第290話 転移までの時間稼ぎ
「はぁああああっ!!」
『ゴォオオオッ!!』
転移台に迫りくるサンドゴーレムの大群に対してレイナはデュランダルを振りかざし、幾度も衝撃波を放つ。既に団員達にはレイナがデュランダルの所持者である事を話しており、仮に知らない人間がいたとしてもこの状況では隠し通す事が出来ない。
サンドゴーレムの肉体は砂で構成されているため、剣や槍で攻撃を仕掛けたところで通り抜けてしまう。サンドゴーレムの体内に存在する核を破壊すれば倒せるのだが、その核もビー玉程度の大きさしかなく、しかも常に身体の中を移動しているので狙うのも難しかった。
しかし、クロミンが吐き出した水を浴びたサンドゴーレムは肉体が泥のように固まり、その状態だと簡単に身体が崩れて再生は出来なくなるので他の団員達でも対処できた。彼等はクロミンの放水で固まったサンドゴーレムを突き飛ばす。
「おらぁっ!!隊長だけに無理をさせるな!!」
「このっ、このっ!!」
「ちぃっ、まだ発動しないのか!?」
「もうちょっと頑張ってください!!ほら、早く発動しろこのっ!!斜め45度チョップ!!」
「そ、それで発動するのでござるか!?」
転移台に向けてリリスはチョップを繰り出して早く発動するように念じるが、そんな古いテレビの直し方が通じるはずもなく、転移魔法が発動する様子はない。一応は魔法陣の輝きは増しているのでこのままいけば30秒程度で魔法が発動すると思われた時、広場に振動が走った。
「うわっ!?地震かっ!?」
「いや、この反応はまさか……!?」
「ブロックゴーレムでござる!!」
振動が走った事でオウソウは地震と勘違いしかけるが、すぐに気配感知が扱えるレイナとハンゾウは巨大な気配を感じ取り、振動の正体を見抜く。案の定というべきか街道の方角から振動音と共にブロックゴーレムが姿を現し、自分の縄張りの状況を見て怒りを現すように咆哮を放つ。
『ゴルァアアアアアッ!!』
「うおおっ!?」
「き、切れてる……絶対にやばいって!?」
「まずいですね、このままだと間に合いませんよ!!」
怒り心頭のブロックゴーレムは転移台に存在するレイナ達に目掛けて走り出し、その光景を確認した団員達は慌てて逃げ出そうとしたが、既に転移台の周囲はサンドゴーレムに取り囲まれていた。
地上へ逃げれば無数のサンドゴーレムの餌食となり、かといって転移台に留まればブロックゴーレムに狙われる。正に絶体絶命の状況の中、レイナだけはブロックゴーレムに視線を向け、迎撃の体勢を整える。
(解析!!)
接近してくるブロックゴーレムに対してレイナは「解析」を発動させ、視界に詳細画面を表示させる。よくよく考えたらブロックゴーレムのステータスをまともに確認するのはこれが初めてかもしれず、視界に表示された画面を見てレイナは対抗策を考えた。
――――ブロックゴーレム――――
種類:ブロックゴーレム(ゴーレム亜種)
性別:無し
状態:激怒
特徴:岩石や砂で構成されたロックゴーレムやサンドゴーレムとは異なり、煉瓦で構成されたゴーレム。人工的に作り出されたゴーレムであるため、通常のゴーレムよりも戦闘力が高く、煉瓦の強度も魔法金属のミスリルに匹敵する。体内には魔法金属の素材となる鉱石を保有している。
――――――――――――――――
視界に表示された画面を確認してレイナはブロックゴーレムの正体を見抜き、同時に指先を状態の項目へと移動させる。ブロックゴーレムが転移台に辿り着く前にレイナは文字を書き込む。
(これで終わりだっ!!)
ブロックゴーレムの状態の項目を「激怒」から「死亡」へと変換させた瞬間、画面が更新されて走り寄ってきたブロックゴーレムの巨体が唐突に停止した。
『ゴガァアアアアッ……!?』
「な、何だっ!?」
「どうしたんだ急に!?」
自分たちに迫ってきたブロックゴーレムが唐突に立ち止まった事に団員達は驚く中、レイナはブロックゴーレムを倒した事を確信する。
だが、ブロックゴーレムは人面を想像させる目元の皺から光り輝いていた光が消え去ると、ゆっくりと前のめりに倒れ込む。
「え、ちょっと待て……おい!?」
「やばいでござる!!」
「このままだと押しつぶされますよ!?」
「きゅろろっ!?」
「ぷるるんっ(水を吐き出して萎れている)」
ブロックゴーレムは既に転移台の前にまで詰め寄り、このまま倒れ込めばレイナ達は押しつぶされてしまう。団員達は悲鳴を上げる中、レイナはどうするべきか考えた時、ここでハンゾウの聖剣に気づいて彼女に話しかける。
「ハンちゃん!!」
「えっ!?レイナ殿、急に何をっ……!?」
レイナは反射的にハンゾウの腰に手を伸ばし、この状況で自分の身体に手を伸ばしてきたレイナにハンゾウは戸惑うが、レイナの狙いは彼女ではなく聖剣フラガラッハだった。今回の作戦は命がけのため、ハンゾウもフラガラッハを身に付けた状態で戦っていたのだが、それが功を奏す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます