第250話 砂鮫
「レイナさん、こいつは砂鮫です!!鮫の姿をしたゴーレムみたいな存在だと思ってください!!」
「砂鮫!?」
「シャアアアアッ!!」
砂鮫は砂中をまるで水中で泳ぐかのように移動する事が出来るらしく、凄まじい速度でリリスとオウソウの元まで迫っていた。二人も必死に逃げるだが足元が砂場なので平地と比べると速度が出せず、このままでは追いつかれるのは時間の問題だった。
二人を助けるためにレイナは鞄からデュランダルを取り出すと、砂鮫に向けて駆け出す。その後にサンも続き、リリスとオウソウに声をかける。
「二人とも、伏せて!!」
「うおおっ!?」
「スライディング!!」
オウソウは転ぶように倒れこみ、リリスの場合は格好良さげに足を延ばして身体を伏せると、レイナは大剣を振りかざして二人の背後にまで迫っていた砂鮫の牙に放つ。
「うおりゃあっ!!」
「シャギャアッ……!?」
噛みつこうと開いていた大口にレイナの大剣が放たれた砂鮫は目を見開き、そのまま巨体が逆に吹き飛ばされてしまう。レイナの外見からは想像できないほどの膂力にオウソウは目を見開き、リリスは素直に感心した。
「ば、馬鹿なっ……あの砂鮫を吹き飛ばしただと」
「おおっ……流石はレイナさんですね」
「くっ……足場が柔らかいから踏ん張れなかった」
砂鮫を吹き飛ばす事に成功したレイナだが足元がふらつき、やはり慣れない砂漠の地面では足場が安定せずに腰の入った一撃が繰り出せず、せいぜい砂鮫を弾き返す事しか出来なかった。
だが、剛力の効果で最大限に筋力が強化されたレイナの一撃はすさまじく、攻撃を受けた砂鮫は文字通りに陸に打ち上げられた魚のようにバタバタと跳ねる。その様子を見て好機だと判断したリリスはクロミンに合図を出す。
「今です!!ゴーレムの弱点は水です!!クロミン、水鉄砲!!」
「ぷるっしゃああっ!!」
「うわぁっ!?」
レイナの頭の上に載っていたクロミンは口を開くと、凄まじい勢いで体内から水を吹き出し、砂鮫へと振りかける。明らかに体積とは見合わない量の水分をクロミンが放出するが、結果は水を浴びた瞬間に砂鮫の身体が変色し、徐々に外殻が溶け始めた。
『シャアアアッ……!?』
「と、溶けていく?」
「ふふふ……ゴーレムと同様に砂鮫の肉体を構成しているのは土砂です。ならば水を浴びれば身体が泥のように溶けてしまうんですよ」
「そ、そんな弱点があったのか……」
泥のように溶けていく砂鮫を見てレイナ達は驚いた表情を浮かべるが、やがて泥の中から赤色に光り輝く魔石が出現し、すぐにリリスは駆けつけて魔石の回収を行う。
「やりました!!砂鮫の核をゲットしましたよ!!これを加工すれば高純度の火属性の魔石になりそうですね」
「核……確か、ゴーレムの体内に存在する肉体を構成する魔石だっけ?」
「だいたいそういう認識で間違っていません。この核がゴーレムの正体、つまりは本体といった方が正しいですね」
「ふんっ……驚かせおって」
砂鮫が溶けたことで安心したのかオウソウはいつもの態度に戻るが、その声に覇気はなく、余程追い詰められていたのだろう。そんな彼を見てレイナは今更ながらに他の者も別々に転移されたのかを問う。
「二人とも、やっぱり他の人と別の場所に転移したの?」
「ええ、転移した直後は私一人だったんでびっくりしましたよ。でも、すぐにそこにいるオウソウの馬鹿が砂鮫に追いかけられているところを発見したんですけど、私も巻き込まれて逃げていたわけです」
「誰が馬鹿だ!!切り捨てるぞ貴様!!」
「上官に対してそんな態度をとっていいんですか?だいたい、まずはレイナさんにお礼を言うのが先じゃないんですか?」
「ぬぐぐっ……!!」
リリスの言葉にオウソウは悔し気な表情を浮かべ、レイナに顔を向けると不本意では命を助けられたという事実は理解しており、頭を下げた。
「……すまない、お前のお陰で助かった。礼を言う」
「え、あ、いや……別に気にしなくていいよ?仲間なんだから助け合うのは当たり前なんだし……」
「……この恩は必ず報いる」
レイナの言葉にオウソウはそっぽを返し、それ以降は黙り込む。その意外な反応にレイナは驚くが、リリスが耳元で囁く。
「獣人族は恩義を重んじる種族なんです。例え、嫌っている相手であろうと命を救われたのであればそれに報いらなけばならないという習慣があるんですよ。この馬鹿も今回の件でレイナさんに借りが出来たと考えているんですよ」
「そうなの?」
「おい、聞こえてるぞ!!獣人族が耳がいいことを忘れるな!!」
リリスの内緒話にオウソウは憤るが、彼がレイナに対して恩義を感じたのは事実らしく、その後はレイナと顔は合わせないがいつものように悪口を呟くことはなかった。
※なんかオウソウがツンデレみたいなキャラになってしまった……(´・ω・)
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