第302話 ムラマサの破壊方法
「やれやれ、これを壊すのは一苦労しそうだ。まあ、聖剣に対抗するために作り出した武器がそう簡単に壊れるはずがないか……」
「う~ん……ちょっと待ってください、もしかしたら何とかなるかもしれません」
「えっ?」
「解析」
リルの言葉を聞いてレイナは解析の能力を発動させた。視界に画面が表示され、改めてムラマサの確認を行う。
――ムラマサ――
能力
・呪力
・切断上昇
・魔力吸収
詳細:七大聖剣に対抗するために作り出された七大魔剣の一振り、この魔剣で切り裂かれた傷は癒す事は出来ない。元々の使い手は「剣の魔王」と呼ばれた「バッシュ」
――――――――
見た限りでは聖剣と同じく複数の能力が付与され、更に「呪力」や「魔力吸収」というレイナの所有する聖剣には存在しない能力もあった。
この二つの能力の後者は文字から考えるに魔力を吸収する能力があると思われるが、前者の呪力はどのような能力なのか見当がつかない。
「この魔剣には呪力という力が宿ってるみたいですけど、何か分かりますか?」
「呪力……それって確か、相手を傷つけると呪いの力で治す事が出来ないようにする魔法だったと思う」
「え?じゃあ、斬られた相手は傷が治す事が出来ないの!?」
「ああ、確かにそんな話を聞いたことがあるな。魔剣によって傷つけられた者はどんな回復薬や治療を施そうと治す事は出来ない……そういう風に伝えられている」
「だから魔剣は聖剣と違い、力があったとしても呪われた剣として伝わっているでござる」
「きゅろろっ……怖い」
「なるほど……」
魔剣に付与された呪力という能力の意味を理解したレイナは冷や汗を流し、改めて人々を救うために作り出された聖剣とは根本的に性質が異なる事を知る。魔剣はあくまでも人に害を為す武器として製造されたため、その能力も危険極まりない。
ムラマサの詳細画面を開きながらレイナは色々と考え、文字変換の能力を使ってムラマサを破壊する事が出来ないのかを考えるが、詳細画面には人間に使用するときと違って「状態」の項目が存在しない。
(う~ん……状態が表示されていれば「破壊」とか「破損」を打ち込めば何とかなると思ったけど、これは無理そうだな)
特徴に表示されている文章を変換して壊すのも難しそうであり、どうするべきか考えた時、不意に特徴に表示されている文章の中に所有者が記されていない事に気づいた。
(あれ?所有者が表示されていない……元々の使い手は「バッシュ」と書かれているけど、これは所有者名じゃないよな)
これまで聖剣を作り出すときは最後の文章に所有者の名前が表示されていたが、こちらのムラマサには所有者の名前は表示されていない。剣の魔王と呼ばれるバッシュが扱っていたという記載はあるが、これは経歴であって現在の所有者の名前ではない。
考えられるとしたら元々の所有者が死んでしまい、ムラマサの所有権が失われたので所有者名が表示されなくなったというのが妥当である。死霊魔術師は剣の魔王が戻るまでこの妖刀を守り続けるつもりだったが、その所有者は既にこの世にいないらしく、そう考えると100年以上も守り続けてきた死霊魔術師が不憫に思えた。
「この魔剣、所有者がいないみたいですね」
「まあ、既に元々の持ち主の剣の魔王は勇者に討たれているからな……」
「この場合はどうなるんですか?新しい所有者はどうやって選ばれるんですか?」
「だいたいの場合は普通の武器は前の所有者がいなくなれば、次の人間が武器として扱った場合に所有権は移ると言われている。但し、聖剣や魔剣の場合はそれを持つに相応しい物でなければ扱えないと聞いているが……」
「そうだったんですか。あれ、じゃあ聖剣を所有している人間は生きている間は他の人間に渡す事は出来るんですか?」
「不可能だ。所有者が生きている限りは別の人間に聖剣の所有権が移る事はあり得ない。だから君はアリシアを殺害したと疑われたんだろうね。帝国で皇女を殺し、君が聖剣の所有権を奪ったと勘違いされたんだ」
「なるほど……」
レイナは帝国を追い出される切っ掛けとなったのが自分が最初に作り出した聖剣フラガラッハのせいだと思い出し、嫌なことを思い出したて眉をしかめながらムラマサを見つめる。文字変換の能力を駆使してムラマサを破壊するのも難しく、どうすればいいのかと考えた時にある事に気づく。
(そうだ、状態が表示されていないなら代わりに能力の方を変化させれば……)
状態の項目が存在しない詳細画面を見てレイナが目を付けたのは能力の項目であり、付与されている能力を把握してこれらを利用して壊す事が出来ないのかを考える。そこでレイナはリル達に相談を行う。
「あの、能力の中に武器を強化するのではなく、弱体化させるような効能を持つ能力とかありますか?」
「強化ではなく、弱体化?」
「強くするのではなく、弱くする能力でござるか?う~ん、言われて見てもすぐには思いつかないでござる」
レイナの質問にリルもハンゾウも心当たりはないらしく、流石にそう都合よくはいかないらしい。
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