第161話 ダークエルフ

「皆、6文字の名前で人間には人畜無害な魔物を知らないかな?」

「え?6文字の魔物?」

「……特に心当たりはないな」

「どうしてそんな事を聞くの?」

「いや、クロミンの時の様にこの子も他の魔物に変化させようかと思って……」

「ギュロロッ」



レイナの言葉にサンドワームは「お願いします」とばかりに頷く素振りを行い、それを見たリル達は困った表情を浮かべるが、サンドワームを別の魔物に変化させる事は大賛成だった。


外見だけでも恐ろしいのでせめて他の魔物に変化させればリル達も心が落ち着くかもしれず、3人は必死に考えるとネコミンが尋ねる。



「レイナ、どうしても魔物の名前じゃないと駄目?」

「ん?どういう事?」

「魔物じゃなくても魔人族の名前なら心当たりがある」

「魔人族……吸血鬼みたいな奴等の事だっけ?」

「そうだ。人に最も近く、それでいながら魔物の力を持つ種族だ。我々の国では人権を認めらている魔人族も少数だが存在する」

「へえっ……」

「ギュロッ?」



詳細画面に表示されているのは「サンドワーム種」とだけ書かれており、仮に魔人族だとしても6文字の種族名だとしたら文字変換が成功する可能性もある。失敗したとしても文字変換の文字数が減る事はないので試しにレイナは聞いてみる事にした。



「とりあえず、やってみるよ。ネコミンの知っている魔人族の名前は何?」

「ダークエルフ」

「エルフ?それって長寿で有名なあのエルフ?」



ダークエルフという言葉にレイナは疑問を抱き、この世界に訪れてからレイナは何度かエルフと思われる存在と遭遇している。ネコミンの言葉にリルが補足を行う。



「ダークエルフは普通のエルフではなく、エルフと非常に酷似した魔人族だ。先祖がエルフと魔物が交わって生まれたと言われている。そのために彼等は魔人族として扱われているが、基本的には外見は人間と変わらないし、能力的にも本物のエルフに劣らない」

「へえっ……ミノタウロスよりも人間に近い魔人族なんですか?」

「そういう事になるな。だからケモノ王国ではダークエルフは人権が認められている。だが、エルフはダークエルフの存在を禁忌として扱い、人権は認めずに奴隷のように扱っているらしい。一方でヒトノ帝国の方ではダークエルフを魔人族として扱うか、人種として扱うか未だに議論されている」

「なるほど……?」



ダークエルフは人間と殆ど変わらない外見をしており、吸血鬼と比べて人に危害を与えなければ生きられないわけでもないため、ケモノ王国では人権を認められている。それを聞いたレイナは試しに詳細画面に指を近づけ、文字変換を試す。



「よし、じゃあ試しますね」

「ギュロロッ♪」

「……上手く成功してほしい」

「この外見が変わるのなら期待したい所だが……」

「頼む、上手く行ってくれ……」

「ぷるぷるっ(後輩が増える!!)」



レイナが文字変換を発動させると、リル達は切実にサンドワームがダークエルフに変化する事を祈る。せめて外見だけでも変化してくれるのであれば彼女達も文句はなく、成功を祈った。


文字を打ち込んだ瞬間、詳細画面の「種族」の名前が「サンドワーム種」から「ダークエルフ種」へと変わり、やがて画面が更新される。どうやら無事に成功したらしく、サンドワームの身体に異変が訪れた。



「ギュロロロッ――!?」

「ひ、光った!?」

「成功したのか!?」

「眩しい……!!」

「くっ……」

「ぷるりんっ(←眩しそうに目を閉じる)」



サンドワームの肉体が光り輝くと、やがて身体が縮小化し、やがて金髪の髪の毛に褐色肌の少女へと姿を変えた。年齢は10才程度で身長は130センチぐらいであり、容姿に関しては幼いながらに整っていた。


恐ろしい外見のサンドワームが一瞬にしてダークエルフの少女に変化した事にレイナ達は驚き、文字変換を発動させたレイナ本人も驚きを隠せない。一方で少女と化したサンドワームも不思議そうに自分の身体を見つめ、全裸の状態でレイナ達を見上げる。



「きゅろろっ?」

「か、可愛い……」

「これがあのサンドワームなのか……?」

「……とりあえず、服を着せた方が良い」

「そ、そうだね……」



ダークエルフの少女へと変身したダークエルフに対してリル達はその可憐な姿にときめくが、全裸のままで居る事に気付いて慌てて毛布を取り出して身に着けさせる。少女は不思議そうに自分の身体を眺め、手足を動かしながら声をあげた。



「きゅろろ~」

「……さっきから気になってたんだが、どうしてこの子の言葉はサンドワームのままなんだ?」

「もしかして、人の言葉が分からないのか?」

「きゅろっ?」



サンドワームはレイナ達の言葉を理解している酔うだが、当の本人は人の言葉を発する様子はなく、不思議そうに首を傾げた。





※ヒロイン……ではなくペット枠が追加されました(笑)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る