第270話 トレント

『ジュラァッ!!』

「ぷるんっ!?」

「させるかっ!!」



クロミンに向かってきた触手をオウソウは鍵爪で切り裂き、どうにかクロミンを守護する。トレントは蔓だけの攻撃ではレイナ達を捉え切れないと判断したのか、蔓で既に拘束している団員を振り払う。



「うわぁあああっ!?」

「な、なんだと!?」

「まずい、避けて!?」



団員を拘束した蔓を振り払い、レナ達に拘束した団員を叩きつけようとしたトレントだが、咄嗟にレナとオウソウは後方に飛んで回避に成功する。だが、蔓で捕まった団員はそのまま引き寄せられ、今度は複数名の団員を使ってトレントは攻撃を行う。



『ジュラァッ!!』

「ひいいっ!?」

「た、助けてくれぇっ!?」

「うわわっ!?」

「くっ……お前ら、さっさと抜け出さんか!?」

「危ない!!」

「きゅろろっ!?」



レイナ達に向けて次々と団員を拘束した蔓が迫り、必死にレナ達は動き回って回避を行う。下手に防御や反撃を繰り出せば団員も傷つけてしまう恐れがあり、かといって避け続けるだけではいずれレイナ達の体力が尽きてしまう。



(解析!!)



ここでレイナは戦闘の最中に解析の能力を使い、トレントを倒す手がかりを探す。なんならばキングボアの時の様に「即死」と書き込んで倒す方法も考えたが、視界に表示された画面を見てレイナは驚く。



――トレント――


種類:トレント種


性別:無し


状態:飢餓


特徴:食虫植物型の魔物。植物であると同時に魔物としての性質を持ち、水場が存在する場所の近くにしか住みつかない。水と大地の栄養分だけでは生命活動を維持できず、水場に近付いてきた生物を捕食する。栄養を取り込めば取り込むほどに成長し、強くなる


死後、トレントの死骸からは大量の毒を発生させる事から危険種指定され、その死骸に触れただけで「緑死病」という病に侵されてしまう


――――――――



視界に表示された画面を見てレイナは説明文の内容を見て唖然としてしまう。トレントを倒してしまえば死骸が毒と化してしまうという一文に戸惑い、これではトレントを倒せば拘束されている団員が危ない。下手をすればレナ達も危険に晒されてしまう。



(まずい、毒になったら俺の能力じゃ全員を助けるのは無理だ!!)



毒の状態に陥った人間をレイナが解析と文字変換の能力を遣えば治療は出来るだろうが、それでも全員分の治療を施すとなると文字数の限界を迎えて治療できない状態に陥る可能性があった。これでは下手にトレントを倒すわけにはいかず、かといってこのままではレイナ達が捕まってしまう。


トレントに捕まらず、倒さずに団員達だけを救出する手立てがないのかとレイナは考えている最中も攻撃は止まず、トレントは拘束した団員をひとまとめにすると、天高く振りかざす。



『ジュラァアアアッ!!』

『ぎゃああああっ!?』

「いかん、あの高さから落とされたら死ぬぞ!?」

「そんなっ!?」



レイナは上空に移動した団員達の姿を見てこのまま地上に叩きつけられた命はなく、何としても彼等を救うために施行を巡らせる。そして考えた結果、デュランダルの力を使ってトレントが団員達を振り下ろす前に彼等に衝撃波を放つ。



「うおおおおっ!!」

「な、なにっ!?」

『ジュラァッ!?』



刃を振動させ、衝撃波を生み出す準備をしたレイナに対してオウソウとトレントは驚愕の表情を浮かべ、その間にもレイナは大剣を振りかざす。結果、衝撃波上空高くに持ち上げられた団員達に衝突してそのまま蔓の拘束を引きちぎって吹き飛ばす。




『ジュラァアアッ!?』

『うわぁああああっ!?』



団員達は空中で弾き飛ばされ、そのまま泉に向けて落下してしまう。水面に落ちたとはいえ、相当な高度だったのでかなりの衝撃を受けただろうが、それでも地面にトレントの怪力で叩き込まれていたら死亡していただろう。


どうにか団員達を泉に落として救い出す事に成功したレイナは額の汗を拭い、そんなレイナに対してオウソウは驚愕の表情を浮かべる。彼はデュランダルの力を発揮するレイナを見るのは初めての事であり、今まではどうにか誤魔化してきたが今回ばかりは流石にだましとおす事は出来なかった。



「お、お前……今、その剣で……」

「オウソウ、話はあとにして!!今はこいつをなんとかする!!」

「あ、ああっ……」

「きゅろろっ……くるっ!!」

『ジュラァアアアアッ!!』



折角捕まえた獲物を奪われたと思ったのかトレントは激怒したらしく、あろうことか地中に埋まっていた「根」を引き抜いてまるで動物の足のように動かす。地上に出現したトレントはレイナ達に向けて前進から蔓を放出して接近してきた。

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