第294話 大迷宮の謎
「でも、どうしてあのブロックゴーレムを作り出す事が転移に影響を与えたの?」
「あのブロックゴーレムは転移台の傍に縄張りを形成していました。あのブロックゴーレムが転移台の傍に住処を築いた理由は二つ、一つ目の理由は転移台に近付く存在を排除するため……そしてもう一つは転移台が放つ魔力を吸収させて不調を引き起こすためです」
「不調……?」
リリスの言葉にレイナは疑問を抱き、不調という言葉に引っかかりを覚えると、彼女はレイナに尋ねてきた。
「私達が大迷宮の階層に転移できるのは転移台の転移魔法陣が必要です。ですが、その転移魔法陣を発動させる魔力はどうやって作り出されていると思います?」
「えっ?えっと……魔石とか?」
「転移台に魔石が設置されているように見えましたか?」
「そういえば……じゃあ、どうやって転移台は発動しているの?」
「結論から言えば転移台は魔力を吸収する仕掛けが施されています。各階層に配置されている転移台は周囲に存在する魔力を吸収して転移魔法陣を発動する仕掛けなんです」
「周囲から魔力を……?」
レイナは魔石などが転移台に取り付けられ、魔石から魔力を得て転移魔法陣が発動しているのではないかと考えたが、リリスによると転移台は魔法を発動させるときは周囲から魔力を吸収して発動させているという。
「大迷宮で死亡した魔物は放置すると、自然と消えてしまうのは知ってますね?」
「うん、前にも何度か聞いたことがあるよ」
「大迷宮では多数の魔物が存在し、常に争い合ってます。なのにどうして大迷宮内の魔物が互いに殺し合って全滅する様子もありません。外部から何度も冒険者が訪れては魔物の討伐を行っているのに大迷宮内の魔物が絶滅しない理由を考えた事はありますか?」
「むうっ……言われてみれば考えたこともないでござる」
「確かにそれは気になっていたが……」
他国に存在する大迷宮では数多くの冒険者が毎日のように大迷宮へと潜り、大量の魔物を狩っている。しかし、どんな大迷宮であろうと魔物が絶滅したという話は聞いておらず、レイナが過去に訪れた事があるヒトノ帝国も同様だった。
ヒトノ帝国の大迷宮は文字通りに「迷宮」のような構造をしており、巨塔の大迷宮と比べても隔離的な構造だった。しかも連日のように数多くの冒険者が大迷宮に挑んでいるにも関わらず、魔物が全滅する様子もない。
「この本によると大迷宮内では魔物が死んだ場合、別の場所で新しい魔物が誕生するそうです。この誕生するというのは子供が産まれるというわけではなく、唐突に新しい魔物が現れるらしいんです」
「現れる?どういう意味でござる?」
「地面の中から魔物が出てくるそうです。実際に大迷宮に入った人間が地中から魔物が現れる姿を目撃した事があるらしいんです」
「地面から……魔物が?」
「はい、といってもモグラのように土砂をかき分けて出てくるわけじゃありませんよ。まるで水中から浮かび上がってくるように魔物が現れるそうです。ちなみに大迷宮で死亡した魔物も水中に落ちるように吸い込まれていくらしいです」
リリスの言葉にレイナ達は地面から魔物が現れる光景を想像するが、何とも言えない表情を浮かべる。想像するだけでもあまりにもおかしな光景であり、そんな事があり得るのかと思うが、実際に大迷宮内でその光景を目撃したとう人間の数は多い。
「私の推測では大迷宮で死亡した生物が消え去るのは大迷宮に吸収され、吸収された死体は魔力に変換されます。その魔力を利用して新しい魔物が生み出されたり、転移台の発動のための供給源として利用されていると思います」
「えっ……」
「死体を吸収して、魔力を作り出している?そんな事が出来るのか?」
「そうでもなければ魔物を殺しても絶滅しない理由が説明できませんからね。あの場所で死んだ魔物は死体と共に吸収され、その後に新しい魔物として生まれ変わる……だから大迷宮内の魔物が全滅する事はないんじゃないかと私は思います。実際にこの死霊魔術師も私と同じ考えを持っていたようです」
大迷宮の魔物が全滅しない理由をリリスは自分なりに推理して告げると、ここでレイナは疑問を抱く。
「でも、大迷宮内の魔物の素材を持ち帰る人も多いよね?死体が吸収される事もないから、別の魔物が誕生するのはあり得ないんじゃ……」
「いいえ、そうとも限りません。魔物の素材を剥ぎ取るのは時間が掛かりますし、大迷宮内では常に危険が隣り合わせです。ゆっくりと素材を解体する時間もありませんから、探索の最中は魔物の貴重な素材だけを剥ぎ取って放置する冒険者も多いはずです」
「確かにそうだな……僕達が前にヒトノ帝国で王女を救い出すときもそうだった」
リリスの発言に諜報活動の時は冒険者として活動していたリルは頷き、彼女の言葉が正しい事を認める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます