第264話 団員との連携

「シャアアッ……!?」

「うおおおっ!!」

「はああっ!!」



陸上に晒された砂鮫に対して団員達は武器を振りかざし、剣を叩きつけた。しかし、生半可な攻撃は砂鮫の全身を覆う岩石の外殻には通じず、逆に跳ね返されてしまう。



「うわぁっ!?」

「か、硬いっ……!!」

「怯むなっ!!それでも貴様ら武人か!!」



自分の武器が弾かれた事に団員達は怯むが、それを見ていたオウソウは両腕に装着した鍵爪を勢いよく振りかざし、戦技を放つ。



「牙斬!!」

「シャアッ……!?」

「や、やった!?」



オウソウの戦技を受けた砂鮫の1体の外殻に亀裂が発生し、それを見た団員達は歓喜の声を上げる。一方でレイナの方も感心し、速度で相手を翻弄しながら急所を攻撃するチイとは違い、オウソウの場合は力任せではあるが強烈な戦技を生み出せるらしい。


チイと比べればオウソウの戦法は隙が大きい分、威力という点では彼女に勝っていた。並大抵の冒険者でもゴーレムのように固い外殻で覆われた砂鮫に損傷を与える事も難しく、しかもオウソウの場合は持ち前の怪力を発揮して砂鮫の肉体を掴むと、力ずくで持ち上げて振り回す。



「ふんっ!!」

「シャアアッ!?」

「グゲェッ!?」



砂鮫を持ち抱えたオウソウは別の個体に向けて叩き込み、その結果は2体の砂鮫に大きな損傷を与えた。いくら固い外殻に覆われているといえど、同程度の硬さを持つ物体に叩きつけられれば無事では済まず、オウソウの活躍によって2体の砂鮫の肉体に亀裂が走った。



「オウソウに続け!!」

「俺達も戦うんだ!!」

「うおおおっ!!今日はフカヒレだぁっ!!」



その様子を見ていた他の団員達もオウソウに続き、亀裂さえ入ればいくら硬い相手といえども攻撃の手段はあり、攻撃を行う。亀裂に刃を叩きつけ、あるいはひび割れに衝撃を与える事で外殻を取り外し、砂鮫の体内に存在する核を破壊しようとする。


一方で残された最後の砂鮫に対してはサンが駆けつけ、彼女は尾びれを掴んで逃げようとする砂鮫を拘束し、無理やりに引き寄せようとしていた。



「きゅろろろっ!!」

「シャアアッ……!?」

「うわ、サン凄い……俺より力があるかも」

「流石はサンドワームですね……いえ、感心している場合じゃありません。早く止めを刺しましょう!!行きますよ、私のとっておきです!!」



サンが砂鮫を取り押さえている間にレイナ達も近づき、砂鮫に止めを刺すために動く。リリスは懐から小瓶を取り出すと砂鮫に向けて投げつけ、小瓶が触れた瞬間に中身の液体が降り注ぐと、直後に派手な水飛沫と化して砂鮫を濡らす。



「シャアアッ……!?」

「どうですか、水属性の魔石の粉末を組み込んだ冷水です!!粉末状とはいえ、水属性の魔石を含んでいるので強烈ですよ!!」



リリスが取り出したのは水属性の魔石の粉末を取り込んだ水らしく、水属性の魔石の影響で常に「冷水」と化しており、しかも水属性の粉末自体が大量の水分を吸収しているので小瓶に入っていたとは思えないほどの量の水分が蓄積されていた。


砂鮫の弱点は水らしく、岩石のような外殻に水が降り注いだ瞬間に色が変色し、まるで泥のように変化してしまう。それを確認したレイナはデュランダルを構え、変色した箇所から刃を突き刺す。



(ここか!!)



事前にレイナは攻撃を仕掛ける際に「魔力感知」という技能を発動させ、砂鮫の体内に存在する「核」と呼ばれる魔石の位置を把握し、刃を突き刺す。その結果、デュランダルの刃は砂鮫の核を破壊して砂鮫を絶命に追い込む。



『ッ――!?』



核を破壊された砂鮫は最後に一瞬だけ痙攣するが、やがて動かなくなったと思うと肉体を崩壊させて崩れ去ってしまう。その様子を見てレイナはデュランダルにこびり付いた砂を振り払い、安堵した表情を浮かべて背中に戻す。一方でサンの方は嬉しそうにレイナに近付いて抱き着いてきた。



「きゅろろっ♪」

「おっと……よしよし、よくやったねサン。クロミンも偉いぞ」

「ぷるるんっ♪」

「こうしてみるとお母さんみたいですね……他の人たちの方も終わったみたいですし、ひとまずは一件落着ですね」



レイナ達が砂鮫を倒している間、他の団員達も砂鮫と激戦を繰り広げ、砂鮫の討伐を果たしていた。残りの2体のうちの1体はオウソウが仕留めたらしく、彼は砂鮫に与えた傷口から腕を突っ込み、核を引き抜いて破壊した。



「ぐおおおっ!!」

『うおおおおっ!!』

『ッ――!?』



核を抜き取られた時点で砂鮫は肉体を崩壊させて崩れ落ち、残りの1体は団員たちが同時に亀裂の部分に攻撃を仕掛け、そのうちの一人の武器が核に接触したのか破壊に成功していた。


流石に全員が戦闘職の称号を持つだけはあり、実力に関しては間違いなくケモノ王国の兵士の中でも最高峰を誇っていた。

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