第253話 謎の甲冑
「きゅろっ!?足跡がいっぱい!!」
「という事は……この城の中に私たち以外の人間がいるということですね」
「……言われてみれば臭いが残っているな。つい、先ほどまでは誰かがいたのは間違いない」
オウソウは鼻を鳴らすと通路に誰かがいた形跡を感じ取り、この古城の中にレイナたち以外の存在がいる事は確定した。状況的に考えても既に長年の間、放置され続けている大迷宮に挑む者がいるとは考えにくいため、恐らくは騎士団の団員だと思われた。
足跡の量を考えるに相当な数の人間(彼等は獣人だが)が通ったことは間違いなく、足跡を追えば他の団員と合流できると考えたレイナは後を追いかけようとした。だが、ここでサンが疑問を抱いたように首をかしげる。
「きゅろろっ……レイナ、この足跡だけ、凄く大きい」
「えっ……うわ、なんだこれ!?本当に大きい……」
「どれどれ……うわ、何ですかこれ?いったい何センチあるんですか……」
「俺のよりも足がでかいだと……」
足跡の中には何故か異様な大きさの足跡が存在し、図体が大きいオウソウと比べても一目瞭然だった。恐らくは靴のサイズは50センチを超えていた。明らかに人間離れした大きさの足跡にレイナ達は顔を見合わせ、再び足跡を覗き込む
「これは……なんでしょうかね、巨人族の足跡でしょうか?」
「巨人族?」
「名前の通りに人間や獣人よりも2~3倍の体躯を持つ種族ですよ。レイナさんも見た事はあるんじゃないですか?」
「ああ、そういえば……」
「だが、巨人族の場合はもっと足跡が大きいぞ」
リリスの予想にオウソウが異論を唱え、人間よりは大きいが巨人族と比べると小さい足跡の主に疑問を抱く。だが、考えている途中で突如としてサンが細長い耳を震わせる。
「きゅろっ!?」
「ぷるんっ!?」
「え、どうしたの二人とも……?」
「おい、待て……何か聞こえないか?」
「言われてみれば……」
サンとクロミンが警戒するように前方の通路に視線を向け、オウソウの方も獣耳を動かし、リリスも異変に気付いたように前方の通路に顔を向けた。皆の反応にレイナは戸惑うが、やがてレイナの耳にも何かが聞こえてきた。
それは金属が擦り合うような音でもあり、足音も響いてきた。通路の奥は暗闇に覆われているため、誰かが近づいているのか間違いないのだが、姿が見えない。だが、徐々に足音が大きくなり、床に振動が伝わってくる。
「な、なんだ……!?」
「嫌な予感がしますね……」
「きゅるるるっ……!!」
「ぷるぷるっ……」
サンが警戒するように牙を剥き出しにして四つん這いになると、クロミンの方は怯えるようにレイナの背中に張り付き、一方でオウソウも鍵爪を構える。リリスの方も用心のために戦闘用の薬剤を取り出し、レイナも背中に抱えているデュランダルに手を伸ばす。
――やがて振動と足音がどんどんと強まり、リリスの作り出した光球が照らす範囲内に人型の影が現れた。それは身長が2メートルを軽く超える巨大な「甲冑」であり、その手には戦斧と大盾を構えていた。
現れた存在を見てレイナは動揺し、少なくともこのような格好をした人間は騎士団には存在しない。ならば何者なのか疑問が尽きないが、それを冷静に考える暇もなく、甲冑の人物は近づいてきた。
「な、なんだ貴様はっ!?」
「この感じ……!?まずい、こいつは人間じゃないです!!」
「人間じゃない!?」
「きゅろぉおおおっ!!」
「ぷるぷるぷるっ!!」
サンが威嚇するように鳴き声を上げるが、甲冑の人物は意にも介さずに歩み寄り、ゆっくりと戦斧を振りかざす。それを見たレイナは危険を感じ取ると、サンに離れるように指示を出す。
「サン!!そいつから離れろっ!!」
「きゅろっ!?」
『ッ……!!』
甲冑の人物は目元の隙間から怪しい光を放ちながらもサンを標的と捉え、彼女に向けて戦斧を振り下ろす。咄嗟に主人の命令に従ったサンは戦斧が振り下ろされる前に回避に成功するが、戦斧の刃が床に衝突した瞬間に通路に振動が走る。
もしもサンの反応が遅れていたら彼女の身体は真っ二つにされていた事は間違いなく、サンは空中で回転しながら壁を足場にして体勢を整えると、三角飛びの要領で床へ着地した。その様子を見た甲冑の人物はサンに視線を向けると、彼女に向けて再び近づく。
『ッ……!!』
「な、何だこいつは!?」
「サン、逃げろっ!!」
「きゅろろろっ!?」
甲冑の人物に狙われたサンはレイナの言うとおりに逃走を開始するが、甲冑の人物は逃すつもりはないのか逃げ出そうとした彼女を追いかける。巨体でありながらその動作は身軽であり、すばしっこいサンに追いついて大盾を振り払う。
『ッ……!!』
「きゅらぁっ!?」
「このっ……いい加減にしろ!!」
振り下ろされた大盾をサンはどうにかスライディングを行って回避すると、それを見ていたレイナはデュランダルを振りかざして甲冑の人物に向かう。
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