第269話 オアシス

「ぷるぷるっ……」

「レイナ、クロミンが我慢するといってる。自分のせいで争わないで、だって」

「その言い方だとまるでクロミンを取り合う恋人と恋敵みたいな気分になるんだけど……無理をしたら駄目だよ」

「ほれみろ、こんなスライムまで気を遣っているんだぞ!!お前らも踏ん張らんか!!」

「わ、分かったよ……悪かったな、スライム」

「さあ、行きましょう隊長……」

「ごめんね、もう少し進んだら休んでいいから……」



レイナは団員達を元気づけて先へと進み、もうしばらく歩いて何か手がかりが見つけられなかった引き返すことを決めた。それからしばらく歩いた後、ひと際大きな砂丘を上ったレイナ達の視界に予想外の光景が映し出された。



「あれはっ……!?」

「きゅろっ!!大きな水たまり!?」

「違う、あれは……オアシスだ!!オアシスがあるぞ!?」

「や、やった!!水だ、水が飲めるぞ!!」

「ひゃっほうっ!!」



砂丘を乗り越えると、レイナ達の視界には「オアシス」が出現し、周辺が砂漠に覆われた中で緑地と泉を発見した。その光景を見て団員達は歓喜の声を上げ、喜び勇んでオアシスに向けて駆け出した。



「水だ、水が飲めるだ!!」

「俺が先だ!!」

「いや、俺だ!!」

「お、おい!!落ち着け、魔物が隠れていたらどうする!?」

「皆、止まって!!」



オアシスを発見した事で脱水症状を起こしかけていた団員達は駆け出し、慌ててレイナ達は止めようとしたが、彼等は止まらずに砂丘を駆け降りるように移動を行う。


それを見てレイナは急いで追いかけようとしたとき、不意にサンとクロミンが何かに気づいたように目を見開く。



「きゅろっ!?」

「ぷるんっ!?ぷるぷるっ!!」

「サン、クロミン!?急にどうしたの?」

「駄目、あの木に近付いたら危険!!」

「木だと……!?いかん、お前らそれに近づくなっ!!」



サンの言葉を聞いてレイナとオウソウはオアシスの傍に生えているひと際巨大な樹木に視線を向けると、すぐに樹木の樹皮の部分に「人面」を想像させる皺が存在する事に気づく。


いち早くオウソウは樹木の正体に気づいて団員を呼び止めようとしたが、それよりも先に樹木の人面が形を変え、枝に巻き付いていた蔓が動き出して団員達の元へ向かう。



『ジュラァアアアッ……!!』

「うわぁっ!?」

「ぎゃあっ!?」

「な、なんだぁっ!?」

「お前たち!!くそ、やはり魔物だったか!!」

「皆、すぐに助けるから!!」



樹木に擬態していたのか、食虫植物のような魔物が正体を晒す。オアシスに釣られて近づいてしまった数名の団員は樹木型の魔物に繋がった蔓に捕まり、そのまま身体を拘束されて持ち上げられてしまう。


必死に団員達は蔓から抜け出そうともがくが、普通の植物の蔓ではないのか団員の一人が短剣で切り裂こうとしても上手く切れず、蛇のようにまとわりつく。その光景を見てオウソウが魔物の正体をレイナに教える。



「こいつは……そうだ、思い出した!!トレントだ!!」

「トレント!?」

「植物型の魔物、食虫植物だ!!だが、普通は森の中にしか生息しない種のはずだが……うおっ!?」

『ジュルルルッ……!!』



説明の最中もトレントという名前の魔物は接近するレイナとオウソウにも蔓を放ち、二人を捕まえようとした。だが、それに対してレイナはデュランダルを抜き、オウソウも鍵爪を装着して切り裂く。



「このぉっ!!」

「ふんっ!!」

『ジュラァッ!?』



他の団員達の力では切り裂く事も出来なかった蔓だが、レイナは大剣で容易く切り払い、オウソウも鍵爪で引き裂く。実力的にはどちらも白狼騎士団の中では上位に存在するため、トレントの放つ蔓程度で怯みはしない。


しかし、いくら蔓を切り裂こうと無数に出現させる事が出来るのかトレントは次々と新しい蔓を出して攻撃を仕掛ける。流石に量が多くなったのでレイナとオウソウも対処しきれず、不意を突かれてオウソウは右腕を蔓に拘束されてしまう。



『ジュリィッ!!』

「し、しまった!?」

「オウソウ!!」

「きゅろろっ!!」



咄嗟にレイナがオウソウの左腕を掴み、サンも彼を助けるために足を掴む。トレントと引っ張り合うの形になるが両者共に手放すつもりはなく、オウソウは苦痛の表情を浮かべる。



「ぐああっ……!?」

「頑張ってオウソウ……!!」

「あと少し……!!」

「きゅろろっ!!」



オウソウが引き寄せられないようにレイナとサンが踏ん張る中、クロミンが飛び出してオウソウの頭の上に移動すると、そのまま口を開いてウォータージェットを想像させる勢いで水を吹き出す。



「ぷるっしゃあああっ!!」

『ジュラッ!?』

「うおおっ!?」

「「わあっ!?」」



超高圧に圧縮した水によって蔓が切り裂かれ、オウソウの右腕に絡みつかれていた蔓は切り裂かれて彼は自由になった。しかし、トレントの方は邪魔をしたクロミンを標的と定め、蔓を伸ばす。





※ま、まずい!!また触手が出しってしまった!!このままでは成人指定に……(;´・ω・)

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