13時半~ 神保町

 楽器街の坂道を下ると、広い交差点に出ます。右へ行くと古書店街になるのですが、交差点正面にそびえるのが『三省堂書店 神保町本店』。


 8階建てビルの大型書店は、この日はやはり閉まっていました。シャッターに貼られているのは「当面の間」の「臨時休業のお知らせ」。本の街・神保町の"顔"といえる存在の休業は、鳥かごから鳥がいなくなったような空虚をもたらしていました。


 三省堂を右へ進むと古書店街です。いまや全国的に認知され、「本好きの聖地」と呼ばれるだけあって、普段は人通りは多くても落ち着きが感じられる、青空図書館の様な空間で、知的な雰囲気の散歩が味わえます。


 ですが、この日はほとんどの古書店が閉まっていました。いくつか開いている店もあるし、人通りもそれなりにありますが、シャッターの下りた店が多く、一時的にせよシャッター通り化している感は否めません。


 元々日曜定休の店もありましたが、その店もそうじゃない店も、臨時休業を知らせる貼り紙がされ、そこには『5月6日まで営業を自粛します』。店によって『4月11日から』『14日から』『15日から』と開始日にばららつきはあっても、期限は『5月6日』。目にした貼り紙には全てその日付が書かれていました。


 その日が来ればまた日が昇る。古書店街が一丸となって緊急事態宣言が明けるのを待ちわびているようでした。


 それが翌日、5月4日になって緊急事態宣言が延長されました。


 シャッターがため息を吐き、貼り紙が剥がれて風に漂うのが見えるようでした。


 予定通り営業を再開するのか、延期されるのでしょうか。


 5月末に緊急事態宣言が解除されたとしても、すぐに梅雨に入ります。


 つづく

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