第273話 サンの見つけた物
「きゅろろっ♪」
「ぷるぷるっ♪」
「ちょっ、二人とも何してるの……ほら、こっちに来なさい!!服を着たまま泳いだら駄目でしょ!!」
「怒るところはそこなのか……?」
水面で呑気に浮かんでいるサンとクロミンにレイナは呼びかけると、2人はすぐに岸部に戻る。
「ぷるぷるっ!!」
「きゅろっ……もうちょっと泳ぎたかった」
「ああ、もうこんなに服を濡れさせて……どうせすぐに乾くだろうけど、ちゃんと脱いで水を絞らないと駄目だよ」
「隊長……何だか母親みたいですね」
「微笑ましい光景だな……」
レイナはサンの上着を脱がせると他の団員達に晒さないように気を付けながら水を絞り、一方でクロミンの方は身体を震わせて水滴を弾く。濡れた服を乾かしながらもレイナは鞄の中からサンの予備の服を取り出して着こませようとすると、サンが湖を指差す。
「レイナ、湖の底の方に変な石あった」
「変な石?変って……どんな風に変なの?」
「クロミン、出して」
「ぷるんっ」
クロミンはサンの言葉を聞いた瞬間に大口を開き、板状の石を吐き出す。その光景にレイナは驚くが、クロミンが取り出した石を見て「石板」だと気づいた。
サンが湖の底で発見したという石板をクロミンが体内に取り込んで持ち帰ってきたらしく、全体が妙にぬめぬめしている石板を恐る恐るレイナは指先で持ち上げると、石板に地図のような物が書き込まれている事に気づく。
「これって……もしかして、この階層の地図!?」
「何だと!?それは本当か!?」
「地図!?そんな物があるんですか!?」
レイナの言葉を聞いて慌てて他の者たちも駆けつけると、石板を覗き込む。そんな彼等にレイナは石板に刻まれているある部分を指差す。
「ほら、これ……俺達がいた城じゃない?」
「ほ、本当だ……確かにこの絵はあの城に瓜二つだ!!」
「それにこのオアシスまで書き込まれているぞ……」
石板に記されている地図、といっても実際のところは道らしき物は描かれてはおらず、その代わりにレイナ達が訪れた「古城」や「オアシス」の存在が記されていた。どうやら石板には第三階層の全体図が描かれているらしく、古城やオアシス以外にも色々な場所が記されていた。
「隊長、これを見てください!!ここから北の方角に街みたいのが記されていますよ!!」
「本当だ……それにこの端の方に記されているのは転移台?」
「という事は、北へ向かえば転移台へ辿り着けるというのか!?」
「きゅろっ?外に出られるの?」
「ぷるんっ?」
自分たちが発見した石板を見て興奮するレイナ達を見てサンは首を傾げるが、石板に記された内容によるとオアシスの北の方角には街のような絵が書き込まれ、その街の更に北部には転移台らしき建物が描かれていた。
これを見る限りだとオアシスの北へ向かえば転移台が存在する建物群に辿り着けるはずであり、それを知った団員達はサンを褒め称える。
「よくやったきゅろ娘!!こんなの、よく見つけたな!!」
「偉いぞ~っ!!」
「スライムもよくやった!!」
「ほら、肩車してやる!!よくやったぞお前たち!!」
「きゅろろっ♪」
「ぷるぷるっ♪」
オウソウでさえも今回のサンの功績を認めざるを得ず、その場で彼女を持ち上げて肩車で持ち上げる。サンは父親に肩車されたような子供のようにはしゃぎ、クロミンも頭の上で嬉しそうに飛び跳ねた。
思いもよらぬ場所で第三階層の地図と思われる石板を入手したレナ達だが、流石に今の状態で北へ向かうわけにはいかず、一度合流するために引き返す事にした。古城ではリリス達が待ち構え、城の中を探索しているはずなのでレイナはすぐに引き返す事を宣言する。
「よし、一旦戻ってリリス達と合流しよう!!」
『はっ!!』
レイナの言葉に団員達は即座に従い、最初の頃はレイナの事を隊長として不安を抱いてた団員達も信頼し、彼女の指示に従う――
――石板を入手して足早に砂漠を移動してレイナ達は古城へと引き返すと、リリス達の方も場内の探索を終えたのか彼女たちは古城の出入口でレイナ達を迎え入れた。レイナ達はオアシスを発見し、更には地図が記された石板を発見するという大収穫だったが、リリス達の方は残念ながらあまり成果はなかった。
「この城の中を調べてみましたが、やはり老朽化が激しいのか瓦礫が崩れて通れない通路がありますし、大量の砂に埋もれて入れない場所もいくつかありました。それでも調べられる限りは調べてみたんですけど、残念ながら脱出の糸口になりそうな手がかりもありませんでした」
「そっか……」
「でも、収穫がなかったわけではありませんよ。移動の途中にまだ使えそうな道具は回収しましたし、それにあの死霊魔術師が保管していたと思われる闇属性の魔石も発見しました。そちらも既に回収済みです」
「なるほど、ちゃっかりしてるね」
リリスによると古城で手に入るものは全て回収済みらしく、いつでも出発できる状態で待機していたという。
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