第218話 女騎士レイナとして
「このハンゾウの能力でレアさんが行動するときはレイナ、レイナとして行動するときはレアさんの恰好をしてもらえば他の人に怪しまれる事はありません。顔立ちは似てるけど別人だと思わせる事が出来るはずです」
「なるほど……ハンちゃんは凄いんだな。それにしても変装なんて流石は忍者」
「そう褒められると照れるでござる」
「ハンゾウは僕達の中でも特に潜入活動などで功績を立てている。だが、基本的には彼女の仕事はリリスの護衛役として任せていたから任務に同行させる機会はなかったが……」
「え?護衛役?」
ハンゾウの能力を考えればリル達よりも潜入活動の際に役立ちそうではあるが、彼女の普段の任務はリリスの護衛らしく、これは彼女にしか出来ない仕事だという。
「どうしてハンちゃんがリリスさんの護衛を?そもそもリリスさんはどんな仕事をしてるんですか?」
「リリスでいいですよ。チイやネコミンみたいに呼び捨てでいいですし、敬語も必要ありません。私の仕事ですか?私の仕事はちょっと特殊でしてね……実を言うと私、称号を二つ持ってるです」
「え!?称号を二つも!?」
「リリスは「二重職(ダブルホルダー)」と呼ばれる人間なんだ。100万人に1人の割合で存在する2つの称号を持つ人間なんだ」
「ちなみに私の称号は「治癒魔導士」と「薬剤師」です」
リリスはネコミンと同様に「治癒魔導士」の称号を持つ一方、彼女は別の称号を所有していた。その名前は「薬剤師」と呼ばれ、名前の通りに主に薬剤を作り出す事に優れた職業らしい。
「へえっ……称号を二つも持ってるなんて凄いね。でも、実際はどんな感じなの?」
「う~ん、言われる程に凄いというわけでもないですよ。確かに普通の人間より称号二つ分の能力を持っていますけど、私の場合はネコミンさんと違って回復魔法は不得手ですから」
「え?そうなの?」
「回復魔法が扱えないというわけじゃないんですけど、ネコミンさんと比べると効果は薄いし、魔力の消耗量も大きいから日に数回ぐらいしか使えません。残念ながら私に魔法を扱う才能はなかったんですね。だけど、代わりに薬剤師としては私の右に出る者はいませんよ」
「薬剤師というのはどういう称号なんですか?」
「簡単に言えば回復薬などの特別な薬品を作り出す事が出来ます。普通の人間でも調合の手順をしっかりとしていれば回復薬を作り出す事が出来ますが、薬剤師の作り出す回復薬の方が効果が高いんです。同じ材料を用意して同じ薬を作り出したとしても、薬剤師の作り出した薬の方が効果が高いですよ」
「へえっ……それは凄そう」
理論は不明ではあるが薬剤師の作り出す薬品は一般人が作り出す代物よりも効果が非常に高く、例えばレアが回復薬を作り出したとしてもリリスが作り出した回復薬には遠く及ばないという。
また、薬剤師は調合に必要な技術を技能で習得しているので一般人ならば時間が掛かりすぎる調合も、時間を短縮してさらにより効果の高い薬品を作り出せるという。
「薬剤師はこの国では希少な存在ですからね、私も回復薬の製作のために毎日馬車馬のように働かされています。全く、城勤めがこんなブラックだなんて知ってたら騎士団になんか入ってませんでしたよ」
「おいおい、悲しい事を言わないでくれよリリス。僕達を見捨てないでくれ」
「こういう上司からの過度なセクハラも嫌だから辞めたいと言ってんですよ」
馴れ馴れしく肩を抱こうとしてきたリルにリリスは逃れるように離れると、どうやら彼女は他の物と違ってリルに忠誠を誓っているわけではなく、仕事と割り切って騎士団に入っているらしい。
「でも、リリスの仕事の事は分かったけど護衛役が必要なのはなんで?」
「簡単な話ですよ。私がリル王女の派閥に入っているからです、そのせいでガオ王子やギャン宰相の派閥の人達から狙われるんですよ」
「それを守護するのが拙者の役目でござる。リリス殿は白狼騎士団の中でも重要な人物でござる」
「重要人物……?」
「前にも話したが、このケモノ王国は毎年大量の薬草を同盟国であるヒトノ帝国に渡している事は知っているな?それが関係しているんだ」
「今のケモノ王国は深刻な薬草不足……そのせいで回復薬の生産も追いついていない」
ケモノ王国は世界で最も大量の薬草を栽培している国である事はレアも前に聞いた事がある。ヒトノ帝国は広大な領地を持ちながら薬草の栽培に適した土地は少なく、それ故に回復薬の素材となる薬草をケモノ王国から毎年のように大量に輸入している。実際にリルは王国からの使者として薬草をヒトノ帝国の帝都まで運んでいた。
しかし、近年になってからは薬草の栽培量が減り、現在のケモノ王国はヒトノ帝国には例年の半分程度の薬草しか渡す事ができず、そのせいで両国の仲が悪くなっているのが現状だった。ケモノ王国としても薬草の栽培には力を注いでいるが、ここ最近は魔物の被害が多発し、台風などの自然災害も多かった事から薬草の収穫量が減り続けているという。
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