第22話「ゾンビと銀貨 その1」

 ゾンビの甲冑は上位の騎士が付けているような立派な物で、ゾンビとなった人物の強さが伺える。

 他のゾンビと違い、ゾンビナイトは腰に佩いたロングソードを抜き、武器とする知能を有していた。


「その剣も一級品だな。だがよぉ、強さは装備の良さじゃ決まらないぜ!」


 ジェフェリーはバスターソードをしっかりと握りしめると、ゾンビナイトへ斬りかかった。


 ゾンビナイトは近くのゾンビを掴むと、盾として扱い剣戟を受け止める。


「こいつ、他のゾンビを盾にっ!? マズイっ!!」


 斬られたゾンビの頭部は無事で、バスターソードを掴んで離そうとしない。


「クソッ!」


 すぐに状況を察したジェフェリーは剣を離し、後ろへ飛び退く。

 ゾンビナイトはその状況を見ると、地面を蹴り、すぐに距離を詰めた。


「ゾンビのクセに走るんじゃねぇよっ!!」


 愚痴をこぼし、さらにそこから跳ぶと、先ほどまで居た位置に剣閃が走る。


「アブねぇ! だが、これで脇ががら空きだぜ!」


 拳を固め、ゾンビナイトへと打撃を繰り出す。が、しかし。


「いってー!! なんだよこの甲冑! 固すぎだ――」


 全く攻撃が聞かなかった事実、痛めた拳を嘆いていると、胸部に衝撃が襲った。


「ガハッ!」


 ゾンビナイトの肘鉄がジェフェリーを捉えたのだった。

 ジェフェリーは地面を転がり、ポケットや懐の中のものがそこらに散らばり、凄惨なありさまとなる。


「あ、あ、あ……、な、なんて威力だよ」


 必死に立ち上がろうとするが、体に力が入らず、上体を起こしては、再び地面に倒れる。


「クソ……」


 ジェフェリーが動けない状態になると、彼を助けるように、ロックとセシリアがゾンビナイトの前に立ちはだかる。


「ふぅ~、かなり手ごわそうですが、こいつを倒さないと生きて帰れそうにないですね」


「ロック、隙を作ってくれれば、あたしが最大級の魔法を当てるよ」


「ええ、それが唯一の勝機でしょうね」


 しかし、殴り掛かったロックの攻撃は蝶のようにヒラリとかわされ、そのまま、背中を切り裂かれる。

 そして、セシリアの魔法詠唱を止めるように、首を掴み体を岩壁へ叩きつけた。


「クソっ、……やめろ。俺がこのクエストを選んだんだ。悪いのは俺なんだ。だから、殺すのは俺だけにしてくれ」


 仲間の命を懇願するジェフェリーだったが、その願いはしゃがれた声によって否定される。


「お主、阿呆か? なぜワシがわざわざ優秀な素体を逃がさねばならぬのじゃ? ワシはワシの力を認めさせ、魔王の側近になる者よ。あの若造なんぞに、あの椅子は不相応というものよ!」


 勝利を確信したのか、声の主はゆっくりとジェフェリーの前へ姿を現す。


 その声のイメージ通りの皺だらけの老人。体のところどころが骨がむき出しになっており、常人でないことが伺える。顔は特にひどく、醜く歪んだ顔の鼻から下は白骨と化していた。 


「……ふむ。興味深いモノを持っているな」


 老人は地面へ転がる銀貨を1つ拾い上げた。

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