第34話「イチコと進化?」

『フェリダー 250 人間(冒険者) 50』


『経験値が1025になりました』


 イチコの頭に神様の声が響く。


「や、や、やったー!! やったわセシリー!! とうとう経験値1000を超えたわ! これで、とりあえず、進化することが出来るのよね! まずは幽霊ゴーストだっけ? それになって、バージンロードの第一歩を踏み出すのよ!!」


「ちょ、イチコさん、落ち着いてください!」


「やぁー!! 進化したら、見た目とか変わるのかしら? アタシがいた世界では進化すると見た目変わるのよ。あっ、でも可愛いのが、ゴツくなることも多いから、ちょっと心配なのよねー!!」


「イチコさん! 落ち着けっ!!」


 セシリーの右ストレートが、イチコの鳩尾みぞおちへとキレイに決まる。


「ごふっ! セ、セシリー。い、良い、右を、持っている、じゃない」


「まったく、何時だと思っているんですか? 私、急に大声ださないでくださいねって言いましたよね? 皆さんお休みになられている時間ですよ。こんなにまだ日が高いじゃないですか」


 その場でダウンした、イチコだったが、10秒後にはピンピンして蘇る。


「ボクシングならテンカウントで負けていたわね」


 セシリーの意外な強さに、驚きつつも、先ほどよりは幾分、冷静さを取り戻していた。


「さてさて、それじゃあ、改めて、進化していきたいと思うわけよ。……で、セシリー、進化ってどうやるの?」


 小首を傾けながら聞くと、セシリーは少し困ったような顔を見せる。


「あっ、そうよね。さすがのセシリーでも人間のときに進化ってないし、わからないわよね」


「そうなんですよね。でも推測では、勝手に進化するか、進化の選択肢が提示されるかのどちらかだと思っていたのですが、聞くということは、そのどちらも無いということですよね?」


 その言葉に肯定の意を示すと、次の質問をセシリーは述べる。


「では、イチコさん。人間のときは、レベルアップなのですが、そのときは、経験値を使ってレベルアップすると言うことで、レベルアップが起きていました。もしかしたら進化も同じかもしれません!」


「じゃあ、経験値を使って進化するわ!」


 言われた通りに行動すると、


『イチコ(レイス)は進化できません。代わりに貴女の思いに応じたスキルを1つ取得できます』


 という絶望的な神様の声が響く。


「へっ? うそでしょ?」


 茫然としつつも、なんとかセシリーに、今の神様の声の内容を伝えると、意外な反応が返ってきた。


「良かったじゃないですかイチコさんっ!!」


「ちょっと! どういうこと? アタシの不幸が良かったって言いたい訳? チッ! これだから巨乳は信用できないのよ!」


 イチコは宙でヤンキー座りし、ガンを飛ばしながらガラ悪く悪態をついた。


「いえいえ、違いますよイチコさん。その条件でしたら、ここの結界をすり抜けるスキルか、壊すスキル。もしくは憑依でもいいんですよ! 私ではこれくらいしか思いつかないですけど、もしかしたら他にもっとイチコさんが欲しいスキルが取れるかもしれません!!」


「はっ!! 確かにその通りね! 流石セシリー!! アタシには咄嗟には思いつかない発想だったわ。やっぱり、あんたはその辺の巨乳とは訳が違うわね」


「イチコさんの中で、巨乳って完全に最大級の悪口ですよね」


「そりゃ、そうよ。アタシは巨乳と浮気男に殺されたんだからっ! まぁ、それはさておき、レベルアップからのスキルの取得ね。アタシが望むものはただ1つ! あれだけよ!!」


 イチコは拳を力強く突き立て、叫んだ。


「経験値1000使って、レベルアップっ!!」



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