第23話「ゾンビと銀貨 その2」

「この銀貨、凄まじい力を感じるぞ。ふぉっふぉ! これをあの者に渡し、ゾンビナイトの装備と同じように魔道具を作らせれば、ワシはあのロメロの若造を超越できるぞ! いや、今もすでにワシの方が優れているのじゃが、功績を立てる機会に恵まれなかった。しかし、この銀貨のパワーを借りれば、直接ロメロを討ってワシの力を認めさせることも――」


 目を輝かせ、未来を語る半骨の老人だったが、それを無粋な笑い声が邪魔をする。


「プゥークスクス! やっばいわ! 今世紀一番の笑いだわ! クックッ、ハッハッハ!! あんた程度がロメロ様に敵う訳ないのに、機会の所為とかっ!! ブハハッ!! しかも、さんざん自分の方が上っぽいこと言って、アタシの力を頼ろうとか小物過ぎる!! これ、生身だったら笑い死ぬところね。ある意味アタシが出会った中で1、2を争う最強の攻撃ね。ヒッー! ヒッー!!」


 銀貨から大爆笑と共に、黒髪の貧層な女性が姿を現す。


「貴様、誰じゃっ!?」


 半骨の老人はその女性へと怒声を上げる。


「ハァー、ハァー、ハァー、ちょっ、ちょっと待って、息、整えるから」


 女性は大きく深呼吸して、落ち着きを取り戻してから口を開いた。


「アタシはイチコよ。いずれ、ロメロ様の嫁になる女よ。よろしく! で、あんたは? ロメロ様と同じ死霊術師っぽいけど?」


「その通り、ワシはロメロをも超える死霊術師、名を――」


「まぁ、別に、これから殺す相手だし、聞かなくていいか。えいっ! スキル:呪殺」


 イチコは手をかざし、スキルを発動する。ドス黒いモヤが半骨の老人に襲い掛かるが、老人の手前で雲散霧消する。


「ふんっ! 呪殺が効くと思ったか!? この大死霊術師、ゲニー様にっ!」


 老人はドヤ顔を見せ、途中で止められた名前を名乗るが、その態度が余計イチコをイラつかせた。


 イチコは誰もいない方向へ顔を向けると、セシリーの名前を呼んだ。


「ねぇ、セシリー。呪殺が効かない相手がいるんだけど、どうすればいい?」


 少し、タイムラグがあってから、再びイチコは口を開く。


「なるほど、アンデッド系はすでに死んでるから効かないのね。なるほど。物理か魔法ならOKと。え? さっき大爆笑してたのはなぜか? ああ、聞いてよ。今のアタシの銀貨の持ち主がね――」


「このレイスごときがっ! ワシを殺そうとしたばかりか、無視して談笑するんじゃあないっ!!」


 ゾンビの1体がイチコに向かって爪を振り下ろすが霊体でさらに思念体のイチコの体には傷1つ付けられなかった。


「ふん! 物理攻撃は効かないと油断したな? 今のゾンビは対霊体用のゾンビ。触れればエネルギーを吸い取るドレインタッチのスキル持ちのゾンビじゃあ!! どうだ! 体に力が入るまい」


「えっ!? マジで! ウソ。やだ~。ああ、こんなところで負けるなんて…………。って、いや、別にどうってことないけど。あ~、でも、2階まで階段昇ったくらいには疲労感があるかしら」


「くっ、ならば、何度でも攻撃するまでよ!」


 再びのゾンビの攻撃を、イチコはふわっ、ふよっ! っと華麗に避ける。


「う~ん、なんか物理攻撃手段が欲しいわね」


 そんな風に思案していると、いつの間にかゾンビの接近を許していた。


「おっと、まずいかな」


 ゾンビの手がイチコに触れようかというとき、拳大の石がゾンビの手を貫いた。


「そこのレイス。俺のバスターソードをくれてやる。だから、みんなを助けてくれ」


 ジェフェリーは最後の力を振り絞り、石を投擲し、イチコに交渉を持ちかけたのだった。

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