第41話「霊媒と憑依」

 イチコはロメロの手を握り、ニコニコ~っと満面の笑みを浮かべる。


「あの? イチコさん?」


「はい! なんですか?」


「その、そろそろ手を離してもらっても……」


「あっ、ごめんなさい」


 イチコは顔を赤らめて、急いで手を離した。


「あの~、お取込み中、申し訳ないんですけど、その話、私も連れて行ってくれませんか?」


 セシリーが二人の間に割って入ると、自身も同行したい旨を伝える。


「戦力が多いにこしたことはないですが、なぜですか?」


 ロメロが同行を肯定すると、イチコは恨みがましい目でセシリーを睨む。


「ぐぬぬっ、アタシとロメロさまの蜜月の時間を邪魔する気?」


 という気迫が、言葉に出していなくても、ヒシヒシと伝わった。


「その、イチコさんが外に出るには、結界を壊さないといけないんですけれど、その後に、レイスが騒ぎを起こしたとなれば、ここの墓地のレイスに目を向けられると思います。それこそ、魔道具を使って駆逐されるかもしれません。そうならないよう、私も着いて行って極力レイスが騒ぎを起こしたんじゃないように見せたいんです!」


「なるほどね。今のキミの意見だと――」


 ロメロが何かを言おうとしたその瞬間、骸骨兵士がセシリーの前に現れる。

 初めて骸骨兵士を見たカルロは驚きの悲鳴を上げるが、それには気にも留めず、骸骨兵士は、セシリーを止めるように手の平を開いて腕を突き出す。


「なんで、貴方が止めるんですか?」


 セシリーの至極真っ当な問いに、骸骨兵士は答えないでいると、代わりにロメロが口を開く。


「彼も、キミは来るべきじゃないって言ってますね。僕も、セシリーさんの懸念材料を聞く限りでは彼に賛成ですね」


「えっ? それってどういう……」


「まず、イチコさんのここからの出方ですが、それは僕に憑いてもらいますので、結界は問題ないです。それと、レイスが噂になることはないですよ。だって、皆殺しにしますから」


 あっけらかんと言い放つロメロにセシリーは恐怖したが、すぐ後ろから聞こえてきた声で、一気にその恐怖も吹き飛んだ。


「きゃ~!! ロメロさま、最高! 恰好良すぎ! 流石、残忍! 残虐! 残酷っ! それでこそロメロさまよっ!!」


 セシリーは苦笑いを浮かべながら、なんとなく、なぜイチコがロメロに惹かれたのか理解できた気がした。


「そういうことなら、私はここで皆さんの無事を祈りながら、帰りを待っていますね。どうかお気をつけてください」


 セシリーは深々と頭を下げた。


「はい。皆さんの無事は僕が命に代えても保証しますよ。それじゃあ、僕のスキルでイチコさんとリコリスに憑いて来てもらうとして……あっ」


 ロメロは骸骨兵士を見て怯えるカルロに自分が死霊術師であることなどを伝え、改めて、スキルを発動させた。


「スキル:霊媒。このスキルで、僕は僕に死者を憑りつかせることができます」


 イチコはロメロの体に触れると、一瞬でロメロの背中へと移動した。


「こ、これって、アタシ、ロメロさまの守護霊みたいになっちゃったー!!」


 イチコは歓喜の声を上げた。

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