第192話 所持者の変更
「むむむ……俄かには信じられないでござるが、凄い能力でござる」
「や、やっと理解してくれたか」
「いや、それにしてもこれは素晴らしい能力ですね。まさか聖剣まで作り出せるとは……」
レアはこれまでに作り出した聖剣を見てハンゾウとリリスも彼の能力の秘密を完全に信じ込み、改めてレアの能力の恐ろしさを知る。下手をしたらこれまでに召喚された勇者の中でも最も凄い能力かもしれない。
「過去に召喚された勇者の中には想像した道具を実体化させる勇者もいたそうですが、レアさんの場合はそれに近い能力ですね。でも、気になる事があるんですけどいいですか?」
「何が気になるの?」
「例えば、曖昧な文字の場合はレアさんが想像した物が作り出されるんですよね。」
「ああ、うん。?」
過去にレアは文字変換の能力を使ったときの出来事を聞いたリリスは、道具を別の道具に作り替える時にレアが想像した物ならば作り出せる事を知る。そこで彼女は聖剣フラガラッハを手に取り、リルの所持する剣を掴む。
「じゃあ、聖剣の場合は剣という文字に変換させるだけで作り出せるんですか?聖剣と言えども、元を正せば剣ですからね」
「え、どうだろう……」
「私の予測ですが、多分この場合だとレアさんが存在を知っている聖剣ならば「剣」の文字だけで作り出せると思うんですよ。試しにやっちゃってください」
「簡単に言うな……でも、そうだね。やってみようかな」
レアは適当に一文字の道具を探すと、鞄の中から「皿」を取り出す。そして解析と文字変換の能力を発動させ、今回は想像力を働かせて「剣」という文字を書き込む。
「……よし、どりゃああああっ!!」
「何故、そんな気合のこもった雄たけびを!?考えながら文字を書き込むだけですよね!?」
「いや、意外と難しいんだよ……」
文字を書き込んだ瞬間、画面が更新されて無事に成功を果たしたらしく、レアが所持する「皿」は徐々に「剣」の形へと変化していく。やがてレアの手元には一番使い慣れている「フラガラッハ」へと変化していた。
「おおっ!?ほ、本当に聖剣が完成したでござる!?」
「凄い……まさかこの世に二つとない聖剣をこうも簡単に作り出すとは」
「二つとないうが、実際の所は四本目なんですけどね」
レアは最初に帝都で暮らしていた頃、フラガラッハを二本も作り出している。そのうちの最初に作り出した一本はウサンに回収され、もう一本はレアの武器として活躍している。
通算で三本目のフラガラッハを作り出したレアはその様子を確認し、試しに剣を振りぬく。剣を振る感触も具合も自分が使用しているフラガラッハと変わりはなく、更に解析を発動させて詳細画面を開くと、内容に関しても全く同じだった。
「うん、性能に関しても俺が持っているフラガラッハと全く同じみたい……あ、そうだ。同じ聖剣を持っている場合は効果はどうなるんだろう?加算されるのかな?」
「いや、残念だがそれはないだろう。同名の能力の場合は効果が加算する事はない。但し、効果が同系統ではあっても名前が異なる場合は別だがな」
「なるほど……じゃあ、経験値増量の効果を持つ武器を二つ持っても駄目だけど、経験値増量と経験値倍加なら効果は二つとも発揮されるんですね」
「中々の理解力ですね。もしかして今言った技能は覚えてるんですか?」
「まあ、一応は……」
「それは便利でござるな。経験値に関する技能はそう簡単には身に着けられないと聞いているでござるが……」
残念ながら同名の能力を持つ聖剣同士ではいくら所持していようと効果が増える事はなく、当然ながらに「攻撃力3倍増」の効果も強化されることはない。だが、フラガラッハとアスカロンの組み合わせならばどちらの能力も重なる事はないため、効果は加算される。
二つ目のフラガラッハを作り出したまでは良かったが、実質的に1本だろうと2本だろうと効能は変わりないのならばあまり意味はない。予備の武器として所持していても問題はないのだが、ここでリリスが口を挟む。
「レアさんの名前は「霧崎レア」でしたよね?つまり、四文字の名前ですよね」
「え?うん、そうだけど……」
「じゃあ、試しにそのフラガラッハの所有者名の名前を「ハンゾウ」さんに変えた場合はどうなるんですかね?」
「なんと!?拙者の名前に!?」
「えっと……どうだろう。やった事は無いけど、試してみるね」
リリスの言葉にレアは新しく作り出したフラガラッハに視線を向け、解析を発動させる。そして文字変換を発動させて詳細画面に記されている所有者名の名前の変換を行う。その様子を他の者達は緊張した面持ちで見ていると、レアは文字を打ち込む。
「これでよし、と……あっ」
「ど、どうした?」
「いや、それが……なんか、成功したみたい」
『何っ!?』
「ほうほう……やはり、これは面白い能力ですね」
――レアの視界の画面には所有者名が「ハンゾウ」と変換された聖剣が作り上げられ、それを聞いたリリスは口元に笑みを作る。
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