悪人達の叫び
男の首をへし折った私はすかさず、彼のホルスターから持っていた拳銃を盗み抜き、それを構えると容赦なく残りの男達目掛けて発砲していく。
目の前にいた男の眉間に弾丸がめり込み、仰反るように吹き飛ぶ。
「がぁ…‼︎」
「てめぇ‼︎ ふざけやがってぇ!」
私に応戦しようと拳銃を抜き、発砲する男達。
だが、私は首をへし折った男を盾にして弾を避ける。
あーあ、せっかく身体を拭いたのに台無しになってしまうじゃないか。
私は彼らが弾切れになるのを待ち、すかさずリロードするタイミングで飛び出して、二人男の頭に弾丸を的確に撃ち込み殺すと、残り一人となった男に飛びかかる。
気がつけば周りには男の仲間だった四人の死体が転がっていた。
信じられない光景に男は顔を真っ青にしながら私の目を真っ直ぐ見てくる。
「さて、言い残す事はあるかな?」
「お前……、化け物かよ……」
「ふふ、この森はそういう森だよ? もしかして、君達の物だとか勘違いしてたのかな?」
私は男に馬乗りになったままクスリッと笑みを浮かべるとそう告げる。
男は私の笑みを見て背筋が凍りついた。冷たく冷え切った声色で告げる言葉には人間味が感じられなかった。
私は右手で男の首を掴むと満面の笑みを浮かべながらこう告げる。
「さて、どうだろう? このまま首をへし折るか拳銃で頭を撃ち抜くか選ばせてあげるよ」
「くたばれ……! この……!」
「そっか、もういいよ」
顔に血が付くのが嫌だったので、そのまま右腕でバキリと首をへし折ってあげた。
こちらは丸腰で相手してあげたのに女一人に情けないなぁ、この男達は。
さて、また血の匂いに誘われて猛獣が集まってくるだろうから木の上に避難しておくとしようかな、多分、助けた彼女も目を覚ますだろうしね。
私は滑車を使って再び木の上に戻ると、錬金術を使ってツルで巻き取って回収した彼女の身体をゆっくりと地面に下ろす。
そして、ゆっくりと温かな布を上から掛けてあげるとそのまま何事もなかったように腕を捲る。
さて、料理に取り掛かるとするかな。
「人を殺した後に肉料理ってのもなんだかなって思うけどね、うん、良い匂いだ」
今日はキルレプターの肉を使ったレプターシチューというのを作ってみた。
生臭さも無いし、いい具合に出来上がっている。こうしてるとソロキャンプをしに来ているみたいで楽しいのは楽しいんだけどね。
そして、料理の匂いに釣られてか、意識を失っていた彼女がゆっくりと目を覚ました。
「おや、起きたかい?」
「貴女は……」
目を擦る彼女は辺りを見渡しながら私にそう告げる。
彼女からしてみれば先程まで、襲われかけていたのに、気がつけば木の上でシチューを振る舞われる状況になっていれば戸惑うのは致し方ないだろう。
私は肩を竦めると、彼女に木の下を眺めれるところを指差して教えてあげる。
彼女は恐る恐る、覗き込むようにしてゆっくりと木の下へと視線を落とした。
そこに広がっていたのは。
「ガルルルゥ」
「ガゥ」
五人の男達の死体を貪り食う獰猛な獣達の姿があった。
顔を真っ青にしながらその光景を眺めていた彼女に私は冷静な口調でこう語り出す。
「おそらく、遺体は明日には残って無いだろな、一通り食い荒らした後は奴らは巣に餌を持ち帰るだろうからね」
冷静な私の口調で私に対して、その男達の無惨な姿を見た彼女は口から吐き出すように異物を吐く。
まあ、少し刺激的な光景だったかもしれないね、とはいえ、私は見慣れているので彼女のその姿になんの言葉を掛けるつもりはなかった。
彼女をよく見てみると服は肌けてるし、乱暴に脱がされた挙句に暴行された後もある。
殺しておいてよかったなと私は思った。戦争で敵国の兵士を殺すよりも清々しさすら感じるくらいだ。
「貴女は……、一体……」
「あぁ、私かい? 私はキネス、ビルディングコーディネイターをやっている錬金術師さ。……はい、お食べ」
落ち着いた彼女にシチューを渡しながら私は笑みを浮かべて告げる。
シチューを受け取った彼女は私がビルディングコーディネイターと聞いて目を丸くする。
ただのビルディングコーディネイターが拳銃を持った男達五人を相手にして全て殺してしまうなんて信じられない。
いや、ただのではない、確かに錬金術師とキネスは言っていた。だが、それにしてもあまりにも凄まじい強さだ。
「それで君は?」
私はシチューを受け取った女の人にとりあえず事情を聞く事にした。
服を見る限りでは身なりは本来は良いのだろう、見た感じ帝国の服ようだ。
となれば、帝国の要人だろうか? それならば、この森を夜に抜けようとした愚行もわからなくもないが、果たしてどうなんだろう。
長く美しい栗色の髪に綺麗な瑠璃色の瞳、そして、スラリとした綺麗な身体を見る限りでは良いところの娘さんのような気もするが。
「私はケルズ・サラと言います。……実は先日、テロにあったガラパという街の市長の娘で……」
「あらら……、これは驚いたね」
私はそう言いながらタバコを口に咥えながら肩を竦める。
まさか、ニュースで見たテロにあった街の市長の娘がこんなところにいるなんて何という偶然なんだろうか。
私はまた面倒ごとに巻き込まれたんじゃないかと思わず顔を引きつらせる。
その予想は大方、当たっていたらい。
彼女から話を聞けば、テロが起きてるガラパから逃すために市長が私が住む共和国の街に彼女を護衛を連れて護送する予定だったそうだ。
その護送する際にテロリストの襲撃を受けたらしく、警護は全滅、彼女は隙を見てこの森に逃げ込んだらしい。
そして、森を根城にしている犯罪者達に追われる羽目になり、捕まり慰み者にされそうになったところを命かながら抵抗し、逃げて今に至るというわけだ。
「なるほどね、大変だったね……」
「いえ、危ないところを助けて頂きありがとうございます」
「良いんだよ、怖い目にあったんだからさ、明日には私は街に帰るから一緒に連れてってあげるよ」
そう言いながら、私は優しく彼女の側によると頭を撫でてあげる。
色々と大変だっただろうなと思う、よく、身一つでこの森を走って逃げてこれたなと感心するばかりだ。
途中で獰猛な獣に襲われて食われていてもおかしくない。
面倒ごとには巻き込まれるかもしれないが、私は安心したように頭を預けて、涙を流しながら目を瞑る彼女を見て、助ける事ができてよかったと心底そう思った。
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