第272話 デュランダルの説明

「あははっ……いや、笑ってる場合じゃないか。全員、無事?」

「は、はい!!全員無事であります!!」

「ありますって何だよ……まあ、一応は」

「隊長のお陰で助かりました!!」

「でも、さっきのはいったい……」



団員達もレイナが所有するデュランダルの力を目撃しており、こうなるともう誤魔化せないと判断したレイナは仕方なく話す事にした。但し、あくまでも自分の正体を隠す必要があるため、怪しまれないように話を行う。



「この大剣は……聖剣デュランダル、と言えば分かる?」

「でゅ、デュランダル!?あの伝説の聖剣ですか!?」

「ま、まさか実在したなんて……」

「じゃあ、隊長は聖剣が扱えるんですか?」

「そ、そうなるかな?」



レイナは自分が所持している大剣が聖剣である事を明かすと当然だが団員達の間に動揺が走り、彼等はデュランダルを覗き込む。そんな彼等にレイナはデュランダルの能力を簡単に説明した。



「デュランダルは衝撃波を生み出す事が出来る能力を持ってるんだよ。だから皆を助ける事が出来た」

「衝撃波……そういえば確かに落ちているとき、強い風みたいなのを受けた気がしたが……」

「す、凄い!!まさか本当に聖剣が存在したなんて……」

「でも、隊長も人が悪いな……聖剣なんて凄い武器を持っているのにどうして隠してたんですか?」

「そうだな、どうして俺達に明かさなかったんだ?」



聖剣の存在を話すと当然ながらに団員達は今までにレイナが聖剣の存在を秘匿していた事を指摘するが、それに対してレイナはしっかりと考えたうえで返答する。



「えっと……色々と理由があるけど、とりあえずは聖剣の存在をむやみやたらに他の人間に知られたくはなかった。聖剣の存在が知られると大勢の人間から狙われるかもしれないから、黙っているようにしてるんだ」

「な、なるほど……確かに伝説の大剣を持っているなんて知られたら騒がれてもおかしくはないよな」

「だけど、俺達にまで内緒にしなくても……」

「その事はごめんね、でも……聖剣を持っている事がもしも知られたら俺はリルさん……いや、団長の傍にいられなくなるかもしれないから」



聖剣の存在を秘匿する事にはリルも賛成したのは嘘ではなく、彼女は無暗に聖剣の存在を知られてはならないと注意を受けていた。


聖剣を隠す理由は色々とあるのだが、一番の理由は聖剣の所有者が現れたとなればケモノ王国側も見過ごすはずがないため、隠していた事を告げる。



「聖剣の使い手が現れたなんて知ったらきっと、国に召し使えられて丁重に扱われるとは思う。だけど、その場合だと俺は団長と離れて別の騎士団に入隊させられるかもしれない」

「まあ、確かにな……聖剣の所有者というだけであって国にとっては大きな戦力だ。王女の護衛のための騎士団に配属させておくのは惜しい人材だろう」

「でも、今のケモノ王国は団長……リルさんとガオ王子で争っているのは知ってるでしょ?もしも俺がリルさんの傍から離れたら、ガオ王子の派閥に取り込まれる可能性もあるから黙ってたんだよ」

「むうっ……言われてみれば確かに元々は俺達もガオ王子の配下として加わるところだったからな」



現在の白狼騎士団の団員の殆どが元々はガオが結成した黒狼騎士団の団員である。そのため、レイナがリルの元を離れるとガオが目を付けて自分の派閥に取り込もうとするという話はあながちない話ではない。


最もレイナがリルの元を離れてガオの元へ離れる事はあり得ず、そもそもリル達がレイナの正体を知っている時点で運命共同体のため、今更他の人間の元に従うなど有り得ない話だが。



「俺はリルさんが国王に相応しいと思う。だから聖剣の存在を隠して、あの人の傍に居たいと思う」

「そ、そうだったんですか……あれ、ていうか隊長は自分の事を俺と言うんですね?」

「え、いや……へ、変かな?」

「別にいいんじゃないですか?男勝りの女の子なんていっぱいいますし……そっちの方がむしろいいですよ!!」

「ああ、そうだな」

「そ、そう?」



レイナの一人称に対して特に団員達は違和感はないらしく、そもそもケモノ王国の女性の中には男勝りの言葉を使う女性も多いらしい。


それならば彼等の前では普段通りの話し方にすることを心の中で決め、改めてレイナは他の人間には聖剣の存在を秘匿するように頼む。



「デュランダルの事は他の人間には黙っていてほしい。団長のために、皆も協力してくれる?」

「分かりました!!絶対に口外しません!!」

「口が裂けても言いません!!」

「はい、約束します!!」

「……仕方あるまい」



デュランダルの存在を秘密にすることを団員達は誓い、オウソウも今回ばかりは事情が事情なので文句は言わず、納得してくれた。そんな彼等の反応にレイナは安心する一方、ここでサンとクロミンがいない事に気づく。



「あれ?そういえばサンとクロミンは何処に行ったの?」

「あ、それが……さっきからずっと湖の中で遊んでるんですよ」



団員の言葉にレイナは驚き、慌てて湖に視線を向けると、確かに水面に浮かぶクロミンと、サンの姿があった。

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