第44話「イチコ&リコリスVS襲撃者 その1」
我先にゴールドバーグ家の敷地内へたどり着いたカルロは、門番でも衛兵でも、誰でもいいので、この事態を伝えようとしたのだが、すでに全員、事切れていた。
「くそっ! 手際良すぎだろっ! くそっ!!」
悪態をつくが、初めて見る他殺体に内心怯えていた。
足は震え、後ろに足が出そうになるのを
「くそっ! 俺は、ここで逃げる為に来たんじゃないっ!」
カルロは一度目を瞑ると、そこには自分と母親を助けてくれたアンナの顔が浮かぶ。
「今度は、俺が助けるんだ! ここで動かなきゃ、一生返せない恩になっちまうっ!!」
せめて自分を助けてくれたお嬢様のアンナだけは助けなくてはと、自分を奮い立たせ、カルロは屋敷内へ駆け出した。
※
イチコは、事切れている衛兵たちを見ると、ことの鮮やかさに、称賛を送る。
「この短時間にこの手並みは見事としか言えないわね。さらにこの首筋だけを狙ったやり口はたぶん女ね。そしてノット巨乳だとアタシは確信するわ! だって、胸があったら絶対邪魔で近づけないものっ!!」
「誰が貧乳よっ!!」
イチコの喉元に凶刃が襲い掛かるが、レイスの体に刃は通じず、そのまますり抜けた。
「あっ。くそっ! つい、自分を見失ったわっ!!」
衝動に任せた攻撃をしてきた女は、やはりイチコの推測通り、巨乳ではなかった。
顔は黒のマスクに隠れ半分しか伺えないが、目元だけでも十分に美人であり、スレンダーな体型がそれに拍車をかけていた。
「……そのツッコミ。アタシ、あなたとは分かり合える気がするわ。今日だけこんなこと止めてくれない。出来れば戦いたくないわ」
酷く辛そうにするイチコに敵の女も意味が分からず、たじろぐが、イチコの胸部に目をやると、自然とその理由を理解できた。
「そうね……。別の出会い方をしていたら分かり合えたかもしれない。けれど、チームでの仕事だから引くことはできないのよ。悪いわね」
敵の女も一瞬悲しそうな表情を見せると、次第に周囲の風景と同化していく。
「消えた? なにかのスキルかしら?」
次の瞬間、イチコの背後から火球が襲った。
「おっと!!」
バスターソードを取り出すと、火球を受け止める。
「えっと、姿を消せる、カメレオン女は魔法なんか使いそうになかったし、反対方向からの攻撃だったわね。もしかして、もう一人潜んでいるのかしら? そうなると厄介ね。せめて場所さえ分かればいいのだけど」
愚痴を思わずこぼすと、「ニャーン」と一声聞こえ、イチコの背後から
リコリスの目は、「マスター。任せてっ!」と言ったように見えた。
「これで、2対2ってところね。カメレオンちゃんの方は全く気が進まないけど、2人まとめて、地獄に落とさせてもらうわよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます