第19話「冒険者と銀貨 その2」
「さて、どうしたもんかね」
ジェフェリーの懐には銀貨が1枚入っているが、これはパーティの共有財産で勝手には使えない。
バスターソードという立派な剣はあるが、これにお金をつぎ込んでしまい、鎧などの防具は胸当てと籠手だけというなんとも心もとないありさまで、いつかはちゃんと揃えようとは思っているのだが、生来の性質もあり、中々お金は貯まらなかった。
「俺が防御面も良くなれば、パーティの為になるよな。つまり、この銀貨を使ってもパーティの為に使ったということに……」
そんな誘惑に駆られ、懐から銀貨を取り出し、眺めていると。
「おいおい、お前、その金って死体から盗んだやつだろ? それでパーッと飲むとか呪われそうで嫌だぜオレは」
「こちとら安月給で死体処理なんてしてんだからよ。銀貨1枚くらい盗ってもいいじゃねぇか。死体からの金だって、金は金だ。何も変わらねぇさ。お前、意外と神経質なんだな。まぁ、そういうことなら」
2人組の男が、なにやらぶつくさ言いながら歩いて来て、銀貨を眺めるジェフェリーを見つけると話しかけてきた。
「お~い。そこの冒険者のキミ、人助けだと思って、この銀貨とその銀貨交換してくれないか?」
ジェフェリーは謎の交渉に、疑いの目を向ける。
「ああ、そう睨まないでくれよ。至極真っ当で、詐欺なんかじゃあ、ないんだからよ。実はこの銀貨、死人の血で汚れちまってよぉ。キレイにはしたんだが、俺みたいな小心者の一般人にはそれでも気持ち悪いもんなのさ。だがよぉ、見たとこ歴戦の勇士って感じの冒険者のあんたなら、そんなこと気にしなそうだろ? だから取り換えてくれると助かるんだが」
歴戦の勇士ってところでかなり気をよくしたジェフェリーだったが、これで、詐欺だったらまたロックにバカバカ言われると思い、疑い深く銀貨をマジマジと見るが、特に変わったところは見受けられなかった。
理由も理由でちゃんとあった為、血がどうこうは一向に気にしないジェフェリーは人助けだと思い、快く交換を受け入れた。
「おう! いいぜ。この歴戦の勇士、ジェフェリーは、そんな死体の血なんか気にしないからなっ!」
「おおっ、ありがとう恩に着るぜ! ほら、お前も、これだったら飲み代に使っても気にしないだろ?」
「いや、そういう問題じゃ……まぁ、でも少しは気が楽かな」
相方の男はジェフェリーに礼をしっかりとすると、二人は立ち去って行った。
「う~ん、やっぱ、これで防具を買うのは違うよな。あの人たちに話しかけられたのもきっと神さまが仲間の金に手を付けるなって
ジェフェリーは銀貨を懐にしまうと、ぶらぶらと目的もなく、歩き出した。
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