第15話「少年と銀貨 その2」
「なんだ珍妙な恰好のネェチャン? 勘違いしてもらっちゃあ困るな、この金はオレのなんだよ。それをこのガキが奪おうとしたからこうなったんだ。オレは悪くないんだぜ。ほら、分かったなら、さっさとどっか行きやがれ」
男の発言に思わずイチコは笑いをこらえ切れず漏らす。
「ぷぷぅ~。いやいや、まるで絵に書いたような小悪党ね。なかなか良いわ。なるほど今なら、ロメロ様の言った事が理解できるわ。こういう悪人だと、怨みとか最小限でイケるのね。コスパ最高! さすがロメロ様。確かに悪人の方が良いわね。あんたグッドよ」
恍惚の表情で自分の世界に浸る、イチコの発言は、男にとって何がなんだか分からなかったが、なんだか、自分が褒められている事は分かり、その結果。
「ネェチャン、もしかして娼婦か? オレを誘ってるのか? だがよぉ、あんたみたいな顔もいまいちで、体もガリガリは趣味じゃねぇんだよ。他当たりな」
「ハァ? あんた、今、アタシのこと、顔はいまいちでガリガリの貧乳って言ったわよね。体のことだけでも殺すところなのに、顔までケチつけるとか、あんた、地獄に落とすわよ」
「なにをごちゃごちゃ言ってやがる。ほら、さっさとどきな!」
イチコはなぜか男に言われるがまま、大人しく退くと、少年の方へ向かった。
「やぁ、少年。大丈夫? これはキミのかな?」
イチコは少年のものにしては大きいクツを1つ手にしていた。
「う、うう、そ、そうだけど……、お姉さん、あの、お金は、俺のなんだ。あいつの言うことは、信じないで……」
「ああ、そう。これはキミのなのね。じゃ、ちょっと借りたわよ。それと――
」
イチコは少年の額をちょんとつつく。
「これは幸運のおまじないよ。これからきっと幸運が訪れるから、ちゃんと銀貨を使いなさいよ」
「な、なにを言って……」
少年が不思議に思っていると、いつの間にかイチコの姿は消えていた。
「な、何が……」
幻でも見たのかと、思い何度か目を
「あ、ま、待て……」
なんとか口だけでも、男を止めようとした少年だったが、次の瞬間。
「んっ! おおっと!!」
男は少年のクツに躓き、バランスを崩すと、「おっとっと」と商店街の道まで出てから転ぶ。
「危ないっ!!」
誰かの声が響いたかと思うと、男の上に馬の
男の持っていた銀貨は馬車に弾かれ、コロコロと少年の手元へと転がり戻ってきた。
「あのお姉さんの言った通りになった?」
少年は茫然としながらも、銀貨を強く握りしめた。
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