第249話 サン・クロミン救助隊
砂丘を上りきる前にレイナは足元を奪われ、そのまま転げ落ちそうになるがどうにか踏みとどまる。ここでレイナは周囲の様子を確認すると、自分が目にしていたのは「砂丘」ではなく、自分が「アリジゴク」の様なものに飲み込まれていく事に気づいた。
(やばっ!?)
自身が巨大なアリジゴクの中心に飲み込まれようとしている事に気づいたレイナは逃げ出そうとするが、必死にもがけばもがくほどに身体が飲み込まれていく。努力もむなしく徐々に中心部の方へ身体は移動する。
(まずい……たぶん、あの中に吸い込まれたら終わりだ!!)
本能でアリジゴクの中心に飲み込まれたら終わりだと悟ったレイナはどうにか抜け出そうとするが、既に腰の部分まで砂の中に埋もれていた。文字変換の能力で鞄の中に入っている道具を利用して何か作り出そうかと考えたが、この状況を脱出するための道具など早々に思いつかない。
(くっ……このままだと、まずい……誰か、助け……!?)
ついには胸元の部分まで身体が飲み込まれた時、レイナの耳に聞きなれた声が入り、砂煙を舞い上げながら自分の元に近づく人影に気づく。
「きゅろろっ!!」
「ぷるる~んっ!!」
「サン、クロミン……!?」
足元が不安定の砂上をまるで平地を駆け抜けるかの如く素早い動きでサンが姿を現すと、彼女は頭に抱えたクロミンをレイナに向けて放り投げる。クロミンは空中にて形を変形させ、浮き輪のように膨れ上がるとレイナの身体を包み込む。
「ぷるんっ!!」
「うわっ!?た、助かった……?」
浮き輪と化したクロミンにレイナはしがみつくと、なぜかそれ以上に身体が飲み込まれることはなく、まるで水面を浮かぶ浮き輪のようにクロミンの身体は砂に飲み込まれる事はなかった。クロミンにしがみついたお陰でレイナの方も飲み込まれる事はなくなり、さらにクロミンはアリジゴクの上に存在するサンに触手を伸ばす。
「レイナ、助ける!!きゅ~ろっ!!きゅ~ろっ!!」
「うわっ……あ、ありがとう二人とも……」
「ぷるぷるっ♪」
クロミンが浮き輪と化してレイナを救い、ロープ代わりに伸ばした触手をサンが引き上げる事でどうにかレイナは無事にアリジゴクから抜け出す事に成功する。やっと砂から身体を引きずり出す事に成功したレイナは安堵すると、助けてくれた二人を抱きしめた。
「助かったよ二人とも……それにしても、よく俺の居場所が分かったね」
「ぷるぷるっ」
「クロミンが、レイナの魔力を感じ取って見つけてくれた」
「そうか、スライムは感知能力に長けているとか言ってたな」
サンとクロミンは偶然にもレイナの近くに転移していたらしく、クロミンがレイナの魔力を感知して救助に成功した事になる。二人がいなければレイナは砂の中に埋もれて死んでいたかもしれず、改めて感謝を込めて頭を撫でる。
「助けてくれてありがとうサン、クロミン……」
「ぷるるんっ♪」
「レイナ、無事でよかった!!」
「でも……他の皆はどこにいるんだろう?」
レイナはサンと手を繋ぎ、クロミンを頭に乗せて周囲の様子を伺う。アリジゴクから抜け出した事で周囲の風景も一変し、レイナの視界には無数の砂丘と延々と広がる砂漠が視界に映し出された。
第一階層や第二階層の時も思ったが、本当にここは大迷宮の内部なのかと疑う広大な空間が広がり、どう見ても砂漠にしか見えない。だが、ここが人工的に作り出された空間である事は天井に設置されている光石を確認すれば明らかなため、レイナは改めて大迷宮の建造技術に驚かされる。
(どう見ても本物の砂漠にしか見えない……いや、それよりもまずは他の皆を探さないと……)
レイナは周辺を見渡し、他の白狼騎士団の団員達を探す。一緒に転移したサンとクロミンがそれほど離れていない場所に存在したのならば他の皆も近くに転移しているのではないかと思ったレイナは周囲を見渡すと、少し離れた場所で派手な砂煙が舞い上がった。
「なんだっ!?」
「ひいいいっ!?だ、誰か助けてぇっ!?」
「ま、待て!!先に逃げるな、俺を置いていくなぁっ!?」
「きゅろっ?」
砂煙の方向に視線を向けると、そこには白衣姿のリリスと汗だくのオウソウが並んで走っており、二人の背後から何故かサメの背ビレのような物が迫っていた。砂上を移動するサメの背ビレを見てレイナは戸惑うが、やがて背ビレだけではなく、砂の中から全身が出現した。
「シャアアアッ!!」
「何だあれ!?」
「きゅろっ!?」
「ぷるんっ?」
「あ、レイナさん!?ちょ、助けてください!!」
「ま、待て!!だから俺を置いていくな……うおおっ!?」
砂の中から現れたのは全長が2メートル近くのサメの様な生物であり、外見は本物のサメというよりもサメの形をした岩のような生き物にレイナは見えた。ここでレイナの脳裏に「ロックゴーレム」が思い浮かび、もしかしたらロックゴーレムのようにのサメの形をした岩石で構成された魔物ではないかと考える。
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