第63話「セシリー救出部隊」

「ロメロ様……? えっとここまでしてもらわなくても」


 日が落ちた頃、しっかりと休息を取ったイチコたちは、ゴールドバーグ家の好意で用意された馬車で街の中央にまで戻ってきていたのだが。


 馬車から降りる際、イチコが軽くよろめくと、そこからはロメロは、「墓地までおぶっていきますよ」という言葉を、どれだけイチコが断っても、譲ることなく言い続け、とうとう根負けしたイチコはおぶられる形となっていた。


(おかしいわ。今までなら、絶対嬉しいはずだったのに。いま、めっちゃ辛いんですけどっ!! アタシ本当にどうしちゃったのかしら)


 そんな事を思っていると、ロメロから、「ちょっと寄り道してもいいですか?」と声が掛けられた。


「あっ、ひゃいっ!」


 突然な事で、変な声が出てしまったが、「はい」と言おうとしたことは通じたようで、ロメロは方向を変える。


「実はこの前、行こうと思っていたときに、骸骨兵士スケルトンおススメのパン屋がありまして、もう夕飯時は過ぎていますけど、まだ何も食べていないので、セシリーさんのお土産として買っていきましょう」


 夜に差し迫った時刻ということもあり、パン屋にはそう多くの種類は並んでいなかったが、いくつかのパンとミルクを購入すると、墓地へと足を向けた。



「セシリー、ただいまぁ!!」


 イチコが元気に戻りを告げるが、何やらそれどころではなく、様子がおかしかった。


「ん? どうしたのかしら?」


 すると、イチコとロメロを見つけたマリーおばぁちゃんが駆け寄ってくる。


「ああ、イチコちゃんと、あんたは前に助けてくれた方よね。大変なんだ、セシリーちゃんが――」


 その言葉を聞くと、「くっ」とロメロが顔を歪めたかと思うと、骸骨兵士スケルトンが現れ、セシリーの墓まで疾走する。


 墓の前で立ち止まると、カタカタと骨を鳴らすと同時に体を震わせた。

 いままで無機質にロメロの命令通りに戦っていたように見えた骸骨兵士だったが、今は怒りの感情で満たされ、そのプレッシャーは計り知れないものとなっていた。


「今日の夜明け前にね。またあのランタンを持った男が現れたの。それでね、セシリーちゃんは、あたしたちをかばってそいつに連れていかれちゃったのよ。お願いよ~~。セシリーちゃんを助けてあげて」


 イチコはそっとマリーおばぁちゃんの手を取ると、


「ええ……、アタシがなんとかするわ。きっと、なんとかしてみせるわ」


 すっと手を離すと、イチコは強い眼差しでロメロを見つめる。


「ロメロ様。セシリーを助けたいのっ! 力を、力を貸してください」


「ええ、もちろんですよ。それに、彼もやる気ですからね。イチコさんが行かなくても僕らだけでも行ったところです」

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