第225話 攻略の要
「……といった所だな。やはり、攻略の鍵となるのはレイナ君、君の能力だ」
「う~ん……やっぱり、そうなりますよね」
「正直に言えば君の能力の事を知らなかったら僕も大迷宮の攻略を果たせると大見得を切る事が出来なかったからね。頼りにしてるし、それにこれが終われば君の立場も更に上がるはずだ」
「まあ、第五階層の踏破は無理だとしても道中で拾えるだけ素材を回収しておきましょう。大迷宮にしか存在しない素材もたくさんあるでしょうし、そうなるとレイナさんの作ってくれたこの鞄が役立ちますね」
「まさか本当に全員分の鞄を用意するとは思わなかったがな……」
「ぷるぷるっ♪」
「きゅろろっ♪」
今回の大迷宮の攻略の前準備としてレイナは文字変換の能力を使用し、収納量を「無限」へと変化させた鞄を複数用意した。これらはリル達のみに手渡し、一般の騎士に配布する予定はない。代物が代物なので悪用される可能性もあるため、存在は隠さなければならなかった。
鞄の他にも万が一の場合を考えてリリスが調合した回復薬、他にも食糧や水を用意しておき、ついでに聖剣の準備も整える。また、大迷宮内では「地図製作」の技能を持つレイナとチイが探索の要となる可能性が高いため、この2人を中心に部隊を組む。
「攻略の際はハンゾウが化けたレア君と共に行動し、人気のない場所に移動したらハンゾウは元に戻ってくれ。あくまでも今回の攻略の最大の功績をあげるのは勇者レアだから気を付けるように」
「分かりました。その前に確認しておきたいんですけど、大迷宮の上層に移動するにはどうすればいいんでしたっけ?」
「上層に移動するには各階層に存在する「転移台」と呼ばれる転移魔法陣が刻まれた台座を見つけ出す事だ。この台座は各階層によって存在する位置は異なるが、台座が存在する場所には必ず遺跡のような建物が存在する。それを発見すれば確実に見つかるはずだ」
「捜索に関しては拙者も得意でござる。それにレイナ殿から受け取ったフラガラッハも遂に試せるのでワクワクするでござるよ」
「私は非戦闘員なのであんまり頼りにしないでください。一応は戦闘用の薬剤もありますけど……」
「戦闘用の薬剤ってなに!?」
レイナと同行するハンゾウはフラガラッハを握り締め、リリスの場合は怪しい色合いの液体が入った硝子瓶を取り出す。
一応は二人とも騎士である以上は戦える力を持っているが、注意するべき点は今回の大迷宮はレイナが前回訪れた大迷宮よりも手強い魔物と遭遇する可能性が高い事である。
「巨塔の大迷宮は未だに誰も攻略を果たした事がない危険な場所だ。全員理解していると思うが、進むときは最大限の注意を払ってくれ」
「分かりました。でも、本当にリルさん達は別行動を取るんですか?」
「ああ、団長という立場上君達だけと行動するわけにはいかない。私は他の部隊の指揮を行い、チイにも手伝ってもらう。基本的には第五階層の捜索は勇者隊の君達に任せる事になる。私達は素材集めの方に集中しよう」
「だが、無理だと思ったらすぐに探索を打ち切って戻ってくるんだぞ。負傷や疲労で元に戻れなくなるような事態に陥っても私達は救出に向かえない可能性もある。いいか、絶対に無理はするな」
「う、うん……分かってるよ」
「大丈夫、クロミンとサンもいるからいざという時は二人を元に戻して戦ってもらう」
「ぷるぷるっ!!」
「きゅろっ!!レイナ、守るっ!!」
元々は牙竜の亜種である「黒竜」と「サンドワーム」であるクロミンとサンも同行するため、窮地に陥った場合は二人を文字変換の能力で変身させて戦ってもらう方法もあった。レイナは二人の頭を撫でながら出来ればそのような事態には陥ってほしくはないが、ここである事に気付く。
「でも、クロミンはともかく、レベル1のサンを戦わせるのはまずいんじゃ……」
「きゅろっ?サン、もうレベル1じゃない。レベル上がってる」
「え、そうなの?」
「ここまでの道中で魔物を相手に戦ってきましたからね。レベルの方もそれなりに上がってますよ。しかもダークエルフだから人間よりも成長率が高いようですね」
サンはこの数日の間に魔物との戦闘を繰り広げ、何時の間にかレベルを上げていたという。流石に急激にレベルアップをしたという訳ではないが、少なくとも足手まといにはならない程度に成長していた。
「それに万が一の場合は治癒魔導士である私とネコミンさんも同行しているんだから、大抵の怪我は治してあげますよ。まあ、レナさんの場合は自力で怪我を治せるみたいですけど……」
「いや、正直に言って助かるよ。怪我の治療の度に文字変換の能力を使っていたらすぐに文字数制限で使えなくなるからね」
「怪我したときは任せて、すぐに治す」
何気に勇者隊の面子にはレナ、ネコミン、リリスの3名は怪我を治療する方法を持っている。そう考えると他の部隊よりも回復手段はあるといえる。話し合いは終り、一先ずは解散すると、明日から本格的に大迷宮への移動を急ぐために全員が就寝の準備を始めた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます