第160話 サンドワームの服従
「よし、これで……うわっ!?」
「ギュロロッ!!」
食事を終えたのかサンドワームはゆっくりとレイナの元へ恐ろしい顔を向け、近づける。その様子を見たリル達はサンドワームがレイナに襲いかかろうとしていると判断して咄嗟に武器を構えた。
「れ、レイナ君!!」
「離れろ、食べられるぞ!!」
「逃げてっ!!」
「ぷるんっ!?」
しかし、リル達の予想に反してサンドワームはレイナに顔を近づけた状態で動こうとせず、何かを確かめるように停止した。
サンドワームの異変に気付いたリル達は警戒しながらも様子を伺うと、やがてレイナはゆっくりと手を伸ばしてサンドワームの顔に触れる。
「よ、よしよし……」
「ギュロロッ♪」
「……ど、どうなってるんだ?あのサンドワームが……」
「まさか……本当に餌付けした?」
サンドワームはレイナに撫でられると嬉しそうに身体をくねらせ、その態度を見たリル達は呆気に取られた。しかし、すぐに事情を察したクロミンがレイナの元へ急ぎ、彼の頭に乗り込むとサンドワームに何事か語り掛けた。
「ぷるぷるっ」
「ギュロッ?」
「ぷるぷる~んっ!!」
「ギュロロッ……」
クロミンが身体を震わせながら鳴き声を掛けると、サンドワームは意思が伝わったのか頷く素振りを行う。その結果、サンドワームは自分が姿を現したときに落ちてきた瓦礫によって塞がれた出口へと移動すると、瓦礫に身体を突っ込む。
「ギュロロロッ!!」
「うわっ!?」
サンドワームが瓦礫を吹き飛ばした事でトンネルの出口が解放され、そのままサンドワームは外へ移動する。その様子を見てレイナ達は驚くが、すぐに出口が解放された事を理解すると、急いで外へ抜け出す。
幸いなことにトンネルの先は崖道に続いてい垂らしく、しかも反対側の崖道と違って道幅はサンドワームでも通れるほどの大きさだった。外に出られた事にレイナ達は安心する一方、サンドワームの方はレイナに何かを伝えようと顔を近付かせる。
「ギュロロ、ギュロッ」
「えっと……何か伝えようとしてるの?」
「ギュロンッ」
レイナの疑問にサンドワームは頷く素振りを行い、どうやら人語を理解するらしく、見た目からは想像できないが知能も相当に高いらしい。サンドワームはレイナの頭の上に乗るクロミンに視線を向け、身体をくねらせる。
「ギュロロロッ」
「ぷるぷるんっ」
「クロミン?クロミンがどうかしたの?」
「レイナ、もしかしたらだけど……このサンドワーム、クロミンみたいに変わりたいんじゃないの?」
「え?それって……サンドワームもスライムになりたいの?」
ネコミンがクロミンの伝えたい言葉を察してレイナに話しかけると、レイナは驚いて頭の上のクロミンを抱き上げる。ネコミンの言葉が当たっていたのか、クロミンは同意するように身体を震わせた。
「ぷるぷるっ……」
「ギュロロッ……」
「ど、どうやらネコミンの言う通りみたいだな……しかし、どうするんだレイナ君?」
「どうすると言われても……」
「まさか、このままサンドワームを連れて行くつもりか!?いくらなんでもそれは無理があるぞ……どうにか出来ないのか?」
お願いするようにサンドワームは身体をくねらせ、その様子を見たレイナは困った表情を浮かべながらも詳細画面に視線を向ける。考えている間にもサンドワームは不安そうに顔を覗き込み、その行為にリル達は少し怯えた表情を浮かべる。
―――サンドワーム―――
種族:サンドワーム種
性別:雌
状態:空腹
特徴:牙山に生息する魔物の主、他のサンドワームは絶命したのでケモノ王国にはこの1体しか存在しない
―――――――――――
画面の確認を終えると、レイナはクロミンを「下位竜種」から「スライム」と変化した事でクロミンを竜種からスライムへと変化させた事を思い出す。サンドワームを別の魔物に変更させる場合、今回の場合は「サンドワーム種」の7文字、あるいは「サンドワーム」の部分だけを変更するのであれば6文字を消費する事になる。
(今日変換できる文字数の事を考えると変換できるのは「サンドワーム」の部分だけか……)
1日に10文字という文字数の制限が掛けられている以上はレイナは「トンネル」を作り出すときに4文字を既に使用しているため、残りは6文字しか扱えない。だが、この6文字を使ってどんな魔物に変化させるのか思い悩む。
(6文字の魔物となると……ミノタウロスとか、ホブゴブリンとかかな?でも、どっちも一緒に連れ歩くには問題がありそうだしな……どうしよう)
6文字の魔物の中でレイナが知っているのはミノタウロスとホブゴブリンだけであり、どちらも世間では危険種として警戒される魔物達であった。
出来る事ならばスライムのように人々に恐れられず愛嬌のある魔物がいいと考え、リル達にも相談を行う。
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