第303話 諸刃の剣
(シンプルに破損とか、破砕とかいう文字に変えてみるかな……いや、駄目だ。それだと武器じゃなくて斬りつけた相手に影響がありそうだな)
能力の項目に表示されている文章を変化させたとしても、あくまでも能力が変わるだけであってムラマサ自身は影響を受けない可能性もある。やはり別の方法で破壊を試みるべきかと考えた時、ここでネコミンが思い出したように告げた。
「諸刃」
「え?」
「諸刃なら壊れるかもしれない」
「諸刃……そうか、それがあったか!!」
「なるほど、確かにそれならば!!」
ネコミンの言葉にリルは思い出したように頷き、ハンゾウも驚いた声を上げる。レイナは諸刃という能力名を聞いたこともなく、いったいどのような能力なのを問う。
「その諸刃というのはどういう能力なんですか?」
「文字通り、武器が諸刃の剣のように変化する。強力な能力を持つ一方で下手をしたら所有者に大きな害を与えるかもしれない危険な能力」
「それが……諸刃の能力?」
説明を受けたレイナは「諸刃」という能力が「諸刃の剣」の如く危険な能力だと知らされ、この諸刃が付与された武器は非常に優れている反面、一方で所有者に危険を及ぼす可能性があるという。
「諸刃が付与された能力はどんな武器であろうと能力を最大限にまで引き出す事が出来るんだ。だが、同時に能力を限界近くまで常に維持しているため、壊れやすいという性質を持つ」
「だから優れた武器であればあるほどに素晴らしい能力を発揮するのでござるが、反に負荷が大きくて武器が壊れやすくなってしまうでござる」
「なるほど……だから「諸刃」か」
能力を最大限にまで引き延ばす一方で大きな負荷を与えるらしく、正に損得が両立した能力だと言えた。
話を聞いたレイナはムラマサに視線を向け、表示されている「呪力」の項目を書き換えれば「諸刃」という文字に変えられる事を確認する。
「なら、この魔剣に諸刃の能力を付与させればいずれ使い続ければ壊れますか?」
「そうだな、魔剣がいくら頑丈だとしても……優れた能力を持つほどに負担も大きくなる。使い続ければいずれは壊れてしまうだろう」
「しかし、諸刃の能力によって強化された魔剣を誰が扱うのでござるか?あ、拙者は断るでござる!!いくら刀とはいえ、そのような呪われた妖刀など扱いたくはないでござる!!」
「それなら俺が……」
「いや、私に使わせてくれ」
「リルが?」
ムラマサの能力を変化させた後、誰が所有するかに関して話し合おうとしたとき、リルが名乗り上げる。彼女の申し出にレイナは驚くが、リルとしても魔剣を扱う事に恐怖を抱いていないわけではないが、そろそろ自分も役立ちたいと考えていた。
「魔剣の力を手にすれば戦闘でも大きく役に立つだろう。それにレイナ君が魔剣を使用して危険に晒された場合、私達ではどうする事も出来ないかもしれない。それならば私に使わせてくれ」
「でも、それだとリルさんが危険な目に……」
「大丈夫さ、諸刃の剣といっても使い道を間違いなければ大きな力になる。それにこれから挑む第四階層はこの巨塔の大迷宮で最も過酷な場所だ。それならば私も自分の身と仲間を守る力が欲しいんだ」
「リル……」
「きゅろろっ……リル、偉い!!」
「ぷるぷるっ(感動した)」
リルの覚悟を聞いたレイナ達は彼女の意思を尊重し、次の探索の際は魔剣ムラマサはリルに預ける事にした。
だが、ここで問題があるとすればムラマサの所有者がリルに移るかであり、既に魔剣の持ち主であるバッシュはこの世にいないが、魔剣がリルの事を所有者として認めるかどうかが問題だった。
「とりあえず、ムラマサの能力を変化してみますね」
「ああ、頼む」
「レイナ殿、気を付けて扱って欲しいでござる」
「大丈夫だよ、別に触る必要はないから……」
岩の上に置いたムラマサを視界に捕らえながらレイナは詳細画面に指を構え、まずは能力に表示されている「呪力」を「諸刃」という文字に書き換える。
(さあ、どうなる?)
能力を書き換えた事で画面が更新され、レイナはムラマサの様子を伺う。するとムラマサが光り輝き、やがて全体が漆黒に染まっていたはずの長剣が変わり果て、美しく煌めく刀身へと変化を果たす。
――ムラマサ――
能力
・諸刃
・切断上昇
・魔力吸収
詳細:七大聖剣に対抗するために作り出された七大魔剣の一振り、現在は呪われた力を失っている。元々の使い手は「剣の魔王」と呼ばれた「バッシュ」
――――――――
詳細画面の方も文章の内容が若干変化しており、どうやら能力の「呪力」を書き換えた事が影響で呪われた力が失ったらしく、現在のムラマサは本物の日本刀のように美し光輝いていた。
ムラマサの変化にレイナ以外の者たちも驚きを隠せず、緊張した面持ちでレイナはムラマサを持ち上げると、リルに手渡す。彼女は恐る恐るムラマサを受け取ると、その場で素振りを行い、特に問題ない事を確認する。
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