第99話 ステータス画面と詳細画面

「待てよ……もしかしたら」

「レイナ?」



レアはステータス画面を閉じると自分の右手に視線を向け、試しに「解析」を発動させる。過去に人間が相手でも解析の能力は発動する事は把握済みだが、自分自身の肉体に試したことはない。結果としてはレアの視界に画面が表示された。



―――霧崎レア―――


種族:人間(異世界人)


性別:男性


状態:普通


特徴:地球と呼ばれる世界から召喚された人間


――――――――――



詳細画面を確認したレアはステータス画面には表示されていない「種族」と「特徴」が追加されている事に気付き、驚いた顔を浮かべる。まさか自分自身の詳細画面も開かれるとは思わず、あまりにも簡素な特徴の説明文を見て呆れてしまう。


詳細画面に表示されている「人間(異世界人)」という文字を見てレアは考え込み、この状態で種族を人間以外に変更したらどうなるのか不安を抱く。


レベルを上昇させた時は「成長痛」が襲いかかったが、性別や年齢を変更したときは特に何も起きなかった。それならば種族を変化させた場合はどんな現象が起きるのかレアは気になる。



(ええい、やってやる!!)



だが、ここで考えていても仕方がないと判断したレアは覚悟を決めて指先を構え、震えながらも種族の項目を「人間」から「獣人」という文字へと変化させた。その結果、レナの身体が光り輝き、性別や年齢を変更したときのように肉体が変化した。



「うわわっ……!?」

「にゃっ……!?」



輝きが収まると、レアは自分の頭の上に違和感を覚え、ズボンの中からふさふさとした何かが出現する。慌ててレアは手鏡を見直すと、何時の間にか頭の上に犬の耳を想像させる獣耳が生えており、後ろを振り返るとふさふさの尻尾も確認できた。


視界に表示されている画面にレアは視線を向けると、そこには種族の項目が「獣人」と変更された画面が表示されており、どうやら無事に文字変換の能力によって種族の変更に成功したらしい。



「お、おおっ……もしかして俺、今は獣人になったの?」

「うん、何処からどう見ても獣人にしか見えない……これなら少しだけ変装すれば正体を気付かれる事は無いと思う」



自分の獣耳と尻尾を動かしながらレアはネコミンに尋ねると、彼女の目から見てもレアは犬型の獣人にしか見えず、この姿の状態ならば兵士に見つかってもレアの正体が気付かれる可能性は低い。


いくら外見が似ていようと種族が異なると知れば怪しまれる事は無く、後は簡単な変装をすれば外に出てもレアの正体が気付かれる事はないだろう。


日付が戻る前に女性の姿に戻る必要はあるが、レアは久々に男の姿で外へ出たい気持ちを抑えきれず、ネコミンに頼んで少しだけ外に出てもいいのかを尋ねる。



「ネコミン、ちょっと外に出てもいいかな?その、ちょっと街の様子を調べたいというか……」

「少しだけなら平気だと思う。でも、私も一緒に行く」

「よし!!じゃあ、行こうか!!」



ネコミンの了承を得るとレアは変装用の道具の中から眼帯を取り出すと、ないよりはマシかと思って眼帯を取りつける。


変装というよりはただのファッションに等しいが、この獣人の姿ならば兵士に見つかっても正体を気付かれる可能性は低いため、二人は外へ出ようとした。だが、ここでネコミンが口を挟む。



「レイナ、その前に尻尾を出す穴を開けておいた方が良い」

「あ、そうか……結構、大変なんだね獣人って」



ズボンからはみ出している自分の尻尾を見てレアは頭を掻き、出かける前にズボンを脱いで尻尾を出す穴を作り出す。人間に戻った時にこのズボンは使えず、今度からは獣人用の衣装も用意する必要があった――






――獣人の姿でレアはネコミンを連れて外に出ると、時刻は既に夜を迎えているので街道に人気は少なかったが、営業している店は多々あった。二人は街の中を歩き、雑談を行いながらも街の様子を眺める。



「チイは実はお肉よりもお肉の骨の方が好き。でも、他人が食べた後の肉の骨は嫌いみたい」

「へえ、そうなのか……」

「でも、前にチイがリルが食べた後の骨にかじりついていたのを見た事がある。おかしな話、私が食べた後の骨を出しても怒るのに……」

「それは……うん、まあ、あんまり気にしない方が良いよ」



チイは犬型の獣人の中の中でも「骨」が好きらしく、普通の動物よりも食用の魔物の骨が好物らしい。ネコミンの場合は魚が好きらしく、特に彼女が気に入っているのは煮干しだった。


煮干しが好きな理由はネコミンの実家は貧しかったらしく、リルと出会うまではまともな食事も有り付けなかったという。



「私とチイは孤児院で育った。チイは両親が魔物に殺されて孤児院に来たけど、私の場合は捨て子だった。だからチイとは長い付き合い」

「へ、へえっ……リルさんはどうやって知り合ったの?」

「孤児院にリルがやってきて私とチイだけを引き取った。その後はリルの所で暮らすようになった」

「そうなんだ」



リルがネコミンとチイを引き取った経緯は気になるが、ケモノ王国がどのような国なのか気になったレアは今度はヒトノ帝国とケモノ王国の違いを尋ねる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る