第45話「イチコ&リコリスVS襲撃者 その2」
「リコリス、あんたの鼻か耳で相手の位置分かる?」
リコリスは「く~ん」と申し訳なさそうに首を横に振る。
優れた聴覚、人間よりは数段利く臭覚を持つリコリスを持ってしても火球使いとカメレオン女の位置を割り出す事は出来なかった。
「そりゃそうね。姿を消せる能力なら、その辺はもちろん対策しているわよね。おかげで先手を取られたみたいだし」
襲撃者になかなか気づけなかったのは、この女の能力の所為であろうと推察し、同時に、これなら、ロメロ様は1ミリも悪くないわね。とも考えていた。
(さて、姿が見えないのはやっかいだけど、アタシとリコリスなら一旦は無視してもよさそうね)
イチコもリコリスも物理攻撃は効かない為、もう一人の火球を撃って来た相手だけに集中していると、
「そっちばっかり集中してていいのかな?」
その瞬間、イチコのリコリスの体が急に濡れる。
「これって……、
「ガアアアアッ!!」
2人に降りかかったのは聖水であり、レイスには強烈に痛い攻撃であった。
「くぅ、聖水まで見えなかったわよ! 痛いし、もうムカついた! 仲間だと思って容赦してあげていればっ!」
駄々っ子のように文句を垂れ流すイチコだったが、その最中にリコリスに目配せを送る。
リコリスもそれで意思の疎通が図れたのか、「ニャ」と短く返事した。
「卒塔婆スターソード!! 怒りを燃やせっ!!」
イチコの持つバスターソードから黒炎が現れると、すぐ目の前に叩きつけた。炎は荒れ狂い足元で爆発四散した。
周囲には爆風が巻き起こり、豪華な庭に大きな焦げ跡が出来る。
「残念。周囲に一気に攻撃したつもりでしょうけど、全然外れ――」
カメレオン女が余裕の態度を示していると、なぜかフェリダーのレイスが真っすぐにこちらに向かってくる。
「こっちの位置は分かるはずない……はず」
しかし、寸分違わぬ位置にリコリスは攻撃を仕掛ける。
「ちょっ! あぶなっ!!」
ギリギリで避けはしたが、なぜか完全に位置がバレているようで、顔を青ざめる。
(な、なんで位置がバレるのよ! 声は別方向から聞こえるよう訓練しているし、足音や衣擦れの音も立てていない。臭いも消してあるし、他に何があるっていうのよ!?)
カメレオン女は動けずにいると、なぜか
(な、なぜか分からないけど、ラッキー。見失ったようね。なら、今のうちに)
女が一歩動くと、
「ガウッ!!」
そのとたんリコリスは相手を捕捉し、鋭い爪を突き立てた。
「な、なんで……」
カメレオン女は疑問を残しながら、生命活動を止めた。
本来、リコリスは物理攻撃は出来ないのだが、爪を突き立てられた生々しい感覚を与え、死んだと強く思い込ませることで、死へと追い込む。
その証拠に女の体には傷一つなく、ただ表情だけが苦悶に染まり、手には力が入り、地面を抉っていた。
あまりに力が入り過ぎた為か、魔道具の指輪は粉々に砕け散ってしまっていた。
「おっ! 倒したみたいね。良くやったわリコリス! よく気流の変化を察知してくれたわね!」
イチコはあえて、卒塔婆スターソードで大きな爆発を起こし、気流の変化を分かりやすくリコリスに伝えた。あとは風の魔法が得意なリコリスは自身の魔法と合わせ気流の変化、つまり障害物があるところを感知し、襲い掛かったのだった。
「さて、これで、あとは火球使いだけね」
カメレオン女が倒れたせいか、火球を放った人物の姿が徐々に明るみになっていく。
その姿は、黒のピチピチのボディスーツで、大きな胸や腰のクビレをイヤでも誇張して見せるような服装の魔法使いで、イチコの逆鱗に触れた。
「アタシの、いえ、アタシたちの恨みの力見せてあげるわ!」
イチコはリコリスにやられ倒れ伏すカメレオン女にチラリと目を向ける。
「こんなのと仲間だったなんて、あんたも辛かったわね。大丈夫よ。アタシが仇をうってあげるからっ!!」
黒炎渦巻く卒塔婆スターソードで相手を指し示し、叫んだ。
「その無駄な脂肪ごと、怨みの炎で焼き尽くしてやりゃあっ!! 覚悟しときなさいっ!!」
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