魔女とは

「お前災難だったな。魔女の庭の担当になったんだってな」

「それは本当かい。いやー、若いのに残念なことだ」

「早く担当を変えて貰えばどうだい?」


酒屋では仲間の庭師達が僕の境遇のことを肴に酒を飲み交わしていた。


「僕は庭を綺麗にするのが好きなだけだ。特に荒れた庭を綺麗にするのが好きなんで、今回は本当に楽しい仕事でしたよ」


彼女との出会いに泥を塗られたように感じ、つい語気が強くなってしまったが、酒が入っているため、みんな気にしていないようだ。


「そうそう、あの庭はもうずっと荒れ放題だったからな」

「そりゃそうさ!なんてんたって担当庭師はもれなくおっ死んでるってきたもんだからな」

「あの魔女様に殺されたに違いない!」


赤ら顔の中年庭師達はくわばらくわばら

と拝むように手をスリスリと擦り合わせてゲラゲラと笑っていた。


「魔女ってだからそう呼ばれてるんですか?」

「そうともさ!それ以外もあるけどな…」

「それ以外って?」


「余所モンのお前は知らねぇかもしれないが、あの屋敷には定期的に魔女と呼ばれる女が生まれるんだ。その魔女は特別な力を持っていて人を意のままに操る事が出来るらしいぞ」

「つまり血筋的なものって事ですか?」

「チスジ?ってなんだ?よくわからんがそう言うことなんじゃねぇのか?ともかくお前さんを気をつけるこった」


そこにウエイトレスがやってきて、話題がその子のお尻のことに移っていった。



酒屋からの帰り道に彼女のことを想った。

魔女…。人を意のままに操る…。

僕も操られているのだろうか?


でもこの感情が本当のものだったらいいのにと夜空にきらめく星々を眺めつつ思った。

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