの胸の中に埋まり、レイナは安心させるように頭をなでやる。シロの方も治療を終えたのかネコミンが安心した表情を浮かべて抱きかかえると、その様子を見ていたリルは邪な表情を浮かべて両手をわきわきとしながらレイナに近付く。



「レイナ君、私も怖かったんだ。だから、抱き着かせてもらっていいかな?大丈夫、痛い思いはさせないよ」

「なんか身の危険を感じるので嫌です。あ、それならチイの胸があいてますよ」

「何を言い出すんだお前は!?あ、でもリル様なら……」

「いや、チイの場合だと満足できそうにないから……」

「酷い!?」



レイナの言葉にチイは頬を赤らめるが、リルは少し困った風に拒否すると彼女は涙目を浮かべる。その一方でシロを抱きかかえたネコミンが近づくと、彼女は地面に落ちているムラマサに気づき、リルに声をかけた。



「リル、これ……」

「えっ?これは……そうか、最後の攻撃には耐え切れなかったのか」

「どうしたんですか……あっ」



リルの少し寂しそうな声にレイナは何かあったのかと顔を向けると、そこには地面の上で刃が砕けた妖刀ムラマサが存在した。最後の火竜の攻撃の時にどうやら壊れてしまったらしく、もう武器としては使えそうにない。


元々は第四階層の突破のため、戦力強化のために持ち出したムラマサだったが、もう一つの目的はこの呪われた妖刀を破壊するためでもある。だが、火竜との戦闘では大いに役立ち、最後の最後まで主人である自分の役にたったムラマサにリルは寂しそうな表情を浮かべた。

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