第274話 日誌
「それとあの死霊魔術師が付けていたと思われる日誌も発見しましたよ」
「日誌?」
「はい、数百年分の日誌なので相当な量がありましたけど、中身の方は特に大したことは書かれていませんでしたね。今日は何事も無かったとか、侵入者が現れたがリビングアーマーが排除した、とかぐらいしか書かれていませんでした」
「なるほど……」
「でも、最初の方に記していたと思われる日誌の方にはいろいろと面白いことが書いてありましたよ。まあ、その話は帰った後にしますが、日誌によるとこの第三階層は3日おきに砂嵐が発生して地形が変化するらしいです。だから私達は相当に危ない時期に訪れていたようですね」
「あの砂嵐、そんな頻繁な頻度で発生してたの!?」
リリスによると第三階層の砂嵐は定期的に発生し、その度に地形が大きく変化する事が発覚した。一度砂嵐が発生すれば三日の猶予が生まれるが、砂嵐が発生する時間は数時間は存在するため、レイナ達のように古城のような安全な建物にでも避難しなければ並の人間は生き残れない。
運悪く、レイナ達が第三階層に突入したときは砂嵐が発生する少し前の時間帯だったらしく、古城を発見した事でレイナ達は助かる事が出来たが他の人間の安否が心配だった。だが、ここでレイナは石板に記されている地図を確認して砂漠の北部に存在する「街」を確認した。
「リリス、この石板に記されている街……もしも他の団員がここに駆けつけていれば俺たちのように砂嵐から身を守る事が出来るかな」
「どうですかね……その街とやらを見てみない限りは何とも言えません。ですけど、可能性はあると思います」
「よし、じゃあ皆を休ませた後に出発しよう」
「そうですね、私も日誌の方を回収しておきます」
石板の地図に記された街に移動するまで相当な時間が掛かる事を予期したレイナ達は団員達を休ませ、自分たちは出発前の準備を整える。
リリスは日誌の回収とレイナは皆に食料と水を分け与え、用心のために解析と文字変換の能力を駆使して使えそうな道具の制作も行う――
――数時間後、団員達に十分な休息を与えると遂にレイナ達は古城を出発してレイナの地図製作を頼りにまずはオアシスへと向かう。
古城から転移台が設置されている街に向かうよりもオアシスへ立ち寄り、休憩を行った方が良いと判断した。
「皆、しっかり付いてきてね!!あと少しだから!!」
「は、はい……」
「くうっ……やっぱり、暑いな」
「隊長は何であんなに元気なんだよ……」
「泣き言を言うな!!しっかり付いてこい!!」
レイナの先導の元、広大な砂漠を十数名の団員が続き、最後尾をオウソウが務めた。移動中も警戒を怠らずにレイナ達は歩き続け、やがてオアシスが見えてきた。
「皆、オアシスが見えてきたよ!!あと少しだから頑張って!!」
「おおっ……あれがレイナさんたちが発見したオアシスですか。綺麗な場所ですね」
「ぷるぷるっ♪」
「きゅろろっ♪また泳げる!!」
サンとクロミンはオアシスを見て喜び、この2人は砂漠の熱にも耐性があるのか全然疲れる様子がない。クロミンの場合はスライムなので本来は水辺が存在する場所を住処とする生き物であり、誰よりもオアシスの到着を待ち望んでいた。
元は牙竜であるとはいえ、今現在はスライムと化したクロミンはオアシスに到着すると即座に湖に飛び込み、水面に浮かぶ。潜る事は出来ないのかぷかぷかと浮き袋のように浮かぶクロミンを見てサンも飛び込もうとする。
「サンも泳ぐっ!!」
「待て待て、駄目ですよサンちゃん。その恰好のままで泳ぐのは駄目です」
「なら、脱ぐ!!」
「そんなの駄目に決まってるでしょう!!今日は遊びに来たわけじゃないんですから我慢してください!!」
「サン、いい子だからちゃんとリリスの言う事を聞いてね」
「きゅろっ……」
「全く、本当に子供だな……ほら、肩車してやるか機嫌を直せ」
「わっ……高い高い♪」
サンが泳ぐことを禁止されてしょんぼりと気落ちしていると、オウソウが見ていられないとばかりにサンを抱きかかえた。まるで父親が娘をあやすような対応にレイナとリリスは意外に子供の面倒を見るのが得意なのかと彼に尋ねた。
「オウソウは子供をあやすのが上手いですね、もしかして子供がいるんですか?」
「あほか、俺はまだ18だ。子供がいるわけないだろうが」
「へえっ……えっ!?18才!?」
『18才!?』
「ど、どうしたお前ら!?何か変な事を言ったか?」
衝撃的なオウソウの告白にレイナとリリスだけではなく、身体を休ませようとした他の団員達も騒ぎ出す。彼等全員がオウソウの実年齢を聞いて動揺を隠せず、ここにいる誰もがオウソウの年齢は外見から20代後半から30代前半だと思い込んでいた。
※衝撃の事実!!オウソウはまだ高校生ぐらいの年齢だった!!
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