第114話 アンデッド

『アアアアッ……!!』

「うわっ!?」

「くっ……長く持ちそうにないな」



アンデッドの大群がキャンピングカーの周囲を群がり、車体が激しく揺らされる。車の上に乗っているシロとクロも振り落とされないか心配する暇もなく、レア達はどのように対処するのかを考える。


恐らくは村の住民だと思われるアンデッドたちは完全にキャンピングカーを取り囲み、今から車を動かそうとしても突破する事は難しいだろう。映画やゲームではあるまいし、大勢の人間に囲まれた状態で車を出してもタイヤがアンデッドに乗り上げて横転するのは目に見えていた。



「リル様、ここは強行突破しかありません!!入口の奴等を蹴散らし、シロとクロに乗り込んで逃げましょう」

「……それしか方法はないか」

「ちょっと待ってください、それなら二階の窓を使いましょう」

「その方が良いと思う。



レア達が乗り込んでいるキャンピングカーには二階に窓が存在するため、窓から車体の上に移動する方が早い。急いでリル達は二階に移動しようとすると、フロントガラスを破壊してアンデッドが乗り込んできた。



「アアアッ!!」

「うわっ!?」

「ちっ、もう来たか……早く登れ!!ここは私が……」

「いや、待て!!レア君、君のフラガラッハなら対処出来るはずだ!!」

「リル!?」



最後尾のチイがアンデッドと戦おうとしたが、リルはレアにフラガラッハを使用して戦うように促す。先ほどの彼女達の話によるとアンデッドを倒すには聖属性の魔法か、あるいは聖属性の魔力を宿した武器でなければならない。


当然、魔法が扱えないレアにアンデッドに対抗する事は出来ない。しかし、彼が所有しているフラガラッハは伝説の勇者が使用していた聖剣の複製品である。先ほどの戦闘でフラガラッハに切り裂かれたアンデッドの様子を見てリルは確信した。



「恐らく、聖剣には聖属性の魔力を宿されているはずだ!!だからフラガラッハならアンデッドを倒す事が出来るかもしれない!!」

「なるほど……分かりました!!」



フラガラッハが扱えるのは現状ではレアだけである以上、アンデッドと戦うのに適したのはレアしかいない。社内に乗り込んできたアンデッドに対してレアはフラガラッハを振り翳す。



「はああっ!!」

「ぎゃあっ!?」

「あぎぃっ!?」

「うぎゃっ!?」



フラガラッハに斬りつけられたアンデッドは悲鳴を上げ、フラガラッハに切り裂かれた箇所から徐々に身体が崩れ始め、やがて灰と化して消えてしまう。どうやらリルの予想が的中したらしく、フラガラッハならばアンデッドに対抗する事が出来た。


しかし、いくらアンデッドの対抗手段があったとしても次々と乗り込んでくるアンデッドをレア一人で抑える事は出来ず、ある程度の数を倒すとレアも二階へ移動する。既にリル達は窓を開けて車体の上に移動したらしく、窓の外からリルが手を伸ばす。



「レア君、掴まれっ!!」

「はい!!」

『うぎぃいいいっ!!』



階段からアンデッドが登ってくる前にレアはリルの腕を掴み、そのまま車体の上に持ち上げられる。リルのレベルは30を超えているため、人間一人など持ち上げる事は容易く、軽々とレアを引き上げると無事を祝う。



「よくやってくれた。君がいてくれてよかった」

「いえ……それよりもどうしたらいいんですか?」

「完全に囲まれてる……これを抜けるのは難しい」

「な、何だこの数は……!?」

「ぷるるんっ……」

「「グルルルッ……!!」」



キャンピングカーの周囲には無数のアンデッドが群がり、その数は100人を超えていた。しかも次々と地中から新手のアンデッドが出現する光景を見てレア達は冷や汗を流す。


この村の人間達だと思われたが、それにしては妙に数が多すぎる気がした。村の建物の数を考慮しても村人はせいぜい50人程度だと思われたが、既にキャンピングカーの周囲には100を超えるアンデッドが群がり、車体を揺らす。



「これだけの数のアンデッド……恐らく、この村だけではなく他の村の人間も交じっているだろう」

「どうしてこれほどの大量のアンデッドが急に……まさか、死霊使いですか!?」

「分からない……だが、アンデッドが作り出せるのは死霊使いか、あるいは……!?」

「リルさん?」



リルは会話の途中で何かに気付いた様に目を見開き、そしてチイの肩を掴む。唐突に掴まれたチイは戸惑うが、リルは彼女の服の中に手を伸ばす。



「え、ちょと……リル様!?急に何を……あ、やぁんっ」

「ハンカチだ!!ハンカチは何処だ!?」

「ちょ、リルさん!?落ち着いて……」

「ハンカチならチイのポケットに入ってる」

「ここか!!」



唐突にチイの服の中に手を入れてまさぐりはじめたリルにレア達は驚くが、当の彼女は別にふざけているわけではなく、チイが所有していたハンカチを取り出す。

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