解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き残ります

第191話 文字変換の実証

「あの、本当に上手く行くんですか？」

「勿論だとも、このままだと君は勇者として保護される事になるからね。だが、そうなると僕達としても都合が悪い」

「どういう意味でござる？」

リルの言葉にハンゾウは不思議そうに尋ねると、その前にレアは自分の能力を二人にも明かす事にした。

「えっとですね、実は勇者は「加護」と呼ばれる能力があるんです」

「ああ、聞いた事がありますよ。魔法の加護とか、剣の加護とか、そういう能力が勇者さんは持ってるんですよね。勇者の伝承の中では有名な話ですね」

「俺の場合は解析の勇者で、解析という能力も持ってます。そして加護に関しては「文字の加護」という名前で分かりやすく言えば文字を変換させる力です」

「文字を変換……それは具体的にどのように役立つのでござる？」

「文字を別の文字に変化させる能力という訳ですか？」

レアの説明を聞いてハンゾウは疑問を抱くが、リリスの方は文字変換の意味を理解する。だが、聞くだけでは別に大した能力には思えないが、試しにリルは何も生けられていない花瓶を発見してレアに渡す。

「レイナ君、試しにこれを使って何か出してくれるか？」

「花瓶ですか……そうですね、じゃあ二文字の道具の何か欲しい物がありますか？」

「二文字の道具でござるか？」

「花瓶、二文字……まさか……！？」

「どうやらリリスは察したようだな。流石は我が騎士団の軍師だ」

ハンゾウはレアの言葉を聞いても何をするかのか想像すら出来ないが、リリスの場合はレアの説明を受けて驚いた表情を浮かべ、彼女は少し悩んだ様子を見せるとレアに頼む。

「そうですね、なら私は……短剣が欲しいです」

「短剣ね、じゃあちょっと待ってください……解析！！」

「おうっ！？急にどうしたでござる？」

「いいから見てるんだ」

レアが大声を上げたのでハンゾウは驚くが、それをチイが落ち着かせると、何もない空間に向けてレアは指を伸ばす。

ハンゾウとリリスはレアの行動の意図は掴めないが、彼の指先が光を放っている事に気付き、やがて空中に何かを書き込んだ瞬間、机の上に置かれた花瓶が光り輝く。

「はい、終わりました」

「終わったとはいったい……ぬおっ！？」

「こ、これは……！？」

机の上の花瓶が光り輝いた瞬間、徐々に形を変形していき、やがてデザインがシンプルな「短剣」へと変化した。それを間近で見ていたハンゾウとリリスは驚くが、他の者達は特に見慣れた光景なので特に驚く様子もない。

恐る恐る二人は短剣に近付くと、ハンゾウが指先で短剣を持ち上げ、本物である事を見抜く。しかし、先ほどまでは確かに花瓶だった物が刃物に変形するなど有り得ず、彼女は驚いた様子でレアに振り返る。

「これはどういう事でござる！？まさか、変化の術でも使えるのでござるか！？」

「この能力、まさか錬金術師の扱う物質変換……？いや、もっと別の何か……」

「僕達も完全にレア君の能力を完全に把握しているわけではないんだが、この能力のお陰で色々と助けられたよ」

「私達が短期間でここまでこれたのはレアのお陰だ」

「えっへん」

「きゅろんっ」

「ぷるるんっ」

何故かレアではなく、他の者達がレアの能力に驚く二人に自慢げに語ると、ここでリリスは先ほどのレアの「解析」という言葉を思い出し、何もない空中に指先を動かしていた事を思い出す。

(解析という事は……言葉通りにさっきの花瓶を解析していた？確か鑑定士は物体に鑑定の能力を発動させると視界に画面が表示されると聞いた事がありますけど、それと似たような能力を使える？そして指先を光らせて何か文字のような物を欠いていた……まさか、文字変換は視界に表示された画面の文字を書き換える能力！？)

一度見ただけでリリスは正確にレアの能力を見抜くと驚いた表情を浮かべ、彼の能力がどれほど凄まじい力なのかを思い知らされる。一方でリリスは興奮が隠し切れず、レアに詰め寄った。

「なるほど、文字変換というのはこういう能力でしたか！！じゃあ、もしかして二文字の道具ならどんな物でも作り替えたりできるんですか？」

「え？う、うん……出来ると思うけど、まさか今のだけで俺の能力を分かったんですか？」

「ど、どう言う事でござるリリス殿！？いったい、何時の間に花瓶が短剣にすり替えられたのでござる！？」

「流石はリリスだな、一度見ただけでやはり見抜いたか……だが、ハンゾウの方はもう少し分かりやすく説明する必要がありそうだな」

「相変わらず両極端ですねこの二人は……」

混乱するハンゾウとレアに詰め寄って文字変換の能力の詳細を尋ねるリリスを見て、こうなる事を予想していたのかのようにリルは頷き、チイはため息を吐いた――

――この後、ハンゾウにレアの能力の説明するのに多少の時間は掛かったが、とりあえずは文字を変換させる事で物体を別の物体に変化させたり、あるいは物体以外の存在にも作り替えられる能力である事は理解した。

但し、１日の間に扱える文字数が１０文字に限られ、ステータス画面の改竄も行えるがレベルを変化させた場合は肉体に起きる影響も説明する羽目になり、結局は全員が理解するのに時間が掛かってしまう。