第251話 仲間との合流

「でもリリス……どうして皆、別々の場所に転移したのかな?今までは魔法陣に乗っていれば全員で同じ場所に転移していたのに……」

「そこが私も気になっていたんですよね。資料によると確かに魔法陣で転移した人間は同じ場所に辿り着くと記してあったんですが……何かの不具合が起きたのかもしれません」

「……転移するとき、お前が失敗したんじゃないのか?」

「失礼な!!私は手順通りにちゃんとしましたよ!!」



リリスも今回の転移が全員が別々で転移した事に関しては理由が分からないらしく、第一階層や第二階層の転移の場合は全員が同じ場所で転移していたにも関わらず、第三階層だけ全員がランダムで転移したことが気がかりだった。


最も今は転移が失敗した事よりも先に仲間達との合流が優先事項であり、レイナ達は一刻も早く他の人間たちと合流しなければならない。第三階層は最も過酷な環境下なので時間を無駄には出来ず、全員と合流して祭壇の居場所を探さなければならない。



「他の皆もこの近くに転移しているのかな……」

「いえ、私も結構走り回りましたけどレイナさんたち以外の人たちは見かけていません。ここにはいないのか、もしくは既に魔物の餌食になったのか……」

「おい……あれを見ろ」

「きゅろっ?」

「ぷるんっ?」



リリスとの会話の途中でオウソウが口をはさみ、彼はある方向を指差す。彼が指し示した方向にレイナ達は顔を向けると、そこには異様な光景が広がっていた。



「あれは……建物?」

「……見るからに古城ですね」

「どうして大迷宮の中にあんな物が存在するのだ!?」

「きゅろろっ……でっかいお城」

「ぷるるんっ……」



今までは色々とあって気付かなかったが、レイナ達が存在する場所か少し離れた位置に巨大な建造物が存在した。外観は正に「古城」と呼ぶにふさわしく、砂漠の中に存在する古ぼけた城にレイナ達は戸惑う。


最初は蜃気楼で見える幻かと思われたが、近づいてみると確かに建物が本物である事が判明し、大分砂に埋もれてはいるがもともとは城だったと思われる建造物が存在した。



「なんで大迷宮の中に建物があるんだ……?」

「分かりません……ですが、調査をする必要がありますね」

「は、入るのか?この中に?」

「入るしかないでしょう。それにこれだけ目立った建物なら他の団員も気づいてここに集まってくる可能性も高いです。それに外よりも建物の中の方が身体も休める事が出来ますからね」

「でっかい建物、冒険したい!!」

「ぷるるんっ!!」



古城の中に入るというリリスの提案にオウソウは動揺するが、彼女の言うとおりに当てもなく外を彷徨うよりも建物の中で他の団員が訪れるのも悪くなかった。それに先に入っている団員も存在するかもしれず、レイナ達は中に入り込む。


出入口に関しては城門の類は見当たらず、恐らくは大量の砂に埋もれて古城の上の部分だけが露出した状態だと思われた。扉からではなく、窓から城の中に入り込むと、レイナ達は内部に入った瞬間に先ほどまで襲い掛かっていた熱気が遮断されたように急に涼しくなった。



「うわ、何だこれ……この中、全然暑くないよ?」

「本当ですね、あまりの暑さに城の中が蒸し焼きのような状態に陥っていないのか心配していましたが……」

「いったい何なんだこの場所は……」

「くしゅんっ(←急に冷えてくしゃみした)」

「ぷるぷるっ(←サンの鼻水をハンカチで拭うクロミン)」



窓の中から古城に入ったレイナ達は建物の内部に熱気が漂っていないことに戸惑い、その一方で外の暑さから解放されたことでレイナ達は身体が一気に楽になった。リリスは天井や壁に触れると、熱気が遮断された原因がこの建物の構造が関わっていると判断する。



「この壁……多分ですけど、ただの石材ではありませんね。恐らくは魔法耐性を備えています」

「魔法耐性を備えている?」

「なるほど、よくよく考えれば外が熱い原因は天井の光石が原因だったんです。あの光石は本物の太陽に光だけではなく熱を地上に与えていたんです。ですけど、その光も熱も元々は魔石の魔力、つまりは魔法の力で再現しただけです」

「つまり、どういう意味だ?」

「この建物全体が魔法に対する耐性が高い素材で構成されているんです。魔力を遮断するお陰で素材で出来ているからこそ、光石の魔力で生み出された熱や光も通さないんです」

「なるほど……だからここは涼しいのか」

「ま、全く理解できん……」

「ぷるるんっ(←オウソウの肩に手を置く)」

「やめろ、スライムの分際で同情するな!?」



リリスの説明にレイナは納得したが、オウソウは彼女の言葉を理解できなかった。しかし、この建物が外からの光や熱を遮断したお陰で建物の内部は快適な空間が形成される一方、全体が薄暗く、明かりもなしでは先に進めない状態だった。

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