第261話 リッチの正体

「倒した、のか……?」

「おい、今の光はなんだ!?」

「レイナさん、無事ですか!?」

「レイナ!!」

「ぷるるんっ!!」



レイナがリッチを倒して膝を付いた直後、武器庫からリリス達が飛び出してきた。それを見てレイナは慌ててエクスカリバーをしまい、鞄の中へと戻す。リリスやサンはともかく、オウソウにエクスカリバーの存在を知られるのはまずく、彼女はどうにか鞄の中にエクスカリバーを隠して誤魔化す。



「だ、大丈夫……リッチは倒したよ」

「おおっ、そうなのか!!しかし、さっきのは光はいったい……」

「いえ、それよりもまずはリッチの死体を調べましょう。アンデッドはしぶといですからね、また蘇られても困りますし……」

「そ、そうだな……」



オウソウがリッチを倒したというレイナに驚き、先ほど部屋の扉から見えた光の正体を尋ねるが、その前にリリスがリッチの死体を調べる事を言い出して誤魔化す。オウソウはリリスの言葉に戸惑いながらも反論はせず、リリス自身も本当にリッチが倒したのかを調べるために通路に残された灰を調べる。


リッチの死体はレイナに切り裂かれた時点で完全に灰と化してしまい、どうやらエクスカリバーの放った光刃によって肉体を浄化されたのが原因で灰となったらしい。既にリッチの肉体自体は死亡してから何百年も経過しており、肉体を維持していた闇属性の魔力が消え去ったことで限界を迎えていた身体は灰と化したと判断した。



「なるほど……どうやら本当に成仏したようですね。リッチは自分の肉体を闇属性の魔力で維持していたようですけど、どうやらその魔力をかき消された事で肉体が維持できずに灰と化して崩れたようです」

「つまり、そいつはもう動かないのか?」

「まあ、分かりやすく言えば正真正銘死んだんですよ。もう蘇る事はないでしょうけど……結局、こいつの正体は分からずじまいでしたね」

「きゅろっ……剣の魔王とか言ってた」

「そうだね……多分だけど、この魔剣を守っていたみたいだけど」



レイナは七大魔剣ムラマサの事を思い出し、戦闘前のリッチの反応から考えてもこの武器庫を管理していたのはリッチらしい。また、リビングアーマーを作り出したのがリッチだとしたら、彼はここで長い間ずっと武器庫に保管されている七大魔剣を守り続けてきたらしい。


どうして大迷宮内に古城が存在し、その中に剣の魔王の配下が七大魔剣を守護していたのかは不明だが、リッチを倒した以上はこれ以上の情報は得られず、残念ながら諦めるしかなかった。



「リッチの件も、七大魔剣の件も気になりますが、とりあえずは探索を続けましょう。さっき見つけた足跡の件も気になりますし、他の団員がこの城の中にいる可能性は残っています」

「……既にリッチとリビングアーマーにやられている可能性もあるがな」

「それでも探すべきでしょう。それにこんなに目立つ建物なんですから私たちの後に気づいた団員もやってくるかもしれません。とりあえずは探索を再開しましょう」

「そうだね……クロミン、大丈夫?」

「ぷるぷるっ♪」



リリスの提案にレイナは賛同すると、リッチに投げつけられたクロミンの様子を伺う。派手に投げ飛ばされたようだがクロミン自体は無傷で特に怪我もおっておらず、黒霧で視界を封じられたときに真っ先にリッチに立ち向かったクロミンの勇気を称える。



「クロミンのお陰で助かったよ。けど、よくリッチを見つけられたね」

「ぷるりんっ」

「えっと、何て言っているのか分かりませんね……サン、翻訳できますか?」

「きゅろっ!!クロミンはあんなのどうってことない、と言ってる!!」

「な、なんというスライムだ……侮れんな」



黒霧で全員の視界が封じられ、力が奪われていく感覚に襲われる中、クロミンだけは黒霧を物ともせずにリッチに立ち向かった。そのクロミンの行動に対してリリスは考察を行う。



「ふむ……そういえば魔剣を発見したのもクロミンでしたね。私達は魔剣を見て嫌な予感を覚えましたが、クロミンは平気そうだった。となると考えられるのはクロミンは魔法に対する強い耐性、あるいは魔力そのものを吸収する力を身に付けているのかもしれません」

「ぷるんっ?」

「そもそもスライム自体が謎に満ちた生物ですからね。特にクロミンは特殊な個体ですし……もしかしたら私たちが思っている以上に凄い生き物なのかもしれません」

「ぷるるんっ(えっへん!!)」

「……と、とても信じられんな」



リリスの考察に対してクロミンは自慢するように鼻息を鳴らすと、オウソウは胡散臭そうな表情を浮かべる。だが、クロミンのお陰で窮地を脱したという事実は否定できず、クロミンの活躍によってレイナ達はもしかしたら九死に一生を得たのかもしれなかった。

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