第263話 他の仲間の行方

――はぐれた団員と無事に合流したレイナ達は通路を引き返して砂漠の砂に埋もれた古城の外へ出ると、建物を抜け出した瞬間に熱気に襲われる。熱を遮断する建物の中に居続けたせいで最初の時よりも外の砂漠が暑く感じてしまうが、今はそれよりも他の団員の捜索を最優先しなければならなかった。


幸いというべきか古城の周囲には何故か魔物は寄り付かず、ここを拠点にして残された団員と転移台の捜索を行う事が決定した。団員の中には大きな怪我人はいないが、それでもこれまでの道中で体力を使い果たした人間も存在し、仕方がないので体力が残っている者だけを引き連れて古城の周辺を捜索する事にした。



「じゃあ、俺達は他の皆を探してくるから君たちはここで休んでていいよ。もしも他の団員が戻ってきたらすぐに渡しておいた食糧と水を分けてね」

「はい、分かりました!!」

「部隊長もお気をつけて!!」

「その部隊長というのは慣れないな……別にレイナでいいよ?」

「いえ、駄目ですよ。レイナさんは彼等の上司なんですからそこはしっかりとしましょう。まあ、部隊長が違和感があるのなら普通に隊長と呼ぶぐらいでいいんじゃないですか?」

「隊長か……まあ、そっちの方が聞き取りやすいかな」

「分かりました!!ではこれからは隊長と呼ばせてもらいます!!」



レイナの事は今後は団員達は「隊長」という呼び方に統一し、彼等はレイナが鞄の中に保有していた食料と水を分けてもらい、古城の中で休息を取る。彼等が所持していた荷物は残念ながらここへ転移したとき、アリジゴクや砂鮫に襲われた時に失ってしまったらしく、レイナが食料を与えると団員達は心の底から歓喜する。


砂漠の階層の中で食糧や水を失う事は死につながり、特に水分を摂取しなければ砂漠ではすぐに干からびてしまう。こんな事態を想定してレイナは鞄の中に大量の食糧と水を保管していた事が幸いしたが、この件でレイナは団員達からの信用を得られた気がした。


ちなみに捜索を行う人員はレイナ、リリス、サン、クロミン、オウソウの5名と、比較的に体力が残っていた団員が3名、合計8人で砂漠の移動を行う。移動を行うときは流砂などに気を付け、砂鮫のような魔物の接近にも配慮してレイナ達はまずは古城の周辺を歩き回る。



「まだ生き残りがいるとしたら、この古城を見つければ必ず訪れるはずです。無暗にこの場を離れるよりも古城の周辺を捜索していた方が生き残りと遭える可能性が高いはずです」

「うん、そうだね……でも、皆は大丈夫かな?」

「何とも言えませんね……でも、きっと大丈夫ですよ。ハンゾウもネコミンさんも簡単には死ぬような人じゃありませんから」

「だといいがな……」

「きゅろっ!!絶対に大丈夫、皆見つけて見せる!!」

「ぷるぷるっ!!」

「いててっ!?こ、こら!!髪の毛を引っ張るな!?」



オウソウの言葉に彼に肩車してもらっていたサンとクロミンが抗議するように髪の毛を引っ張った。どうしてサンがオウソウに肩車をしてもらっているかというと、こちらの方が高い位置を見渡せるので彼女はオウソウの肩の上で周囲の観察を行う。


砂漠の探索の際にクロミンが同行してくれたのは非常に心強く、スライムの感知能力ならば事前に敵の接近を察知できた。クロミンは砂の中に隠れて移動する砂鮫さえも捉える事が出来るため、自分たちに近付こうとする存在がいればすぐに警告を行って危険を知らせた。



「ぷるんっ!?ぷるぷるぷるっ……!!」

「レイナ、クロミンが敵を見つけたといってる!!後ろから3体近づいてくる!!」

「またかっ!!皆、戦闘態勢!!」

「は、はい!!」

「レイナさんばかりに頼っては駄目ですよ!!今度は私達も戦いますよ!!」

「わ、分かっている!!」



レイナの言葉に全員が戦闘態勢に入った直後、砂漠から唐突に鮫の背ビレを想像させる形の岩が3つ出現し、砂をかき分けながらレイナ達の元へ接近してきた。それを見たレイナは真っ先にデュランダルを引き抜き、能力の解放の準備を行う。



『シャアアアッ!!』

「来ますよっ!!」

「分かってる……はぁあああっ!!」

「な、何だっ!?」



デュランダルの力を発揮したレイナは刃を振動させると、接近する砂鮫3体に駆けつけ、地面に向けて刃を振りぬく。その直後、強烈な衝撃波が発生して砂の中に隠れていた3体の砂鮫が地上へと強制的に吹き飛ばされた。



『シャオオオオッ!?』

「す、凄い!?」

「なんて馬鹿力だ!!」

「信じられない……!!」



他の人間から見ればレイナが力ずくでデュランダルを地面に振りぬいて3体の砂鮫を吹き飛ばしたようにしか見えず、デュランダルの能力の秘密には気づいていない。しかし、事前にデュランダルの力を把握しているリリスは呆けている団員に指示を出す。



「ほら、何をしているんですか!!攻撃の好機ですよ、さっさと動いてください!!」

「は、はい!!」

「行くぞぉっ!!」

「隊長に続けっ!!」



リリスの言葉に団員達も動き出し、オウソウを筆頭に地上へ出現した砂鮫の元へ向かう。

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