第295話 転移魔法陣の仕組み

「それに冒険者が一方的に魔物を追い詰めるわけではありません。大迷宮内で命を落とす冒険者も多いはずですし、その人達の死体も吸収されているはずです。それに大迷宮内では良質な鉱石や魔石を発掘されるといいますし、恐らくですが死体を吸収する以外に魔力を生み出す、あるいは魔力を取り込む仕掛けがあると思います」

「なるほど……でも、その話とブロックゴーレムが何の関係があるの?」

「あ、すいません。話が脱線してましたね……要するに私が各階層の転移台が発動する理由は、転移台が何らかの方法で大迷宮内で生産される魔力を利用しているという事です」

「ふむふむ、それでどうして拙者たちはバラバラに転移したのでござる?」

「外界の転移台が各階層の転移を行う際、必ず転移先の転移台と連動してたんですよ。分かりやすくい言えば転移台が転移できる場所は他に転移台が存在する場所に限ります。ですが、今回の場合は転移台の傍で縄張りを築いていたブロックゴーレムのせいで転移台に送り込まれるはずの魔力の大部分が奪われ、転移魔法陣の発動の際に不具合を引き起こしたんです」

「不具合?」



リリスによると第三階層の時に限り、転移魔法陣内の人間全員が同じ場所ではなく、別々の場所に転移した理由は転移台の不調が原因だという。



「通常の場合、転移台が発動すれば魔法陣内に存在する人間は同じ場所に飛びます。しかし、今回の場合は第三階層の転移台がブロックゴーレムの影響を受けて正常ではなくなり、そのせいで私達はバラバラに飛ばされたんです」

「ちょっと待って欲しいでござる。第三階層の転移台が不具合を起こしていたとしても、拙者たちが使用した転移台とは何の関係もないのでは?」

「いいえ、転移台が単体の場合はそもそも転移魔法陣の発動も出来ません。そもそも転移魔法陣というのは入口と出口を形成しなければ発動する事も出来ないんですからね」

「入口と出口……?」



リリスの言葉にレイナ達は首を傾げると、彼女は転移魔法陣の仕組みを説明してくれた。



「分かりやすく言えば私達が使用している転移台の転移魔法陣は「入口」だと考えてください。私達が転移魔法陣を発動する際、私達は大迷宮へ入るための入口の扉を作り出したという事です」

「ふむふむ、それで?」

「入口があるという事は、当然ですが出口も存在します。その出口を用意するのが各階層の転移台です。私達が入口を作り出した瞬間、目的の階層の転移台が連動して私達の作り出した入口と繋がる出口を作り上げるんです。そして私達は入口の扉から入って出口の扉から抜け出すと、そこは大迷宮の内部という事です。つまり、分かりやすく言えばもしも大迷宮内の転移台が存在しなかったり、あるいは壊れていた場合はそもそも転移する事も出来ません」

「分かりやすいような分かりにくいような……」

「要するに第三階層の転移がしっかりとしていなかったのは、転移台に不具合が生じていたからというわけです」

「では、今後も第三階層へ転移するときはバラバラに飛ばされるのでござるか?それは少し面倒でござるな……」



第三階層の転移がおかしかった理由が転移台の不具合の場合、今後も第三階層に転移する際は別々の場所に飛ばされるのかとハンゾウは危惧するが、その点に関してはリリスは笑いながら否定する。



「いやいや、そもそもあんな場所に戻る必要なんてありませんから、あんなに暑くて碌な素材も回収できない階層に戻る必要もありませんよ」

「そうなのでござるか?」

「第四階層への合言葉が判明した以上、もう第三階層に立ち寄る理由がありません。まあ、剣の魔王バッシュが作り上げた城や街の事は気になりますが、今はそんな事をよりも第四階層の探索を急ぎましょう」

「そうか……それもそうだな」



リリスの発言に全員が頷き、紆余曲折はあったがリリス達は遂に第四階層への合言葉を入手した。ここから先は遂に問題の第四階層へ挑む事になり、幻の第五階層が本当に存在するのかを確かめる必要がある。だが、ここでレイナはある疑問を抱いた。



「あれ?でもちょっと待って、少し気になる事があるんだけど……」

「どうしました?」

「いや、今までの階層は帰還するときは転移台を発見して戻ってきたよね」

「その通りでござる」

「なら、第四階層に挑んだ冒険者達は帰還するときに第四階層に存在する転移台を発見したんだよね?という事はもしも第五階層が存在するとしたら第五階層に繋がる合言葉を知っているはずなんじゃ……」



今までは深く考えなかったが、転移台に次の階層の合言葉が刻まれている場合、過去に第四階層に挑んだ冒険者は本当に第五階層が存在するとしたら、その合言葉を知っているのではないかとレアは考える。しかし、その答えに対してリルが説明した。

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