第144話 間に合え
(まずいっ!!この場所からだと、下りても間に合わない!!)
村の外に存在するホブゴブリンに見つかったレイナは焦り、どうにかホブゴブリンが仲間に異変を知らせる行動を取る前に仕留める方法を考える。ホブゴブリンの傍にはファングも存在し、もしも鳴き声を上げさせられたら村の中央部に存在する他の仲間達にも聞かれてしまう可能性があった。
真っ先にレイナの脳裏に思いついたのは「エクスカリバー」の存在であり、あの聖剣ならば遠距離からでも攻撃できる可能性はあった。咄嗟にレイナは腰の鞄に手を伸ばすと異空間に繋がっている鞄の中からエクスカリバーを引き抜く。
「ギィアッ――!!」
ホブゴブリンがファングに何事か命じようとした瞬間、レイナはエクスカリバーを鞘から引き抜き、刃を振り翳す。刀身に光が帯びるとホブゴブリンに向けて刃を振りぬいた瞬間、光刃が放たれてホブゴブリンの肉体を切り裂く。
「グギャアッ!?」
「ガアッ!?」
光刃がホブゴブリンを切り裂いた瞬間、ホブゴブリンは泡を吹いて倒れ込む。その様子を見たファングは驚いてその場を駆け出し、森の中へと逃げ込む。その様子を見てレイナは慌てて振り返ると、村の中央部に存在するホブゴブリン達には気付かれていない事を知って安堵する。
(た、助かった……けど、死んでないよなあれ?)
額の汗を拭いながらもレイナは村の外のホブゴブリンに視線を向けると、肉体に外傷はないのだがホブゴブリンは泡を吹いて倒れ、完全に気絶していた。以前にリルからエクスカリバーは「不殺の聖剣」という異名があるという話を聞いていたレイナはその意味を知った。
(なるほど、確かに生者の場合は殺す事が出来ない聖剣か……でも、斬られた感触はあるみたいだな)
光刃は間違いなくホブゴブリンの胴体を切り裂いたが、瞬時に肉体の傷は再生したらしい。だが、斬られた際の激痛に関してはホブゴブリンも味わったらしく、あまりの痛みに気絶した様子だった。
どうにか騒ぎを起こされる前にホブゴブリンを気絶させる事に成功したレイナは安堵すると、地上のリル達に合図を送って作戦が成功した事を伝える。彼女達は高台に集まるとレイナも合流し、どうにか作戦が成功した事を安堵する。
「ふうっ……最後のは焦ったぞ。急に聖剣を取り出すから何事かと思ったな」
「まさかこの状況で村の外にホブゴブリンが現れるとは……すまない、私達がもっと警戒しておくべきだった」
「でも、作戦が成功して良かった」
「ぷるぷるっ(冷や冷やした)」
「ふうっ、流石に肝が冷えたよ……けど、これでもう大丈夫なはず」
まだ他にも村の外にホブゴブリンが待ち構えている危険性は残っているが、一先ずは高台の見張りを始末した事でレイナ達は村の中のホブゴブリンに存在を気付かれる恐れはなくなった。
ここから先はどのような手段で村に滞在するホブゴブリンを殲滅するかであり、村の中央部に集まったホブゴブリンの数は最低でも30匹、その内の大半は眠っていた。リルがホブゴブリンが昼行性の生物ではないかと疑っていたが、意外とその考えは正しかったのかもしれず、村の中では静まり返っていた。
「リル様?ここからどうしますか?高台のホブゴブリンは始末しましたが、奴等が寝入るのを待って夜襲しますか?」
「そうだな、その前にシロとクロも呼ぼう。戦闘になると2人の力も必要だ」
「分かった、私が呼んでくる」
ネコミンが犬笛のような物を取り出すと、森の中に隠れているシロとクロを呼び出す。笛を吹いてもレイナには何も聞こえなかったが、シロとクロにはちゃんと伝わったらしく、2匹は喜び勇んで駆けつける。
「「ウォンッ(小声)」」
「よしよし、これで全員揃った」
「ふむ、クロミンを加えてもこれで私達の数は7人か……一人当たり、だいたい4、5匹倒さないとならないな」
「その程度の数ならどうにかなります。一気に仕掛けましょう!!」
「そうだな……よし、レイナ君。クロミンを悪いが黒竜に変化させてくれ」
「…………」
「レイナ?」
リルはレイナに文字変換の能力でクロミンを変身させるように頼むが、ここでレイナはホブゴブリン達が休んでいる村の中央部に視線を向け、ある事を考える。より確実にホブゴブリンを仕留める方法を思いついた。
「あの、ちょっと提案があるんですけど……」
レイナの考えた作戦を聞いたリル達は非常に驚かされ、同時にこの状況でよくそんな考えが出てきたと呆れるべきか感心するべきか分からない表情を浮かべた。だが、作戦の内容自体は悪くはなく、同時に今まで敢えて無視してきた「彼」に解放する好機を与える事にした――
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