第190話 ハンゾウとリリス
――リルとチイがレイナと別れた後、実を言うと既にこの時点でリルは動いていた。謹慎を言い渡されていた彼女だが、自らその禁を破って国王の元へと訪れる。
『陛下、お話があります』
『リルル!?お主には謹慎を言い渡したのだぞ、どうしてここへ来た!!』
『申し訳ございません。ですが、私のお話を聞いてください!!先ほど、私の部下が城内にまだギャン宰相が残っているという報告を受けています!!』
『何だと!?』
国王はリルの話を聞き、屋敷に謹慎を言い渡したギャンも城内に残っているという話に戸惑う。もしもリルルの言葉が真実ならばギャンも国王の言いつけを破った事により、処罰を免れない。
『リルルよ、その話は本当なのか?』
『はい、嘘偽りは申しておりません』
『……ならば、ギャンは何処にいる?』
普段の国王ならばギャンを信頼しているので話も聞こうとしなかったかもしれない。だが、昼間の件で国王もギャンに対しては不信感を抱き、もしもリルルの言葉が正しければギャンは国王の命令を無視した事になる。それは臣下としてあるまじき行動であり、決して許される事ではなかった。
その一方でリルルの方も謹慎を破った事は事実のため、これがもしも彼女の虚言であればいくら王女と言えども厳罰は免れない。だが、リルルは自分の配下達の事を信じて動く。
『失礼します!!国王陛下、白狼騎士団のチイ副団長が面会を求めています!!』
『来たか!!陛下、すぐに呼んでください!!』
『……うむ、通せ』
そこから先はリルと打ち合わせをしていたチイが玉座の間に入り、彼女はリルの元へ向かうと言いながらも実は最初から玉座の間へ向かっていた。これはリルと打ち合わせを行い、時間内に玉座の間へと訪れるように調整していたからである。
実は城内にギャンが残っているという情報はリルの配下の者が調べたという言葉は嘘ではなく、この城内にはチイとネコミン以外の配下が「2名」存在する。その内の1名は情報収集に長けた能力を持ち、その配下の協力を得てリル達はギャンの居所を掴んだ。
前にレイナはネコミンから白狼騎士団には他に2名の騎士がいると聞いており、リルが戻って来た事を聞いて2人とも城に帰って来たという。その2名の協力を得てギャンの居場所及び彼が追い払った門番の兵士を連れ出し、作戦を成功させた――
「……さあ、二人とも出てきてくれ。どうせ、私達がここへ来るのはもう知っていたんだろう?」
「おろっ……もうバレていたでござるか」
「ちぇっ……驚かそうと思ったのにつまらない人ですね」
「わっ!?」
天井とクローゼットから女性の声が上がり、レアは驚いて顔を上げるとそこには天井に張り付く黒髪にポニーテールの女性が存在した。クローゼットの方から金髪の髪の毛に白衣を纏った少女が現れる。
この二人こそが白狼騎士団の最後の2名の女騎士であり、天井に張り付いた女性と白衣の少女が歩み寄るとリルが紹介を行う。
「改めて紹介しよう。この黒髪の凛々しい娘は「暗殺者」の称号を持つ「ハンゾウ」だ」
「ハンゾウでござる。気軽にハンちゃんと呼んで欲しいでござる」
「そしてこちらの一見は少女にしか見えない娘は実は私よりも年齢が年上のリリスだ」
「誰がロリババアですか、朝起きたらアフロになる薬を飲ませますよ。私は森人族の血が混じってるから成長が遅いだけです」
「それは止めてくれ、というかそこまで言ってないのに……」
「ど、どうも……ハン=チャンさん、リスさん」
「ハンちゃんでござる」
「リリスです。そんなクルミが好きそうな動物の名前じゃありません」
レアの言葉にハンゾウとリリスがツッコミを入れると、改めてリルは部屋の中を見渡し、満足そうに頷く。
「いや、それにしても中々の面子だ。全員が美少女揃い、正に僕の理想のハーレムだ」
「全く、リル殿は相変わらずでござるな」
「男の人を連れてくるというから驚いたら、こんな女の子みたいな顔をした子だなんて……本当にリルさんは面食いですね」
「何を言うか!!むさくるしいおっさんよりも美少女の方が可愛くて傍に置きたいだろう!!」
「開き直りましたよこの人……」
「はあっ……レアの紹介はいいんですか?」
リルの発言にハンゾウとリリスが呆れると、チイが口を挟む。彼女に言われてリルは咳ばらいを行い、今度はレアの後ろ回って彼の両肩を掴む。
「紹介しよう。彼が私達の協力者にして、新しい白狼騎士団の隊員となるレア君だ。これからもよろしく頼む」
「え?騎士団?男の人を白狼騎士団に入れるんですか?」
「なんとっ!?遂に拙者に後輩が!?」
「まあ、騎士団に入れるといっても勇者としてのレアくんではなく、レイナ君として入って貰う事になるけどね」
『???』
ハンゾウとリリスはリルの言葉に首を傾げるが、レアの方はリルの言葉を聞いて不安そうに尋ねる。
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