第254話 リビングアーマー
「だああっ!!」
『ッ……!?』
レイナが放った渾身の一撃に対し、甲冑は大盾を構えて防ぐ。通路内に激しい金属音が鳴り響き、デュランダルの一撃によって甲冑の何者かは壁際まで吹き飛ばされた。
『ッ……!!』
「まだまだぁっ!!」
「待ってください!!」
続けてレイナは壁際に追い込んだ甲冑に対して大剣を振りぬこうとしたが、それをリリスが引き留める。どうして止めるのかとレイナは驚いて彼女に振り替えると、リリスは手のひらを構えて自分が作り出した光球を甲冑に近づけさせる。
「これでどうですか!?」
『ッ……!?』
「え、苦しんでいる……?」
「何だ、あの黒い靄は……?」
光球を近づけた瞬間に甲冑は唐突に身体を震わせ、その場に膝をつく。その様子を見たリリスは確信を抱いたように目元を細め、甲冑の正体を見抜く。
「分かりました!!こいつの正体は
「リビングアーマーだと!?あの鎧兜に憑依するという怨霊の事か!?」
「リビングアーマー……?」
レイナはリビングアーマーと呼ばれた甲冑に視線を向けると、光球が放つ光に苦しみ、全身から黒い霧のような物を鎧の隙間から噴き出す。どうやら聖属性の魔法の光に弱いらしく、リビングアーマーはどうにか光を消そうと光球に剣を振り払う。
『ッ……!!』
「おっと、させませんよ!!レイナさん、こいつは聖属性の魔法が弱点なんです!!どうにかできますか?」
「どうにかと言われても……」
生憎と聖属性の魔法に関してはレイナは覚えておらず、そもそもレイナは魔法も戦技も扱えない。だが、ここで聖剣ならばリビングアーマーに対抗できるのかと気づき、そうなると聖属性に最も特化したエクスカリバーが有力だと思われた。
しかし、エクスカリバーは鞄の中に隠しており、しかもオウソウがこの場にいる中で扱うのは難しい。エクスカリバーを扱えばレイナの正体が気づかれる恐れもあるため、どうにか彼のいない場所でエクスカリバーを使う方法を考える。
(エクスカリバーの光刃ならリビングアーマーにも効果があるかもしれないけど……待てよ、そういえばデュランダルも聖剣だったな)
ここでレイナは自分が所持しているデュランダルも聖剣である事を思い出し、改めて解析の能力で確認を行う。
――デュランダル――
能力
・重量変化
・衝撃波
・防御力最大上昇
詳細:破壊の聖剣の異名を誇る世界最大級の重量を誇る聖剣。その頑丈さはアスカロンにも匹敵し、さらに身に着けるだけで防御力を限界まで上昇させる。また、その刀身に魔力を送り込めば衝撃波を生み出す事も可能
――――――――――
デュランダルの能力を再確認したレイナは「重量変化」と「衝撃波」という項目に視線を向け、再びリビングアーマーに向かう。
「だああっ!!」
『ッ……!!』
リビングアーマーは自分に接近してきたレイナに対して今度は戦斧を振り払い、鍔迫り合いの形になる。だが、ここでレイナはデュランダルの能力を開放し、一気にデュランダルの重量を増加させて追い込む。
聖剣デュランダルは重量を自由自在に変化する能力を誇り、所有者のレイナの意思に従って重量を増加させたり軽減も可能。この特性を生かしてレイナはデュランダルを攻撃を行う際に重量を増加させ、自分が剣を振るときは軽減させて自由自在に操る力を身に着けた。
「だああっ!!」
『ッ……!?』
鍔迫り合いの状態でレイナのデュランダルが紅色の光を放つと、徐々に重量が増していき、リビングアーマーの戦斧を押し返す。最終的にはデュランダルの重さに耐えきれずに甲冑の所持する戦斧の刃の方に亀裂が入り、砕け散ってしまう。
自分の武器が破壊された事でリビングアーマーは咄嗟に大盾で身を防ごうとしたが、レイナは大剣を一回転させて勢いをつけた状態で振りぬく。
「吹き飛べっ!!」
『ッ……!?』
「うおっ!?」
今度はデュランダルの「衝撃波」の能力を解放させ、デュランダルの刃が大盾に衝突した瞬間に衝撃波が誕生し、リビングアーマーの巨体が吹き飛ぶ。あまりの威力にリビングアーマーは天井に叩きつけられ、そのまま床へと倒れこむ。
もしも中に人間が入っていたのならば強烈な衝撃を受けて肉体が破裂していてもおかしくはないが、中身が存在しないリビングアーマーだからこそ致命傷には至らず、せいぜい防御に使用した大盾が凹んで使い物にならなくなった程度の損傷しか与えられない。
『ッ……!?』
「ま、まだ動けるのかこいつは!?」
「リビングアーマーに物理攻撃は無意味です!!そいつは聖属性の魔法で浄化させなければ倒せません!!」
「くっ……やっぱり無理か」
聖剣であるデュランダルの攻撃ならば通じるのではないかと考えたレイナだが、吹き飛ばしても起き上がってきたデュランダルを見て攻撃が通じていない事を悟り、仕方なく別の方法を考える。
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