家具の素材集め



 


 さて、私はラデンを連れて、車を走らせてる最中なんだけどもとりあえずザックのコレクターに素材を見に行く事にした。


 あそこの店は毎回お世話になっているしね、だから、今回家具に使う素材も置いてくれてそうだと思い足を運ぶ事にした。


 先日まで、ドタバタといろいろ物騒ではあったけれど、解決してしまえばいつものようになんてない日常だ。



「キネスさん? コレクターってどんな店なんですか?」

「あぁ、ラデンは初めて行くんだっけ?」

「はい、なのでちょっと聞いておきたくて」



 そう言いながら、ニコニコと笑顔を浮かべるラデン。


 うーん、なんと説明すべきか難しいんだけどね? 強いて言えばとりあえず、錬金術師に必要な素材を取り扱っている雑貨店と説明したら良いのかな?


 車のハンドルを握る私はしばらく考えたのちにとりあえず簡単に説明することにした。



「家や家具の製作に必要な素材品を専門に取り扱ってる店だよ。

 もちろん、錬金術師が欲しがる素材なんかも取り扱ってるね」

「へぇー……。

 そんな店がシュヴァインブルクにあったんですね」

「まあね、意外だったろ? 

 軍にいた時の私の元部下がやってるんだけどね、色々と良く融通してくれるんだ」



 私のその言葉にラデンは、なるほど、と興味深そうに頷いた。


 ラデンも錬金術師であるので、個人的に必要だったり使う物が今後出てくるかもしれない、なので、こういった行きつけの店というのは知っていて損は無いはずだ。


 そう言えば、ラデンのバレッタはまた変わった形状をしていたような気がするな?


 確か、グリーデンと戦った時には短刀のような気がするんだけどもどうなんだろう。


 ちょっとそこら辺も気になるから、この際、聞いてみるか。



「そう言えば、ラデンのバレッタは変わった形をしてるよね? それはなんでなんだ?」

「……あぁ、これですか」



 助手席に座るラデンは自分のバレッタを手慣れた手つきで手で回転させながら遊ばせるように取り出す。


 普通、バレッタは私やグリーデン、レイのように銃の形状が多いんだが、短剣にシリンダーが付いてるようなラデンのバレッタは珍しい部類だ。


 ラデンは取り出したそのバレッタについて笑みを浮かべながら私に説明をし始める。



「このバレッタは特殊なものでして、シリンダーを回転させて、この刃先から錬成したものを生成することができるんですよ」

「へぇー、凄いね」

「火炎については握るところのギアを回せば、シリンダーにメモリアを詰めずとも発火させれる術式を組んであります」



 そう言いながら、私に自分のバレッタの構造を丁寧に説明してくるラデン。


 よくよく考えたら、私ってラデンとは戦いの相性は良くないよね、だって木と火炎だもの、まぁ、奥の手を使えばその相性は逆転するんだろうけどね。


 とはいえ、戦うことはもうないと思いたいけどね、私もラデンと戦うのは嫌だし。


 さて、そんな話をしているうちに車はコレクターの前まで着いた。


 私とラデンは車から降りると店の扉を開ける。



「いらっしゃい! おっ! キネ姉さんじゃないですか!」

「やあ、ザック、しばらくぶりだね」



 そう言いながら、私は嬉しそうに出迎えてくれるザックに笑顔を向けながら軽く手を挙げて応える。


 最近はいろいろ立て込んでて、この店には足を運べていなかったからね。


 こうして、変わらず元気そうに商売してるザックを見るとなんだか安心するよ。


 ザックはしばらくして、私の隣にいるラデンに気がつくと首を傾げこう問いかけてくる



「……っとそちらの別嬪さんは?」

「はじめまして、私は帝国の錬金術師のラデン・メルオットと言います」

「今日からしばらくウチで面倒見ることになってね」



 そう言いながら、私は軽くザックに自己紹介する様に頭を下げているラデンについて説明する。


 ザックは感心したように、へぇ、と驚いたように声を上げる。


 まあ、帝国の錬金術師なんてちょっと前まで私達と殺し合いをしていた人達だからね、ザックの反応もわからんでもないけどな。


 すると、ザックは首を傾げながらこう話をし始める。



「なるほど、はじめまして! 意外ですね、キネ姉さんが帝国軍人さんと仲が良いとは…。

 シドさんとかあまり良い顔しないんじゃないんですか?」

「まあ、でも案外そうでもないみたいだぞ」



 そう言って、私はザックに軽く肩を竦めながら答える。


 確かにシドは帝国嫌いだ、だが、ラデンについてはグリーデンとの出来事以来、多少打ち解けたような雰囲気になっている。


 私の家に住んでる上に店に事務所を仮に置いてる限りは必ずと言って良いほどラデンとシドは顔を合わせる事になる。


 険悪な雰囲気という訳でもないし、彼女もグリーデンとの一件から何か思うところがあったんだろうなと私は思っている。


 何にしろ良い傾向なのは間違い無いだろう。



「そうですか、まあ、僕は帝国や共和国やらを気にするタイプでは無いですからね。

 気を悪くしたのなら申し訳ないです、ごめんなさいね、ラデンさん」

「いいえ、大丈夫ですよ、まあ、ちょっと前まで戦争していたのですからそう思われても仕方ないかなとは思います」



 申し訳なさそうに手を合わせて謝罪してくるザックにラデンは笑みを浮かべて、何事も無いという風に告げる。


 ザックが悪気が無くて単なる疑問だったから質問しただけなのはラデンも理解しているし、シドが帝国嫌いなのは、本人から聞かされていたので彼から受けた質問はなんとも思ってはいなかった。


 むしろ、前まで戦争していた相手とすぐに打ち解ける方が異常だと言える。


 ザックはしばらくして笑みを浮かべたまま、話題を変えるように私にこう問いかけてきた。



「それで、キネ姉さん、今日はどうします?」

「……んーそうだなぁ」



 私は先程、聞いたラデンの家具に必要な物を思い出す。


 確か、保温性が高い分厚い布と広い机が必要だった筈だ。それが揃えばとりあえずは簡単な形は出来る。


 私の場合は品質にも拘りたいので、ちゃんとした素材を使って出来れば試作品を作りたいところである。まだ、設計図しか描いてない状態だしね。



「とりあえず、分厚い布に使えそうな保温性が高い素材と広い4人くらいが囲えそうな広い机に良さそうな素材を見繕ってくれないかい?」

「あ、机は出来れば丈夫そうな素材がいいかと、あと燃えにくい素材で」

「なるほど、保温性が高い分厚い布と……、丈夫で燃えにくい木の素材ですね、ちょっと待ってください」



 そう言いながら、しばらく考え込んでいたザックは店の奥の方へと入っていく。


 ザックはこういった注文に対して的確な素材を選択し、提示してくれるスペシャリストだ。毎回の事ながら、結構無茶なリクエストをしているなとは思うんだが、彼に掛かれば揃えられない素材なんて無いに等しい。


 その分、たまに一か月とか一週間、店を空けることがあるけど、それだけの成果を上げてきている彼の腕前を私は高く買っている。


 元部下だしね、彼の有能さは私が一番理解しているんだけど。


 よく、私に尽くしてくれる上司思いの優しい部下だよ。


 それから、十五分程度の時間が経ち、奥の方から素材を抱えたザックが戻ってくる。



「ふぅ…お待たせしました! お二人さん! 

 それじゃ…こちらなんですけどね」



 そう言いながら、素材をカウンターに置くザック。


 私達はザックの持ってきた素材に興味津々に視線を向ける。果たして、ザックは今回、どんな素材を私に見せてくれるんだろうか?


 ザックはその素材について、詳しい詳細をゆっくりと私達に語りはじめた。

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